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ウッズから若者たちへ、着実に近づく「引き継ぎ」の時期【舩越園子コラム】
米ロサンゼルス郊外のリビエラCCで開催されたPGAツアーの大会、ジェネシス招待は、世界ランキングのトップ50のうちの40人が集結し、今季からPGAツアーが採用している「格上げ大会」にふさわしい豪華な顔ぶれになった。
とはいえ、開幕前からの注目は、7カ月ぶりの公式戦出場となったタイガー・ウッズに集中し、3日目が終わるまでは、ほとんどウッズのワンマンショーのようだった。
初日のウッズは同組だったローリー・マキロイとジャスティン・トーマスを何度もアウトドライブし、大幅な回復ぶりをアピール。
しかし、ついつい調子に乗ってしまったのだろう。47歳の自分より飛距離が出なかったトーマスをからかう「ジョークのつもり」で、ラウンド中にウッズがトーマスに生理用品を手渡した悪ふざけがカメラに捉えられ、批判の嵐を巻き起こした。
きわめて軽率な行為だったことはウッズ自身も認め、2日目のラウンド後に素直に謝罪した。
3日目は一転、そんな騒動を人々の脳裏から消し去るかのようにスコアを4つ伸ばす快進撃を披露し、32人ごぼう抜きで26位タイへジャンプアップしたところは、いかにもウッズらしい切り替え方だった。
ただし、2021年2月の交通事故で重傷を負った右足の「耐久時間」は、必死のリハビリを重ねてきたとはいえ、依然として4日間72ホールには達しておらず、寄せワンのパーセーブを逃した最終日の5番あたりからは、スタミナ切れが見て取れ、集中力も途切れ途切れになっていった。
8番、9番でもボギーを喫し、この日は3バーディ・5ボギーで2オーバーのラウンド。ボールスピードも飛距離もフェアウエイキープ率も、あらゆる数値がダウンした最終日、ウッズは26位タイから45位タイへ順位も大幅ダウンして4日間を終えた。
「戦線離脱が長かったことが大きい。引き継ぎの時期は近いということだ。チャンピオンズツアーのリーダーボードは知った顔ばかりだが、このPGAツアーでは次代を担うニューフェースたちが奮闘している。彼らと一緒に戦うことができて良かった」
そう語ったウッズの言葉からは、ツアーの牽引役を引き継ぐタイミングやシニア入りの時期が確実に近いづいていることへのウッズの実感と淋しさも伝わってきた。
ウッズが言った「次代の担い手」の筆頭は、最終日に見事な優勝争いを演じたジョン・ラームとマックス・ホーマだ。
どちらも今季すでに2勝を挙げて好調なゴルフを維持していたが、今週はラームに軍配が上がった。
ホーマから3打リードの単独首位で最終日を迎えたラームは、折り返し後に続けざまにボギーを喫し、「10番から12番はアグリー(醜い)なゴルフだった」。
しかし、自分のミスを悔いたり腹を立てたりする代わりに「このリビエラはとても難しいコースなんだと自分に言い聞かせ、気持ちを切り替えた」。
14番ではカラーからのロングパットを沈め、16番では、もう少しでホールインワンの快打を放ってバーディを奪い、見事な盛り返しを披露。ホーマに2打差のトータル17アンダーで今季3勝目、通算10勝目を挙げた。
ゴルフはミスのゲームであり、人生にも失敗はつきものだが、謙虚に受け止め、気持ちを切り替えれば、失ったぶんを取り戻すことができる。一層の前進だって可能になる。
そのことをラームもウッズも、それぞれの戦いぶりで示してくれたように思う。
ホーマは2位に甘んじたものの、執拗な追撃は見事だった。最終日に7つスコアを伸ばして急浮上し、単独4位になったウィル・ザラトリス、6つ伸ばして9位タイに食い込んだジェイソン・デイの猛チャージは圧巻だった。上がり3ホールをバーディ、イーグル、バーディで締めくくり、6位タイになったコリン・モリカワのネバーギブアップの追い込みは、さすがだった。
ウッズが言った「次代の担い手」たちは実に頼もしい。話題を独占していたウッズに取って代わり、最後にはスポットライトを自身に向けた若い選手たちの実力は、これからますます発揮され、輝いていく。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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