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ゴルフ場の駐車場で軽自動車は見かけない? ゴルフ真の普及と来場するクルマの変化

ゴルフ場の駐車場で軽自動車やレンタカーを見かける機会が多くなった(撮影:ALBA)

「ゴルフ場の駐車場に軽自動車はいないねぇ」
という話が出て、ビックリしました。そして同時に、面白いなぁと思ったのです。

昭和の頃、ゴルフコースの駐車場で、軽自動車は本当に見かけませんでした。何らかの事情で、軽自動車で来場しても車寄せには侵入せずに、そっと目立たない位置に車を止めるのが心遣いでした。

企業を経営していて、高額な外車に乗っている知り合いがいます。彼は、取引先に行くためだけに、軽自動車も所有しています。取引先に、高級な外車で乗り付けるのは色々な意味で上手く行かなくなる要因になるからなのだそうです。

ゴルフコースの駐車場に軽自動車がないのは、彼のビジネスのハウツーと同じベクトル上の“忖度”です。ゴルフコースに対する礼儀であり、そこに来ている来場者同士の暗黙の了解だった時代があった。あの頃は、軽自動車しか持っていない人は、セダンのレンタカーを借りてゴルフコースに来るのが常識だ、と教えているマニュアルさえもありました。

社用族が主役だった昭和の時代は、そのコースに相応しい企業人であることが求められて、乗っている車のグレードも問われたのです。その頃、時々車を借りに来る友人がいました。彼はトヨタ系列の企業に勤めていた関係で、会社のコンペなどになるとトヨタ車を借りに来ていたのです。彼は自分の趣味で日産車に乗っていたからです。最初は気にせずに乗ってコースに出向き、翌日に上司に「社会人としての常識に欠ける」、と猛烈に怒られたそうです。良くも悪くも、昭和の時代はそういうものでした。(現在でも、その手の忖度が必要だという話は存在しますが…)

約10年前から試打ラウンドをさせてもらう関係で、地域で一番安いと評されるいわゆる大衆コースに通っています。また、取材も兼ねて若い人が激増している行きやすいコースをあえて利用するようにしています。そのような安価にプレー出来て、若者が多く来場するコースでは、駐車場にかなりの割合で軽自動車が止まっています。奇妙な忖度など、過去の話どころかそもそも存在しません。

もちろん、高速道路を長距離走るのに軽自動車では辛いから、とか、キャディバッグなど積み荷の関係で知り合いのもっと大きな車で、と考える人も一定数いるでしょうから一概には言えません。しかし、軽自動車じゃゴルフ場に行けない、と考えるのはおかしい。

もっと驚くのはレンタカーの多さ。多いときは、3台に1台。少ないときでも5台に1台は、“わ”ナンバーを確認するまでもなく、レンタカー会社のステッカーが貼られた車なのです。安価で、気軽にプレー出来るゴルフコースは、多くが都会から遠くて、へんぴな山奥にあることが多いので、当然自動車でなければ行き来できません。だからレンタカーになる。このあたりにも、クルマを持たない(あるいは、持てない)現代のライフスタイルが如実に表れています。

大衆コースでは若いゴルファーの多くが、小さな車にルパン三世の一味のようにギュウギュウ詰めになって乗って来場します。4人の方が、3人や2人よりもプレー代が安くなるので、4人組になって乗り合わせて来るのです。“ゴルフが好きで楽しい”という雰囲気も、一緒に乗せてくる微笑ましく頼もしいシーンです。

令和のゴルフブームが来たと言われています。現在でも、駐車場で軽自動車を見かけないゴルフ場は少数ですが存在します。それぞれの価値観に応えるようにコース側も多様化している現在。ゴルフコースの駐車場を観察すると、そういう時代の断面が見えて来るものです。

いずれにしても、ゴルフ場にどんな手段で行くかに優劣などはなく自由。『軽自動車では気が引ける』、もしいまだにそう思っているのであればためらう必要はありません。駐車場で軽自動車を見かける機会が増えたのは、ゴルフが真の意味で普及しつつある証拠ではないでしょうか。

(取材/文・篠原嗣典)

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