ピリピリした雰囲気は伝染する「怒りん坊とは心の中で距離を取り放っておく」【ゴルフが整う自律神経のトリセツ】
ゴルフは個人競技ですが、一緒に回る人によってパフォーマンスを左右されるゲームでもあります。多くの日本人ゴルフファンが見たであろう2021年「マスターズ」が、それをよく表していました。
ご存じのように、松山英樹は決勝ラウンドの2日間をザンダー・シャウフェレと回りました。このことは松山が優勝を引き寄せる要因の一つになった、と私は考えています。なぜかというと、3日目を一緒に回って松山は65を出し、シャウフェレもいいプレーに引っ張られました。
■お互いのリズムがいいプレーを引き出す
お互いにリズムが分かってやりやすかったからです。穏やか同士なのもよかったと思います。翌日のペアリングを知ったときはホッとしたことでしょう。さすがに最終日は両者に重圧がかかっているのは明らかでしたが、それでも前日と同じようにリズムを崩すまいと、いい影響を与え合いながら戦い抜いた印象があります。
一方、アマチュアのゴルフは友人知人とのラウンドがほとんどです。一緒に回る相手のリズムや性格はある程度分かっていますし、細かいことまで気にしないかもしれません。私もそういうタイプなのですが、コンペに参加するときだけは穏やかな性格の人と回れたらいいなと思っています。
■心の中で距離を取り、気にしないのが一番
穏やかな人は感情の起伏が大きすぎず、喜怒哀楽のコントロールが身についています。気持ちが安定しているので、一緒に回ってもストレスなく落ち着いてプレーができます。
ところが、短気な人や怒りん坊の人が同じ組にいると自律神経は影響を受けやすくなります。人は怒ると瞬間的に交感神経が高まり、感情も自律神経も制御不能になります。筋肉や血管はすべて収縮して手もスムーズに動かなくなってしまいます。
例えば、思いどおりに打てなかったときやミスショットをしたとき、「下手くそ!」などと吐き捨てる人がいます。言葉にすることで顕在化した自分への怒りはヒートアップし、プレーも雑になります。手は感覚を失ってショートパットすら入らなくなるでしょう。
一緒に回っている側も決していい気持ちはしません。少なくともピリピリした雰囲気は伝染して交感神経が優位になります。気の優しい人なら「悪いことしたかな?」と、責任を感じて落ち着かなくなってしまうかもしれません。
怒りん坊な人と一緒になってしまった場合は、気にしないのが一番です。放っておくしかありません。スイングを見ない、素振りをするなど、心の中で距離を取ることが自分の自律神経を安定させるコツです。(文・小林弘幸 構成・野上雅子)
●小林弘幸/順天堂大学医学部教授 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1960年生まれ、埼玉県出身。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手やアーティストのパフォーマンス向上指導にかかわる。自律神経のバランスを意識的にコントロールすることにより心身の潜在能力を最大限発揮できることを提案し、テレビ番組等で解説している。著書も多数あり、2022年12月『ゴルフが上達する自律神経72の整え方』(法研)を刊行。
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