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松山英樹に続く連覇達成 S・シェフラーはなぜ強くなった?【舩越園子コラム】

メレディス夫人とともにトロフィーを掲げるスコッティ・シェフラー(撮影:GettyImages)

「WMフェニックス・オープン」最終日の優勝争いは、昨年大会の覇者、26歳のスコッティ・シェフラー(米国)とカナダ出身の34歳、ニック・テイラーが一時は首位に並ぶ熱戦になった。

昨年のマスターズ・チャンピオンでもあるシェフラーが13番(パー5)で鮮やかなイーグルを奪えば、テイラーもすかさずバーディを奪取して食い下がる。そんな2人の運命を分けたのは、大観衆が狂喜するスタジアム形式の16番(パー3)だった。

どちらもグリーンを外した後、シェフラーが5メートルのパーパットをしっかり沈めたのに対し、テイラーは2メートルを外して、この日、初ボギーを喫した。17番でもシェフラーがバーディパットを沈めた一方で、テイラーは再び短いパットを外し、パーどまりとなった。

3打リードで迎えた18番。シェフラーはティショットを大きく右に曲げながらも、着実にパーを拾った。テイラーは最後にバーディを奪い返して意地を見せたが、時すでに遅し。2打差で抑え込んだシェフラーが松山英樹(2016年&2017年)に続く大会史上7人目の連覇を達成し、通算5勝目を挙げた。

「今日は終始、冷静さを保ちながら、いい流れでプレーできた。16番のパットが何より大きかった」

マイクを向けられたシェフラーは、最初は淡々と振り返っていたが、この優勝で世界ランキング1位に返り咲いたことへの感想を求められると、喜びが一気にあふれ返り、笑顔を輝かせた。

「いいねえ。そりゃあ、いい気分だよ」

シェフラーは昨季最終戦の「ツアー選手権」最終日を単独首位で迎えながら、ローリー・マキロイ(北アイルランド)に逆転勝利され、目前だった年間王者の座を奪い去られた。

今大会では、そのマキロイから王座を奪い返し、リベンジを成し遂げた形になったが、シェフラーが喜んでいたのは、執拗なゴルフで勝利をつかみ取った自身の戦い方だった。

最終日のティショットは出だしから乱れ、初めてフェアウェイを捉えたのは8番だった。「ティショットも良くなかったけど、アイアンもシャープではなかった。その中でよく踏ん張れた。決してベストなゴルフではなかったけど、グレートな戦い方ができた」。

惜敗したテイラーはPGAツアー通算2勝の実績だが、昨今の成績は振るわず、今大会には世界ランキング223位から挑んだ。それでも最終日にシェフラーに追撃をかけ、一瞬でも彼を捉えて渡り合ったテイラーの戦いぶりは大健闘だったと言っていい。

13番までは6バーディを奪って勢いづいたが、16番でパーパットを外したショックを引きずるかのように17番で絶好のバーディチャンスを逃したことが、テイラーの唯一のミスだった。その負け方は、昨年のツアー選手権におけるシェフラーの負け方と通じるものがあった。

シェフラーはミスがミスを呼ぶ連鎖を断ち切り、小さなミスを大ケガに繋げないことを肝に銘じていた。だからこそ、72ホール目のティショットを大きく曲げても動じることなくパーで収め、この日をノーボギーで回り切り、大会連覇と世界一の座を手に入れることができたのだろう。

「最後(のウイニングパット)が、たった6インチのパットになってくれるなんて想像もしていなかった」

昨年大会は2打差から逆転勝利してツアー初優勝を飾り、「アーノルド・パーマー招待」で2勝目、「WGC-デル・テクノロジーズ・マッチプレー」で3勝目、そして4月の「マスターズ」でメジャー初優勝を挙げた。

シェフラーにとって、この大会はすべてが始まったスターダムへの出発点。そして、このTPCスコッツデールは永遠に「初めて勝った特別な場所」であり、「常に初心を思い出させてくれる故郷のようなスペシャルな場所」だという。

「これからもハードワークを続け、立ち止まることなく前進していく」

シェフラーの視線の先にあるものが、マスターズ連覇であることは、疑いようもない。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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