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サウナ、グランピング、星空キャンプ ゴルフ場の新サービスは、採算度外視という現実

野外でのバーベキューは解放感もあり実施するゴルフ場もある(撮影:GettyImages)

茨城県の筑波国際CCで、サウナ付きのグランピング施設をコース内に作り、ゴルフ&宿泊というパッケージではなく、ホール貸し切りで遊んで、バーベキューや専用サウナで癒やされて、夜空が見えるグランピング施設で眠るという新しいゴルフコースの使い方の提案をしていることが話題になっています。

ゴルフ場には広大な空間があり、無限の楽しみ方があると何十年も前から言われていました。しかし、コースをゴルフのプレー以外で使うことへのタブー感もあり、空想だけで終わっていたのです。千葉県のマクレガーCCでは、昨年ゴルフコース内にテントを張ってキャンプをしようというイベントが開催されました。他にも、関東では数ホールをフェス会場にして、ゴルフと音楽を24時間楽しむというイベントも行われました。

もっと手軽なモノとして、貸し切りのコンペのときに早いスタートの人たちがプレー後の表彰式まで2時間以上も待つという問題に対応するために、臨時でネイルサロン、マッサージ、1000円カット、ジムなどを呼び込んだり、カラオケスナックを作ったりすることが称賛されたこともありました。

多くのゴルフ場のクラブハウスには、コンペルームという個室が複数あり、それを有効使用することでゴルフへの付加価値を付けるという挑戦も次々に報告されています。トレーナーを配置してストレッチなどの指導や飛距離アップの筋トレを売りにしようとした試みもありましたし、特別な料理人を呼び、特定の組だけをVIPとしておもてなしするというサービスをやっているケースもあります。

年に数回だけレストランを閉鎖し、ランチはすべて屋外のバーベキューというイベントを開催するゴルフ場もありました。ゴルフ場スタッフの家族なども招待して、来場者以外もお祭りみたいに盛り上がっているというちょっと異質な空間ではあるものの、経験すると癖になる秘密のイベントだったようです。現在は支配人が替わり開催されなくなりましたが、復活して欲しいという声が多いそうです。
  
このようにゴルフ場が特別なサービスやイベントを行うと、冷ややかな目で「生き残りをかけて、ゴルフコースも大変だね」というように、馬鹿にしたようなことを言う人がいます。同じようなことを考える人が多いのですが、実は、それはほとんどの場合で間違いです。

ゴルフコースの新しい試みの多くは利益を無視しても、みんなの笑顔が見たい、ゴルファーが喜んでくれるなら、というようなロマンチックで粋な心意気で行われている場合がほとんどだからです。ビジネスとして考えれば、馬鹿にされてもしかたがないものですが、まさにプライスレスな感動だけのために頑張っているというのが実情なのです。

付加価値を付けてちゃんと利益が出せるか? ゴルフコース関係者とこの手の話をすると、悲しいかなほとんどのサービスは絵に描いた餅になってしまう。でも、大好きなゴルフと何らかのサービスが融合し、一石二鳥になったら楽しいし、お金だって惜しまないと思うゴルファーはたくさんいるはずです。

残念ながら、ゴルフに詳しくないイベント会社と組んだ結果、コースが損傷したり周辺の住民からクレームが来たり、明らかなスタッフ不足で機能しなかったり、新しい試みは大失敗だったという話も少なからず聞きます。

ゴルフコースはゴルフだけが純粋にできれば良い。そういうコースもあるべきです。その上で、そこにしかない特別なサービスが魅力のコースも同時にあって良いのです。通常、ゴルフをしない人がゴルフ場に行くことはほぼ皆無ですが、“ゴルフをしない人たちが集うゴルフ場”は、これからの時代のキーワードになる可能性がある。

ウクライナ侵攻、値上げラッシュ、賃金低下、増税。一歩先は真っ暗闇かもしれない世知辛い世の中です。しかし、こういう時だからこそ、ゴルフコースのスタッフの心意気にゴルファーが応えることで生まれる、キラキラした何にも代えがたい時間に価値があるのだと信じたい。そして多くのゴルファーが価値を感じれば、その新しいサービスは利益につながり継続していく可能性がある。

ゴルフコースでこんなことができたらいいのにな、と思うサービスやイベントはありますか? あなたが妄想したことは、ひょっとして他の誰かも同じように妄想している可能性があります。ゴルフ場に、ゴルフじゃない何かをしに行くようになったり、ゴルフ場がゴルファーだけの場所でなくなる日は、思いの外早く訪れるかもしれません。

(取材/文・篠原嗣典)

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