最高の一瞬『世界最速の足_ウサイン・ボルト(陸上競技)』

ジャマイカのウサイン・ボルト選手は、言わずと知れた男子100mの世界記録保持者(9秒58)です。オリンピックでは2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロと3大会で金メダルを獲るなど、長く活躍しました。

男子100mは、世界中の人々の誰もが経験したことがあるであろう「かけっこ」のいちばん速い人を決めるという点で、全スポーツの頂点に立つ競技だと考えています。わずか約10秒直進するだけのスポーツですが、ものすごくドラマがある。そのなかでボルト選手は、余裕があり、競技を楽しんでいて、人間性も感じました。夢を与えてくれたアスリートの一人です。出会えたのは幸せだったと思いました。

ファン、そしてフォトグラファーからも愛された選手です。

彼が出るような大会には、50人以上のカメラマンが殺到するわけですが、近寄ると「あっち行け!」とフォトグラファーを離れさせ、あの有名な空に弓を射るような「ボルトポーズ」をするわけです。しかも、フォトグラファー全員が撮影できるように、その遠く離れたところで、360度回りながら自分でセッティングをしてくれるという……。

写真は引退レースとなった、2017年ロンドンの世界陸上の時のものです。いつもレース後は裸足だったボルト選手ですが、どうしてこういうのを撮っていたのか、ちょっと覚えていません。

今の時代だと、なかなか撮らないタイプの写真ですよね。ただ、ボルト選手だと体の一部だけでも絵になる感じがします。

▼中村博之(ナカムラ・ヒロユキ)

1977年7月10日生まれ、福岡県出身。17歳の時に近所の本屋で手に取った、サッカー三浦知良選手の写真集『KING KAZU』を見てスポーツフォトグラファーを志す。1999年2月にスポーツフォトエージェンシーの『フォート・キシモト』に入社し、2011年3月からフリーランスとして活動。

初めてのオリンピック取材は2000年シドニー夏季大会で、その後夏冬合わせて8大会を取材。また、世界陸上選手権大会や世界水泳選手権大会などの取材を続けており、世界水泳選手権では、2015年カザン大会からFINA(国際水泳連盟)のオフィシャルフォトグラーを務めている。

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