新アイアン用カーボンは、手元しなりで入射も緩やか? 逆じゃないのか、フジクラ担当者を尋問した
7月20日発売と正式アナウンスされた、フジクラの新作アイアン用カーボンシャフト『TRAVIL』。“落下角を上げる”をテーマに開発したというが、いくつも気になる点がある。これまでの同社のアイアン用カーボンの定番『MCI』と全く異なる部分について、担当者に直撃した。
“ゴム”の複合は何のため?
今回、同社が新機軸として打ち出したのが【ラバーコンポジットテクノロジー】だ。ラバー=ゴムだが、同社は「ゴムによりソフトな打感を得られ、シャフトのしなり戻りを緻密にコントロール。プレーヤーが意図するシャフト挙動を実現します」と説明する。特許出願中の技術が何を良くしたのか?
「今回は本当にツアープロにとって、一番いいものを作ろうと考えました。今までは出来上がったモノを『これがいいでしょ?』と持っていく部分もありましたが、とにかくフィーリングのいいものを作ろう!と様々なプロトタイプを用意しました。中でも、ゴム入りの方がフィーリングが非常に良かったんですね」
全長に入ったゴムの厚さは僅か0.1㍉で、カーボンシート1枚(0.08㍉)とほぼ同等とのことで、多積層の中のごく僅かにも思える。今までパター用にはあったが、ショット用では初の試み。このゴム一層が入ると一体何が変わるのか?
「弊社の旧名は藤倉ゴム工業で、元々ゴムの薄膜成形技術に長けていますが、ゴムには振動減衰も結構ありますね。プロトタイプのテスト時から『打感が柔らかい』『衝撃が少ない』とのフィードバックがあります。あとはカーボン特有の速く戻るクイックな挙動が少し緩やかになりますね」
手元が緩い=入射角も緩い!?
定番の『MCI』と剛性分布を比べると、今回の『TRAVIL』の方が遥かに手元剛性が低い。『MCI』は【先中調子】で手元が高剛性なのに対して『TRAVIL』は【中元調子】で手元剛性は遥かに緩く、先端剛性は『MCI』より僅かに高め。なぜ、先走りの『MCI』より打ち出しとスピン量が上がるのか? 従来の常識と逆に感じる人も多いだろう。
「落下角アップをゴールに開発したのですが、とにかく色んなプロトタイプをプロに試してもらい、🔵落下角がついて🟢距離も損なわなくて🟠フィーリングも良かったものを選んだ結果が『TRAVIL』です。結果論ですが、テスト結果を紐解いてみると、アタックアングル(入射角)が一番の理由になりますね」
一般的には入射角が急になるほどバックスピン量が増え、ヘッドスピードの速い人がスピンで上空を駆け上がらせて高弾道を打つイメージがあるが、“落下角を上げる”ための答えは『緩やかな入射になる方がいい』と言う。ここを目的に開発したわけではないが、テスト結果は共通していたとか。
「テストしたほぼ全員、ほんと9割5分くらいの選手が一致してコレだったんですよ。フィーリングも良く、結果も良かった。よくプロの場合は振りやすいモノは速く振れていい感じに当てられ、結果として球が高くなることがありますが、そこに近い結果が出ていて、意外にも手元側がしなるんです。
プロは手元が硬くて違和感があると、無理にしならせに行ったり、外からガツンと入って入射角が強くなりすぎるケースが結構あります。『TRAVIL』だと、意外に入射角が緩やかになり、レベルに近く当たって打ち出しとスピン量が上がる。その上、距離も損なわない結果がほぼ全員一致したので、これで行こう!となりました」
『MCI BK』より「少したまる」
同社には古江彩佳がプロ入り前からずっと愛用してきた【中調子】の『MCI BK』もあるが、今年のメジャーの次週「JMイーグルLA選手権」で『TRAVIL』にスイッチ。古江は投入週4位→2位→4位→14位と好調だが、この『MCI BK』と比べて「明らかに『TRAVIL』の方がたまるイメージ」なのか?
「明らかにとか、そこまでじゃないですが、今までのMCIよりたまる感じはありますね。これには硬さの設定もあると思っていて、『TRAVIL』は今までの『MCI』や『MCI BK』より硬さの設定も少し柔らかめ。もちろん同じ硬さでも試作していますが、色々やった結果、プロから『柔らかい』とも言われず、結果も良かったんですよね。
あと、バット径が他よりも少し細いこともありますが、手元側が柔らかいと、当然、振動数も少しcpmが下がりますよね。だから、ちょっとたまる感じもあって、動きも滑らかな感じがするのに、前よりも上がるという…。今までの経験だと、もっとピンピンしたものの方が上がりそうじゃないですか」
同社には珍しい、粘り系のアイアン用カーボンシャフト『TRAVIL』。既にツアー実績も十分で、試打できる日が待ち遠しい。
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