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『月間3勝』は23年ぶり快挙 平田憲聖はラストスパートで逃げ切り「全部の気が抜けたような感じ」

強い! 平田憲聖が逆転で今季4勝目(撮影:岩本芳弘)

<パナソニックオープン 最終日◇22日◇有馬ロイヤルゴルフクラブ(兵庫県)◇7100ヤード・パー72>

最終18番のグリーン上。23歳の平田憲聖が両手を上げて空を見上げた。その瞬間、会場は歓声と拍手に包まれ、今年4回目のウォーターシャワーを笑顔で浴びた。

トップと2打差の2位で迎えた最終日。今年4度目の最終組で優勝争いを繰り広げた。“おはようバーディ”でスタートするも、そこから8番まではパーを並べ、なかなかスコアを伸ばすことができなかった。「追いかける立場で苦しかった」と振り返るが、9番から4連続バーディと勢いは止まらず、14番からも連続バーディ。ボギーフリーの「65」と7つ伸ばして、トータル25アンダーで逆転優勝を飾った。

この日、朝から雨が降りしきった。「フジサンケイクラシック」で今季3勝目を挙げたときも雨が降っており、そのときは悪天候の影響で36ホールの短縮競技になるほど強い雨だった。そのなかで第2ラウンドで「63」をマークし勝利している。そして今回も、天候がすぐれないなかでビッグスコアをただき出した。

「雨はそんなに嫌いじゃない。悪天候になればなるほど、伸ばし合いより、我慢しながらの僅差での勝負になってくると思った。そういうほうが僕には向いている。スタート前も楽観的に考えていました」。“耐えのゴルフ”が強みと感じている平田は、雨天を味方につけた。

単独首位で最終日迎えた清水大成とは、「関西オープン」でも最終組で優勝争いを演じた。前半はともにスコアを伸ばせず、差を縮めることができなかったが、後半に平田がバーディラッシュ。清水もチャンスにつけるなど、緊張感が張り詰めるサンデーバックナインだった。

「もちろん追いかける立場で苦しかったですし、でもそれは清水選手も。僕があの立場なら、2打をより広げたいと思うのが当たり前だし、それをこうできていなかったのは清水選手も苦しい展開だったと思います。だから勝負は後半だと思っていた。そのなかで9番で(バーディを)取れたのはすごく大きかったです」

平田がトータル25アンダー、清水がトータル22アンダーとして、3打差で残り3ホールに入った。「ラスト3ホールは、18ホールのなかで苦手なホールだったので、本当にわからないなって。バーディ、ボギーで1打差になるので。そういった気持ちでずっとプレーしていた」と、苦手意識のあるホールでスコアを落とせない状況だった。たが、得意の“我慢メンタル”で逃げ切った。ウイニングパットを決めると、「全部の気が抜けたような感じ」と緊張から解放され、表情はすがすがしかった。

フジサンケイクラシック、日韓亜共催ツアー「Shinhan Donghae Open」、そして今大会とこの9月に3勝を果たした。これは2001年の10月「ジョージア東海クラシック」、「ブリヂストンオープン」、「PHILIP MORRIS CHAMPIONSHIP」で3勝した伊澤利光に続く、23年ぶりの記録達成。ツアー史上5人目となる快挙となった。

「今週も特に調子が良かったわけではなかった。全体的なレベルも少し上がって、調子が悪いなかでも自分のプレーをする方法やそういうときにどういうショットが出るのか(が分かって)、スコアメイクにつながっていると思います」と、勝利を重ねた経験が生きた結果となった。

強みは「伸ばしあいより、我慢する」プレースタイル。しかし、「最近は伸ばしあいのなかでも(バーディが)取れるようになってきた」と成長を感じることもできた。国内男子ツアーは今季残り7試合で、賞金ランキングでは2位に大きな差をつけ、堂々の1位に立っている。「ここまできて意識しないほうがおかしい」と、賞金王の座はもちろん狙っている。

「だからといって変わることはないですし、ここからまた大きいトーナメントが続くので、勝ちを積み重ねられるように頑張りたい」。この勢いを止めることなく、プロ3年目の23歳が“王者”に向けて走り出す。(文・高木彩音)

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