
アイアンでもカーボンシャフトの選択はあり? スチールシャフトとの違いや使用プロも紹介
3.ツアー優勝プロが使っているアイアンのカーボンシャフト
最後に、ツアー優勝した女子プロが使用しているカーボンシャフトのおすすめモデルとその特徴について紹介していきます。
岩井千怜『レクシス カイザi(8S)』
今季の開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」を制し、ツアー通算5勝目を挙げた岩井千怜プロは契約するヨネックスのカーボンシャフト『レクシス カイザi』の“8S”を使用しています。ヨネックスは、ヘッドだけでなく、シャフト開発にも力を入れているメーカーで、ドライバーからアイアンまで、さまざまなモデルを展開しています。
『レクシス カイザi』は、アイアン用では珍しい先中調子タイプのシャフトです。強烈なしなりと高い復元力を持つ新素材「2G-Namd Flex Force」を採用することで、インパクト時のエネルギーロスを軽減。ヘッドの走りによって、ボール初速を上げながら、適正スピンがかかって、グリーンに止まるボールを打ちやすくなっています。
スペックとしては70グラム台、80グラム台それぞれにSとRのフレックスがラインナップされています。先が走るタイプのシャフトをウッドで使用している場合、非常に相性が良いシャフトで、振り心地が揃ってくれます。
原英莉花『アッタスFF(85)』
国内メジャー「日本女子オープン」2勝などの実績を持つ原英莉花プロは、USTマミヤの『アッタスFF』を使用しています。60グラム台から90グラム台まで幅広い重量帯がラインアップされていますが、原プロは上から2番目に重い“85”を使用しています。
『アッタスFF』シリーズは、アイアン用カーボンの常識を覆すさまざまな工夫が施されたシャフトです。まずSやRなどの設定がない「フレックスフリー設計」を採用しています。これにより例えば、5番用のシャフトをそのまま5番のヘッドに装着すればSフレックス相当の硬さになりますが、5番のヘッドにあえて7番用のシャフトを装着してRフレックス相当まで柔らかくする…といった調整が可能となっています。最適な硬さを選べることで、タイミングが取りやすくなり、左右へのブレを抑えることができます。
他にもシャフト先端に衝撃吸収剤を配置した「KSテクノロジー」によって、インパクト時の衝撃を軽減し、飛距離のバラつきを抑えることに成功。衝撃が減ることで、体への負担も少なくなるので、腰や手首に不安がある人にもおすすめなモデルとなっています。
また、番手ごとに2グラム以上の重量差を付ける「ウェイトフロー設計」も採用されていて、ロングアイアンは軽量で振り抜きやすく、ショート番手は重めでコントロール性が高くなるように調整されています。
西村優菜『MCI(70R)』
2023年から米国女子ツアーに参戦し、見事にシード権を獲得した西村優菜プロは、藤倉コンポジットの『MCI』シリーズを愛用しています。6IからPWまでは“70R”を、ウェッジには“80S”を入れています。
『MCI』はカーボンと金属を複合した新しいタイプのシャフトで、女子プロを中心に根強い人気を誇っています。カーボンシャフトは比重が軽く設計自由度の高さがあるものの、同時にさまざまなデメリットも存在します。例えば、スチールに比べて手元重心になりやすく、ヘッドバランスが軽くなったり、重くした場合にフィーリングが悪くなりやすいことです。
そこで藤倉コンポジットが開発したのが「MCI(メタル・コンポジット・テクノロジー)」で、比重の重い金属を複合することで、カーボンの設計自由度を生かしながら、より細かな重心位置の調整を可能とする技術です。これにより、カーボンシャフトのしなやかな動きを生かしながら、スチールシャフトのような耐久性やネジレ剛性を持った高性能なシャフトの製造が可能となりました。
『MCI』シリーズは50グラム台から100グラム台とかなり幅広いスペックが用意されていますが、これも金属を複合する技術があるからこそできた豊富なラインナップなのです。
リ・ハナ『アッタスアイアン(80S)』
2023年シーズンの「樋口久子 三菱電機レディス」で初優勝を挙げたリ・ハナ(韓国)もアイアンでカーボンシャフトを愛用しています。使用モデルは、契約するUSTマミヤの『アッタスアイアン』の“80S”。前述した原プロが使用している『アッタスFF』は操作性に優れたモデルでしたが、『アッタスアイアン』は飛距離性能に特化したモデルとなっています。
『アッタス アイアン』には、高密度金属「タングステン」をパウダー状にして配置したカーボンシートが使用されています。より細かな重心設計が可能になり、重量帯ごとに最適なバランスが出るように調整されています。同時に、スイングパワーをストレートにヘッドに伝えることも可能になり、飛距離を出しやすくなっています。
また「番手別フレックス設計」が採用され、番手ごとに弾道を最適化しながら、同じ感覚でスイングできるように調整されていることもポイントになっています。
申ジエ『TOUR AD Type-2(65S)』
元・世界ランク1位、米国女子ツアーで賞金女王を獲得したこともある実力者の申ジエ(韓国)は、グラファイトデザインの『TOUR AD-65 TypeⅡ(S)』とかなり軽量なカーボンシャフトを使用しています。
『TOUR AD-65 TypeⅡ』は、軽量でありながら、程良いしっかり感を持たせることで、飛距離と方向性を両立させたモデルです。気持ちの良い振り抜きを重視した設計で、幅広いプレーヤーに対応できるようになっています。先端部の剛性が高めに設計されていますので、ミスショットでも距離や方向のブレを小さく抑えられています。中調子でクセの少ないシャフトになっていて、高弾道ボールでピンを狙うことができます。
4.まとめ
今回はアイアン用のシャフト、特にカーボンシャフトに焦点を当てて解説しました。カーボンシャフトは、さまざまな特性を持ったモデルが存在する分、自分に合ったモノを見つけるのが難しくもありますが、最適なモノを見つけたら、手放せないクラブになることは間違いありません。ショップによっては、カーボンシャフトの装着されたアイアンを試打できることもありますので、ぜひ一度打ってみることをおすすめします。
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