最高の一瞬『最後まで幸せな瞬間_中村憲剛(サッカー)』

中村憲剛選手は、昔から何度か撮影やインタビューをさせていただいていますが、取材の間隔がかなり開いていても、こちらのことをきちんと覚えてくれています。

サービス精神旺盛で、試合の時はわざわざこちらの前に来て喜んでくれることもありますし、彼が多くの人に好かれている理由を取材の度に感じていました。

昨シーズンの引退に際しても、多くの取材をさせていただきましたが、写真はJリーグのホーム最終戦で決めた、小林悠選手へのアシストシーンです。後方からボールを受けて、ゴール前を見ないまま振り向きざまにクロスを入れたのに、小林選手がきちんと反応して得点したことで話題になった場面でした。

コロナ禍の撮影ですから、カメラマンの位置は抽選で決められていて移動できないルールです。ところが目の前でこんな素晴らしいシーンが撮れて、本当にラッキーでした。

もう一つ感じたのは、「みんなこんなにうれしそうにするんだな」ということ。中村選手の最後という特別な試合ではありましたが、その喜び方はかなりのものでした。

思えば、観衆の前で自分がきっちりと活躍して、みんなが興奮して抱きつきに来てくれるなんて、こんなに幸せな瞬間はないですよね。

それを自分の力でたぐり寄せる、中村選手のすごさを感じさせられました。

▼佐野美樹(さの・みき)

1977年、東京都生まれ。写真家いしだまことに師事後、スポーツフォトグラファー梁川剛のアシスタントを経てフリーに。サッカーやレスリングを中心としたスポーツだけでなく、人物ポートレートや料理など、広告やエディトリアルにて幅広い分野で活動している。仕事柄、国内外問わず出かけることが多いため、密かに旅の写真を撮りためている。

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