日産×篠塚さん 世界にインパクトを与えた“技術の共演”

スポーツカーの名車「GT-R」(右)と次世代EVこと「アリア」(左)。そして、元プロ野球選手の篠塚さん(中央)

歴代のノウハウを集約した「GT-R」、時代を先駆けるEV「アリア」

日産を代表する究極のスポーツカー「GT-R」の専用エンジン(VR38DETT)は、横浜工場で生まれる。このエンジンを組み立てられるのは、高い技能を持ち『匠』として認定された組立作業者だ。彼ら熟練の職人によって手作業で丁寧に組み立てられる。このハイスペックなエンジンを仕上げるクリーンルームは、室温や湿度を一定にキープしつつ、ホコリが立たないように空気ではなく電気の作業ツールを用い、静電気防止の作業服を身につけている。

一基のエンジンを一人の「匠」が一貫して担い、ミクロン単位で繊細に手間暇をかけて仕上げるので、1日に数台しかできない。「GT-R」のハンドルを握った篠塚さんが「カッコいいだけじゃなくて、エンジンの音や加速感、地を這うような滑らかな走りはさすがです」と口にした、世界トップクラスの高性能エンジンが、統一された品質でできあがるのだ。
 
一方で、次代を担う100%EV(電気自動車)の開発も日産は先を行く。初めてEVに乗ったという篠塚さんが「ガソリン車と変わらない走りで、重心が低くどっしりと安定して運転しやすい」と話す「アリア」。充電をすればゴルフ場の往復でバッテリーが切れる心配はほぼないし(航続距離/仕様により最大460~640㎞)、車内やトランクが広くてキャディバッグが3~4台、積める。

走行性能については、電動4輪制御技術「e-4ORCE」(4WD)の搭載グレードだと、ブレーキをかけても体が前のめりしないし、カーブでも思った通りにコーナリングできる。また、先進の運転支援技術「プロパイロット2.0」(メーカーオプション)により、状況に応じて同一車線内での“ハンズオフ”も可能。ゴルフ帰りで疲れたときや渋滞時のドライブに不安がある人にも助かる技術だ。

篠塚 和典(しのづか・かずのり)
1975年のドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。美しく正確なバットコントロールで首位打者に輝くこと2回、通算打率は.304をマーク、「安打製造機」の名をほしいままにした。ゴルフ歴46年、HC4

磨き抜かれた技量と感性が、良質なクルマやプレーを生み出す

 
篠塚 「GT-R」のエンジンは、いったんバルブを組み立てて、それを「匠」が測定して、もう一度バラして、最適な部品を組み替えて、また確認して、という通常のエンジンではやらないような手間をかけて作り込まれているようですね。横浜工場を見学して、日産のエンジンやクルマ作りは、人の“技術”を大事にしていることがよく分かりました。

濱口 ありがとうございます。やはり人が手で作業をしたり、設備を使ったりしてエンジンやクルマができあがります。それぞれの人の技術がないと、良いモノはできません。スポーツの世界でもそうだと思いますが、チームプレーでも個人の能力が上がっていかないとチーム力は上がらないのではないでしょうか。

篠塚 そうですね。野球で技術力は不可欠です。一つひとつのプレーを細かく丁寧に突き詰めなければ、高い技術はつきません。ボールを打つにはそれなりの根拠があるので、1から順番に磨いていかないと高い確率では打てないし、そのどこかを抜かしちゃうと技術が身につかないんです。まずは「ああいうふうになりたい」という目標を作って、ある程度は真似をして、そこから“自分流”のやり方を身につけていく。それも体に染み込ませなければなりません。

濱口 「GT-R」のように高性能なクルマの場合、一つひとつの部品の精度について要求レベルが高いと思います。そうでなければ高い性能が出ません。そして、そのように仕上げるには、作業者に高度な技術がなければならない。それができる人間が「匠」ということです。一方で、篠塚さんがおっしゃった“自分流”が、我々の仕事(クルマ作り)の中であるかというとそうではなくて、むしろ“自分流”があってはいけません。そうじゃないと、クルマやエンジンの出来が違ってくるので。私たちは量産品を作るので「どのクルマでも同じ品質のモノができる」「誰がやっても同じモノができる」ということが要求されています。

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