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久常涼3位タイ、若さと国際色あふれる米ゴルフ界【舩越園子コラム】

久常涼は自己ベストの3位に入ったが、プレーオフ進出は逃した(撮影:GettyImages)

PGAツアーのウインダム選手権は、悪天候で不規則進行になり、最終日を迎えた段階では、第2ラウンドさえ終了していない状態だった。しかし、第2ラウンドの残りを終えると、予選カットを行ない、第3、第4ラウンドへ。多くの選手が1日に36ホール以上をプレーし、スコアカードを3回提出するという大急ぎ、大忙しの日曜日となった。

日没後も照明器具を駆使して、なんとか明るさを保ち、その日のうちに勝者を決したスピーディーな試合進行は、さすがPGAツアーだと、あらためて感服させられた。

レギュラーシーズン最終戦の今大会終了後、フェデックスカップランキングでトップ70以内ならプレーオフ・シリーズへ進出できる。

そんな中、開幕前から注目を集めていたのは46歳の米国人選手、マット・クーチャーだった。クーチャーは17年連続でプレーオフ・シリーズに出場してきたが、今季は成績が振るわず、113位で今大会にやってきた。

トップ70に入るためには今大会で勝つしかないという状況下、そのクーチャーが初日から首位を走り始めたため、注目はさらに高まった。

しかし、体力気力を消耗させる不規則進行は、46歳のクーチャーには酷だったのだと思う。PGAツアーでも珍しいほどの長丁場となった最終日、クーチャーは徐々にリーダーボードの上段から滑り落ちていった。
入れ替わるように上位争いを演じ始めたのは20歳代の若い選手たちだった。日本の久常涼も、その1人だった。第2ラウンドを「67」で終え、第3ラウンドではスコアを6つ伸ばして3位タイへ浮上。最終ラウンドでも着々とスコアを伸ばし、72ホール目を迎えたときは首位と1打差の単独3位だった。

しかし、力みが出たのか、18番では左足下がりからの2打目をグリーン右奥へオーバーさせ、3打目でピン1.5メートルへ寄せたものの、ボギー・フィニッシュ。

それでも首位から3打差の3位タイは久常にとって自己最高の成績。ランキングは83位となり、プレーオフ進出は逃したものの、ルーキーとしては大健闘だったと言っていい。

久常がホールアウトした後、優勝争いは2人の29歳の戦いとなった。

米国人選手のマックス・グレイサーマンは、やはり今季ルーキー。未勝利ながら7月の3Mオープンで単独2位になったばかりで上り調子だ。彼の両親は旧ソ連から米国へ移り住んだ難民で、息子のグレイザーマンは米国生まれだが、英語とロシア語を操るバイリンガル。
英国出身のアーロン・ライはPGAツアー3年目だが、やはり未勝利だ。両親はインドから英国へ移住。息子のライは英国で生まれ育った。彼の父親は「息子のゴルフの費用を援助してください」と、地元紙などで呼びかけ、必死で息子を支えてきたという。

そんなふうに国際色豊かな2人が優勝争いを演じ、日本の久常も上位入りしたことは、昨今のゴルフ界とPGAツアーのグローバル化の顕(あらわ)れと見ていいのではないだろうか。

グレイザーマンとライの優勝争いは一進一退だったが、最終ラウンドをボギーフリーで回り、18番で1.5メートルのバーディパットを見事に捻じ込んだライが2打差で勝利。キャリア89試合目にして初優勝を挙げ、「PGAツアーに来たときは、難しさを思い知らされたけど、ついに優勝できて、ドリームカムトゥルーの想いだ」と実感がこもった言葉を口にした。

ロングランとなった最終日、体力気力を活かして上位フィニッシュした中には、20歳のアマチュア、ルーク・クラントン(米国)の姿もあった。

今年のジョン・ディア・クラシックで2位タイ、今大会では単独5位になったクラントンは、ホールアウト後、すぐさまプライベートジェットに乗り込み、ノース・カロライナ州からミネソタ州へ移動。一夜明けたら月曜日から始まる全米アマに臨む。

「プロの大会は僕にとってはジョーク。全米アマは僕が勝負に出るべき大会だ」

日本の中野麟太朗(早稲田大3年)も挑む今年の全米アマは、今大会同様、国際色豊かでハイレベルな戦いになりそうな予感がする。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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