感極まった“ラストゲーム” 池田勇太が「女房のような存在」と涙の別れ

ラストゲームに感極まる(撮影:福田文平)

<前澤杯 最終日◇27日◇MZ GOLF CLUB(千葉県)◇6652ヤード・パー70>

池田勇太が、長年連れ添った“相棒”との別れに涙した。7年間苦楽をともにしたエースキャディ、ラジーフ・プラサドさんとのタッグは、今大会が最後だった。

ホールアウト後、池田から花束が贈呈され、ラジーフさんとその家族、そして池田自身との記念撮影が行われた。最初は笑顔に包まれていた撮影も、やがて互いの目には涙が浮かび始めた。

「いつもと同じ気持ちでと思ったんですが」。池田は言葉を詰まらせ、堪えきれず涙をこぼした。

別れの理由は、ラジーフさんの家族のためだった。母国フィジーで暮らす家族の体調が優れず、帰国を迷うラジーフさんに、背中を押したのは池田自身だった。「俺が『行け』と言った。あいつには家族も人生がある」。簡単な決断ではなかった。だが、7年間の絆があったからこそ、相棒の人生を最優先に考えられた。

「全力で尽くしてくれて、俺の腕となり足となり、キャディとして、女房のような存在」。そう語る池田にとって、今大会はラジーフさんに花を持たせたい。そんな思いも胸に秘めていたはずだ。

ただ、「別れるまで、厳しい現実を突き付けられて、あいつも辛かっただろうし」。2017年からバッグを担いだラジーフさんは、19年には「ミズノオープン」で池田のツアー21勝目を支えた。しかし、22年には顎編位症に悩まされ、翌年には14シーズン守り続けたシードを失った。昨年も思うような成績は残せず、シード復帰は叶わなかった。今大会も結果は60位タイ。別れの涙の裏には、池田自身の悔しさも滲んでいた。

池田は最後に、ファンにも感謝の言葉を贈った。「来週からは自分1人で辛いけど、ラジーフのことを応援してくれた皆さんに感謝します」。名コンビの歩みはここで一区切りを迎えた。だが、別々の道を進みながらも、2人の物語はこれからも続いていく。(文・齊藤啓介)

関連記事