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イ・ボミは引退発表から一夜明けファンに感謝 「皆さんが喜んでくれる姿が好きだった」

今季限りでのツアー引退を表明したイ・ボミ。その心中を語った。(撮影:米山聡明)

<ダイキンオーキッドレディス 事前情報◇28日◇琉球GC(沖縄県)◇6560ヤード・パー72>

会見場に現れて席に座ると、「こんにちは。今年もよろしくお願いいたします」と挨拶。そこには日本のファンから愛されたいつものやさしいイ・ボミの顔があった。

前日、所属先の延田グループから、今季限りの日本ツアー引退を発表。ホステスプロとして出場する10月の「NOBUTA GROUPマスターズGCレディース」が日本での引退試合となる。「正直、試合の緊張感がすごすぎて引退することは頭にないですけど、今週もいい思い出ができるように頑張りたいです」と、流ちょうな日本語で気持ちを明かす。

それまで数試合は推薦で日本ツアーに出場する見込みだが、それをなぜ3月の開幕戦で発表しなければならなかったのか。すると「全国にいるファンのみなさんに感謝の気持ちを伝えたくて早く発表しました」と、ファンを大事にしてきたボミらしい答えが返ってきた。

引退については、ボミのプロ生活を支えてきた母親のファジャさんや、19年に結婚した韓国の俳優、イワンさんとも話し合いを重ねてきた。決断を最初に伝えたのは母。「私がずっと『しんどい、しんどい』と言ってきたので、本当は『去年でやめていい』とお母さんも言っていた。今年、もう一回私が頑張りたいと言ったので、『今年で(終わりで)いいんじゃない』と言ってくれました」。

そして最愛の夫は、「結婚したときに、私が好きならもっとやってもいいと言ったんですけど、ずっと私が成績でストレスがあり、健康を心配してくれて、『そんなにしんどいんだったらいいんじゃない』と、引退することになった」と、ボミの決断を尊重してくれた。

2015、16年には圧倒的な強さで勝ち続け、2年連続賞金女王に輝いた。しかし「18年からスイングの悩みが出てきて、賞金女王を2回とったあとに目標がなかった。ゴルフが大好きだから試合を頑張っていただけで、性格的に競うことはあまり好きでなかった」と気持ちは切れかけていた。

それでも「28歳まで頑張ろうと思った」ゴルフが、34歳になった今も続けられたのはファンの力があったから。「正直、私の満足感よりも、お母さんやファンの皆さんが喜んでくれる姿が私は好きだった。それが見えなくなったときに、私的にしんどくなってしまって、それがやめる理由になっちゃったかな」と、寂しそうに話す。そして、「スタッフたちが助けてくれたから、試合に行くことができたと思います」と、チーム・ボミにも感謝を述べた。

10月のマスターズGCが引退試合となるが、もしそれまでに勝てば、来季のシード権や最終戦の「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」の出場権を得ることになる。それでも“引退”なのか。「それがあると思って5年間頑張ったんですけど、なかなか難しいと思う。(優勝)できても、そこで引退できると思います」と、競技生活延長は否定する。

昨年4月で9年間守ってきたシードを失ったが、「日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯」だけは歴代優勝者の権利で出場権を残す。これにも「自由人になりたいです(笑)。みんな努力をしている。私はしなくて遊びに行くのは本当にダメ。ツアー選手は全部努力しないとダメ」と、出る意思はない。

そして、「今でもどこに旅行にいっても練習しなきゃダメ、準備しなきゃダメというのが頭にずっとあった。自由になって旅行にいきたいなー。パリとかスイスとか自然がきれいなところに行ってみたい」と、自由人になりゴルフを考えずに過ごす日常を思い描く。

最後はファンに対してメッセージ。「頑張っている姿を見てもらいたい。成績が悪くても笑っている姿を正直見せたくない。頑張っているところを見てほしい」。“スマイル・キャンディ”と呼ばれて愛された笑顔よりも、真剣にプレーする姿で感謝を伝えていく。今週、23年のシーズン開幕とともに、ボミの引退ツアーもスタートする。(文・下村耕平)

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