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日本で選んだ師匠はジャンボ尾崎 P・サイパン、母からの言葉も支えに初V

P・サイパンが日本で新たな一歩を踏み出した(撮影:福田文平)

<ECCレディス 最終日◇2日◇北六甲カントリー倶楽部 東コース(兵庫県)◇6516ヤード・パー72>

最終日のコースでプレーしたのはたったの2人で、しかもわずか1ホール。しかし、その喜びの大きさは変わらない。「本当にうれしいです。このひと言に尽きます!」。微笑みの国・タイから来た25歳のP・サイパンは、最後に雨雲も吹き飛びそうな晴れやかな笑顔を見せた。

降雨によるコースコンディション不良により、早朝、最終日のラウンドが中止になることが決定。2日目を終えトータル6アンダーで並んでいたサイパンとウー・チャイェン(台湾)による、優勝をかけたプレーオフのみが行われることになった。その舞台は15番パー3。昨年のプロテストに合格したばかりルーキー対決は、まだ雨が降りしきる午前9時に開始された。

6番アイアンでピン右手前7メートルにつけたサイパンに対し、相手は左手前10メートル。ここから先に打ったウーは1メートルオーバーした。この時もサイパンは「ラインも違いましたし、彼女のパッティングは見ていなかった。自分の距離とラインをしっかりと把握し、入れることしか頭になかった」と、カップにだけ集中。その一打を50センチまでピタリと寄せた。ライバルのパーパットがカップに蹴られても表情は一切変わらない。あとは冷静にウイニングパットを流し込み、3打で決着をつけた。

試合がない時は、千葉県にあるジャンボ尾崎ゴルフアカデミーで腕を磨いている。原英莉花、西郷真央らと同じ“ジャンボ門下生”で、師匠からは『ドライバーをしっかり飛ばせ』という注文を受けているという。2週前に「ブリヂストンレディス」でレギュラーツアーデビューを果たした時には、周りのショートゲーム技術の高さに脱帽したという。「自分もそのレベルにたどり着きたいと思い、それから必死に練習したことが今回の結果につながったと思います」。日本でのゴルフ環境を整えてくれる師匠に、ひとついい報告ができそうだ。

プレーオフの前には、母親に一本電話をいれた。『どんな結果になろうとも頑張ってきなさい。グッドラック!』。異国で聞く、慣れ親しんだ声も支えになった。2016年からは米国ツアーでプレーし、18年にも賞金ランク74位になりシード入りも果たしたが、今年から新天地として選んだ日本には「来てよかった」とも話している。そこでステップ・アップへの第一歩を踏み出した。

もちろんリランキングを突破し、今シーズン中にトップカテゴリーを主戦場にできる可能性も残すが、ひとまずこの優勝でQT最終ステージに出場する権利も得た。昨年は最終日に「80」を叩き失速した舞台で、今度こそしっかりとレギュラーツアーの出場権を手にしたい。ここからいくつもの“グッドラック”なできごとを、日本で増やしていく。

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