【テキスト版】CROSSOVER「STANCE」深堀圭一郎×杉山愛
輝きを放つアスリートたちは、どのようにして頂点を極め、そのときに何を感じ、そして何を手にしたのか—— 。
自身もプロゴルファーとして活躍している深堀圭一郎が、スポーツ界の元トップ選手や現役のトップ選手たちをゲストに招いて、アスリートたちの深層に迫る、BS無料放送『クロスオーバー』連動企画のテキスト版。
そこから垣間見えてくる、ゴルフにも通じるスポーツの神髄とは? 第6回目のゲストは杉山愛さん。
※敬称略
ダブルスで世界ランキング1位に…しかし常に頭の中にあったシングルスへの想い
深堀:今回は、日本の女子テニス界のエースとして活躍し、ダブルス競技で日本人初の世界ランキング1位にも輝いた杉山愛さんにお話を伺います。現役を引退して10年ですが、現在はどんな活動をされているんですか?
杉山:今はテレビのコメンテーターなど、メディアのお仕事や講演会などをやらせていただいています。そして、テニスの後進の指導もしていますね。昨年から自分のテニスアカデミーで、ジュニアの国際大会を開催し、トーナメントディレクターも努めています。
深堀:引退後もご活躍ですね。杉山さんは4歳でテニスの世界に入ってから、最初のころはクラッシックバレエなど、さまざまなことにチャレンジしていたと聞きました。
杉山:クラッシックバレエを習って、フィギュアスケートや体操教室などにも通っていました。でも、最終的に一番楽しかったのがテニスでしたね。壁があるところでは必ず壁打ちして。テニスクラブでも壁打ちスペースがあるところにずっといました(笑)
深堀:テニスに惹きつけられた理由は何だったんでしょうか?杉山まずはボールの打球感というか、スイートスポットに当たったときの感触が好きでした。また、上手くなっていくプロセスも楽しかったですね。本格的に始めたのは、7歳のときでテニスアカデミーに週に5~6回通うようになりました。このことから「プロになりたい!」と思うようになったんです。
深堀:プロを目指すというのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
杉山:クリス・エバート選手に憧れていました。綺麗で女性らしくてストロークも安定していて。このときから「世界で活躍できる選手になりたい」というのが夢になりました。深堀さんは、どれぐらいでプロになろうと思われたんですか。
深堀:ゴルフを始めてすぐですね。ジャック・ニクラスに憧れて。そのときは頭の中で“仮想トーナメント”を作り「自分ならダメな展開になったときどうクリアするか」などを考えていました。練習できないときは、畳の部屋にティを刺して軽く打ってみたり、家でバスタオルをぐちゃぐちゃに小さくしてバンカーに見立ててエクスプロージョンの練習をしたり。自分で「こんな感じかな」と想像しながらシチュエーションを作ったんです。
杉山:当時はジュニアのゴルフ環境も今ほどはよくないですよね。
深堀:僕が小さいころは、どこの練習場に行っても子供に会う機会はなかったですね。
杉山:テニスをプレーしている子供は数多くいましたね。私が行ってたクラブも100人近くジュニアが来ていて小学生から高校生まで一緒でした。仲間にも恵まれて、お兄さんやお姉さんにもすごく可愛がられたので、練習に行くのが楽しかったです。
深堀:杉山さんは、17歳の時にプロへ転向されていますが自分で決められたのですか?
杉山:そうですね。15歳でジュニア1位になったときに、次は一般の大会に出場しようと思い、16歳で初めて参戦しました。高校生でプロになってからは、順調にランキングも上がっていきましたね。
深堀:杉山さんは、シングルスだけでなくダブルスでも実績がありますが、ダブルスは最初から自分の頭の中にあったのでしょうか。
杉山:ジュニア時代もダブルスでプレーしていたんですが、個人的にはシングルスが好きでした。ところがプロになって途中からダブルスの成績がよくなって。25歳のときにダブルスで初めてメジャー大会の「全米オープン」で優勝し、世界ランキングも最終的に1位になりましたから。それでもシングルスのプライオリティーは常に高かったですね。
深堀:テニスのシングルスのプレーは、いわゆるパワーゲームですよね。ですから、体が大きくて身体能力の高い選手が有利だと思うんです。そんな中にあって、シングルスで世界ランキング8位になったのは本当にすごいと感じます。僕はいろいろなスポーツを見ていますが、身体能力の高さではテニスがすごいと思いますね。
杉山:運動量は相当ですよね。でも、いろいろなアスリートの方と話してみると、それぞれに「大変さ」や「面白さ」があると感じます。例えば、私も趣味でゴルフをプレーしますが「これが仕事だったら、どれだけキツイだろう」と想像したりしますね。テニスの場合は、ワールドツアーでいろいろな国に行く中で、違う文化が存在していて国民性も大きく違う。そんなワールドツアーに慣れるために、最初は時間がかかるんです。自分の居場所を作るのに1~2年は必要ですね。
深堀:確かに海外ではコミュニケーションなども含め、自分の居場所を作るのが大変ですよね。
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