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「左腕が上を向かない」症状に苦しむ上井邦浩 公傷制度でのシード維持条件は“7位”

キャディは同じ吉田直樹コーチ門下生の脇元桜 (撮影:山代厚男)

<ゴルフパートナー PRO-AM トーナメント 2日目◇19日◇取手国際ゴルフ倶楽部(茨城県)◇東コース(6804ヤード・パー70)、西コース(6544ヤード・パー70)>

40歳の上井邦浩はシード維持へ最後の戦いに臨んでいる。昨年発症した左母子腱鞘炎により、同年9月の「パナソニックオープン」で予選落ちしたのを最後にツアーを欠場。今シーズンは特別保証制度の適用を受けてツアーに参戦している。この資格で出場できるのは、22年シーズンの『シード獲得者の平均出場試合数』から『上井の出場試合数』を引いた4試合のみ。今大会がその4試合目となる。

上井は2日目に西コースを回り、7バーディ・2ボギーの「65」でトータル9アンダーまで浮上。順位は21位タイから5位タイにジャンプアップとなった。

今大会でシードを維持するための条件は、22年の17試合と今年の4試合を合算した賞金額が、昨シーズンのシード獲得最下位選手だった木下裕太の1132万9850円を上回ること。そのために必要な金額は186万7416円で、2人までの7位タイ以上に入ることが“ノルマ”だ。逆に8位以下で終えると、来週以降の出場権を失ってしまう。

決勝ラウンド2日間の成績次第で、今シーズンのプランが大きく左右されることになるが、「基本はあまり(シード維持に)期待してないです。順位を気にしてそこに入れるんだったら、今頃こんなことになってないですよ」と笑い飛ばす。

そもそも、ことの始まりは5年前。趣味の野球で「グローブを(地面に)つこうとしたらガキッと」左前腕を骨折したことだった。左前腕の内側には今でも生々しい手術跡が残る。手術後はゴルフのプレーに影響はなかったが、昨年になって左前腕に入っているプレートの影響で、「癒着の影響か左腕が開かなくなったんです。上を向かない」という症状が出てきた。左腕が自然と内側を向くようになり、外に開かない。

「最初はイップスじゃないけど、自分が思っている以上にドライバーがばんばん右に飛ぶ。外に回そうとしているつもりが、全部最初は右にいった」。ボールをつかまえようと無理に左腕を返そうとしているうちに、今度は左肩を痛め、左手親指の腱鞘炎にまで及んだ。

「左腕を内側にしたほうが楽なので、トップでシャフトが左に向くんです。自然レイドオフです(笑)。したくないのに」。本人は明るくそう話すが、症状はかなり深刻だ。左前腕のプレートを取り除く手術をすれば症状は改善するが、予定は今年12月。今は痛みを押して、職場を確保するための試合に全力を尽くすだけだ。

「今は朝が怖いですね。起きたときにおかしいなというのがしょっちゅうだから。痛くて寝られないときもあります。取れるものなら、ほじくってプレートを取りたい」。左腕の状態に毎日ビクビクとしながら、満身創痍でプレーを続けている。「これが現状なので変わることはない。やるべきことをやるだけ」。そう静かに吐き出して運命の週末へ進む。(文・下村耕平)

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