最高の一瞬『表情を撮る_千葉すず(水泳)』

千葉すず選手は、1992年のバルセロナオリンピックと、96年のアトランタオリンピックに出場した、自由形の選手です。

91年の世界選手権では400m自由形で銅メダル。高校2年生でバルセロナオリンピック出場ですから大変な才能の持ち主でした。一方でメディアからの大変な注目を浴びましたが、本人はメディアの視線にいらだちを見せ、メディアと距離を取り始めました。

写真は93年のものですが、大会の予選と決勝の間、午後練習の時だったと思います。泳いでいる姿以外にも、雑感としてゴーグルを外したときの表情も撮りたい。今もそうですが、練習時間で選手の表情はよく狙っていました。

ただ、これはまだいいほうで、彼女は徐々にメディアの前で練習に出てくることも少なくなっていきました。選手は大体メインプールで練習することが多いんですが、彼女はメディアが入れないサブプールで練習して、決勝に臨むみたいなパターンも多くなっていきました。

オリンピックでは、最終的に彼女自身が思うような結果が出せませんでした。成績が残せれば、何か違う着地点があったと思うんですが。

アトランタオリンピック時には、インタビューで挑発的な発言をして議論を呼びました。人として感受性が強すぎるのか、そうした面が異彩を放っていましたが、メディアもそれを面白がるところがありました。結局ずっとそうした路線に乗ってしまい、翻弄された部分があったのかなと思いますね。

▼藤田孝夫(フジタ・タカオ)

1964年、香川県三豊市生まれ。小学、中学、高校と、明けても暮れても野球の日々。そんな環境下、なぜかTVで観たオリンピックに心惹かれ、後にスポーツカメラマンを志し上京。オリンピックを目指すアスリートを主体に撮影。1985〜1990年(株)フォートキシモト スタッフフォトグラファーとして在籍後、1991年〜フリーランス。オリンピックは1988年カルガリー大会から2018年平昌大会まで夏冬17回連続取材中。

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