「ここ10年で一番やわらかい」石川遼はドライバーのシャフトを“SX”に変更
<Sansan KBCオーガスタゴルフトーナメント 初日◇24日◇芥屋ゴルフ倶楽部(福岡県)◇7216ヤード・パー72>
前半の16番では2メートル、17番では「プッシュアウトした」と70センチのパーパットを外して、一時は2オーバーとなった石川遼だったが、「バシッと決まるまでに8ホールかかった。18番からは全体的に良かった」といいパットを打つことにフォーカスして、1アンダーまで戻して初日を終えた。
「ドライバーもすごく良かったですし、明日にまたつながる感じにはなったと思います」。そのドライバーには以前までのブルーのシャフト『Tour AD PT-6X』ではなく、シルバーのシャフトが挿さっていた。今週から同じグラファイトデザインの『Tour AD TP-6S』に変更している。
「フレックスはS表記ですが、先端をカットしているので“SX”と呼んでいます」というシャフトは、2016年発売のモデルで新しいわけではない。これまで石川は“X”や“TX(ダブルエックス相当)”といった硬いシャフトを好んできたが、「ここ10年で一番やわらかいシャフト」に変更した。一体なぜなのか。
「前のシャフトはけっこうハードめというか、ちょっと遅れると、右に出た球が右に行っちゃう(右プッシュスライス)。そうするとつかまえたくなるので、早く当てて左に出さざるを得なくなる。スイングが変わってしまうので、それでドライバーは真っすぐ飛んでも、3Uは引っかかっちゃう」
石川のような右に出して左に戻していくドローヒッターにとって、左に出る球は感覚的に気持ちが悪い。ドライバーの下の3番ウッドと3番ユーティリティと同じ感覚でドライバーが打てていなかったことが、セッティングのつながりで「ドライバーで急にドローの幅が減っていた。気になるところとして一個あった」という。
それを半フレックスぶん、やわらかいシャフトを挿したことで、「しっかりとタイミングを遅らせるというか、ボールが出ていくのを遅らせていく意識で当ててくるとちょうど良い。すごく遅らせすぎて右に思い切り出たものが、ほんのちょっとでもドロー回転が入ってくれるのでめっちゃ助かるんです」と話す。きょうのフェアウェイキープ率は14ホール中7ホールの50%と決して高くないが、感覚的に意図しない方向にボールが飛ばなかったため、本人のドライバーへの満足度は高いのだ。
「ロングアイアンとかユーティリティとかでいいタイミングのスイングを作って、球のイメージを作って、それにドライバーのスペックを合わせていく、という感じで今回はやりました」と、クラブ全体のつながりも良くなった。
それが表れたのは、前半最後の18番パー5。ティショットはドライバーでフェアウェイど真ん中をとらえると、3番ユーティリティでドローをかけて、左奥に切ってあったピンと同じ面、7.5メートルに乗せた。イーグルパットは惜しくも外れたが、きょう初めてのバーディを奪った。「本当に同じクラブを打っているみたいな感覚でした」と振り返る。そして、「久しぶりに自分の思った球がドライバーで打てました」とまでいう。
石川は意外にも「ジュニア時代はけっこうバックスイングがゆっくりで、切り返しがグニャンとしなるシャフトが好きだった」という。中学時代までは軽いヘッドにフジクラのRシャフトを挿していた。それが高校1年でSシャフトに換わり、「プロになってからどんどんリズムが早くなったんですよ」と、高校1年でツアー初優勝を果たしてプロに転向すると、Xシャフトにまで硬くなった。一時はXXシャフトも使っており、「ドライバーの調子が悪かったときは、『やわらかい=曲がる』という感覚だった。硬いシャフトで低いフェードばっかり打っていた」と話す。
それが3年前から取り組んだスイング改造により、以前の切り返しで反動をつけてクイックに下ろす動きから、いまは「昔より切り返しが静か」になり、待てる動きに変化。スイングプレーンもスティープからシャローに変化したことで、棒のようなガチガチのシャフトではなく、「手元がやわらかい」シャフトを打てるようになってきた。
ここで1つの疑問が起こる。石川のウッド系3本、ドライバーは『PT-6S』、3番ウッドは『TP-7X』、3番ユーティリティは『UB-8X』とすべてモデルが違うのに、なぜ同じような弾道が出るのか。
「僕も同じシャフトがいいと思っていたんです。シャフトの専門家の方からするとわからないですけど、ヘッドの大きさも形も違うから、シャフトが違ってもいいのかもしれませんね」と本人は考えている。
今大会は過去10回出場して、優勝1回を含むベスト10が6度と得意としている。「本当に3番ウッドみたいな感じで打てるシャフトに出合ったなという感じ」。思い通りのドローが打てるつかまりやすくなったドライバーで、2日目の巻き返しを狙う。(文・下村耕平)
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