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ランニングシューズ『アンダーアーマー_UAホバー ソニック3(前編)』

正月の箱根駅伝や、MGC、さらには先日の東京マラソンで相次いだ好タイムの影には、ピンク(東京マラソンではネオングリーン)のナイキ製の厚底ラニングシューズの存在があったというのは、普段から走ることに縁のない人間でも周知の事実だ。ランニングシューズはスポーツギアの中でも、今もっとも旬なアイテムといえるかもしれない。

今回ご紹介するのは、アンダーアーマーの「UAホバー ソニック3」というランニングシューズだ。お話をお聞きした、アンダーアーマーを取り扱う、株式会社ドームでランニングカテゴリーの商品企画・MD部長をつとめる藤井雅義さんによると、このシューズはアンダーアーマーのランニングシューズの中で、もっとも旬なアイテムとなるそうだ。

藤井さんは巷で話題の厚底シューズについてこのように説明してくれた。「厚底というのは、ソールのクッション材の開発競争の結果です。ランニングシューズに用いられるクッション材はほとんどがEVA素材とよばれるもので、ブランドを問わず用いられています。そのEVA素材に何をプラスするのかで、各ブランドが切磋琢磨しているのが現状です」。

クッション材は厚くなればなるほど、足に伝わる衝撃を吸収してくれる。ところが衝撃を吸収するために厚くなるあまり、次の一歩につながる反発力が低下し、さらにランニングシューズにとっては致命的な重量アップも招いてしまう。

この「UAホバー ソニック3」を含む、アンダーアーマーのUAホバーシリーズのランニングシューズは、軽量でありながら、足に加わる衝撃をしっかり吸収すると同時に、その着地衝撃を前に進む力に変えて、無重力空間を思わせるようなはき心地を体感できるという。

そのためにアンダーアーマーは、ソールのEVA素材(上の画像で網目状になった部分)に、軽量で反発するオレフィン系エストラマーという樹脂を加えた。この樹脂の特徴は発泡スチロールに似ていると藤井さんは言う。「発泡スチロールの表面は、ゆっくり指先に力を入れて押すと凹んでいきますよね。ところが思いきり勢いよく指先で突くと、突き指をしてしまうこともあります。このように、かかる力や勢いによって反応が変わる性格をもった樹脂を加えることで、軽量でありながら、衝撃を吸収して、さらに反発力も得られる、2面性のあるソールが生まれました」。

以前は、ランニングシューズのセールストークは、優れたクッション性によって足への衝撃を抑えるが主題だったが、今はそれが足の推進力につながることも求められる。それを実現したのがオレフィン系エストラマーなのだが、この樹脂には大きな弱点があった。ランニングシューズとして世に問うためには、それを克服することが必要となった。

実はオレフィン系エストラマーは優れた特性をもつ反面、著しく安定性に欠けるのである。やや極端な例にはなるが、ゴム粘土を思い浮かべてほしい。力が加わると横にずれて広がってしまうようなイメージだ。ランニングは普通に歩くときよりも4倍近くもの力がソールにかかるわけだから、安定性を高めることは必須の条件となった。

これを解決したのが、上の画像にあるような、スポーツウエアでよく目にするメッシュ。隙間はありながら伸縮性のない特殊なメッシュ素材でおおい、押さえつけることで、この不安定なクッション材を安定させて、ランニングシューズに応用できるようになった。実はアンダーアーマーはほかのスポーツブランドとは違って、アパレルからスタートしている。それゆえにアパレルで蓄積されてきたノウハウが、メッシュを用いた新たなテクノロジーに結びついたわけだ。

そしてこのUAホバー(ホバーは英語で「浮く」という意味。ホバークラフトのホバーだ)はアンダーアーマーのランニングシューズの代名詞となり、衝撃を吸収しつつも反発して、素早く足を切り返して、ピッチアップにつなげてくれる。

もちろんUAホバー以外にもこだわりは込められている。たとえばヒール部分。カカトで2枚のアッパー素材を縫い合わせるのではなく、前足部分とカカトパーツの2ピース構造になっているため、カカト部分にステッチがなくフィット感が高められている。またカカトをおおうように、外側部分に装着したヒールカウンターもフィット感を重視したアイデアだ。

足首を守り、心地いい足入れを実現したはき口(シューズは男女用で分かれているが、くるぶしの位置の男女差から、はき口の高さまで男女で変化させている)、部位によって伸縮性に変化をつけた、軽量で通気性にも優れたメッシュアッパー、いずれも安全に楽しく、安心して走り続けられるシューズであるための工夫である。

この「UAホバー ソニック3」はジョギングのビギナーから、フルマラソンを完走できるランナーまで、初級から中級者に向けて設計されている。価格もホバーシリーズの中では、いちばんリーズナブルだ。だがここで勘違いしないでほしいと藤井さんは言う。

「ランニングシューズは値段が高い=誰でも速く走れるというわけではありません。自身の脚力に合わせてベストなシューズが存在します。この「UAホバー ソニック3」であれば、ソールにホバーが用いられているのは、中足部からカカトにかけてのみ。残りは強くけりだせる、ホバーよりも硬いチャージドクッショニングが用いられています。これは初級から中級の脚力を想定した構造です。ホバーを用いる量が減るわけですから、価格もリーズナブルになるわけです」。

ランニングシューズは、普段ばきのシューズと違って、長さやワイズなど足のサイズだけで選ぶものではない。どのくらいのペースで、どのくらいの頻度で走るのか、そしてどんな目標をもって走るのか。これらを信頼できるスポーツショップの専門スタッフに相談することをお薦めする。その上でこの「UAホバー ソニック3」をはくことになれば、このシューズのポテンシャルが、あなたのランニングを最大限にサポートしてくれるはずだ。

次回はこの「UAホバー ソニック3」がエポックメーキングなランニングシューズである、もうひとつの理由を紹介する。

>>アンダーアーマー『UAホバー ソニック3』【後編】はこちら

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