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新しいものを求めながら自己確立する 2年連続年間女王の山下美夢有さんの強さ【原田香里の未来ゴルフ会議】

2023シーズンの年間女王に輝いた山下美夢有(撮影:福田文平)

ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。9か月に及ぶ女子ツアーのシーズンが終わりました。結果はご存じの通り、山下美夢有さんが最終戦JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ連覇で、2年連続年間女王も獲得しました。すごいというほかはありません。

今年は、6月までに4勝した後パタリと勝てなくなった山下さんですが、メジャー参戦などで海外に行ったのをきっかけに、自分のゴルフを色々といじったとのこと。海外でたくさんの実力のある選手のプレーを見るうちに「もっとこうしたほうがいいんじゃないか」と、向上心を持つのは当たり前のことです。ただ、そこで自分を見失い、混乱してしまうケースは、これまで多くのプレーヤーたちにも見られました。
 
それまで自分が作り上げてきたゴルフを変えるというのはとても大変なことです。スイングであれ、プレースタイルであれ、苦労して変えても、それが自分に合うかどうかはわかりません。やってみて違った、と思っても、今度はもとに戻れなくなる。そんな例は、枚挙にいとまがありません。
 
山下さんのすごいところは、しばらく試行錯誤をしてみて、最終的にはもとの自分に戻せたことです。戻す、というよりも、一旦立ち止まって考えて、やってきたことを整理し、構築し直す、と言ったほうがいいかもしれません。自信を取り戻して、自分のプレーができるようになったのは「3~4試合前から」と、優勝インタビューで言っていたようですが、そんなに早く自分を取り戻せたのは、もともとしっかりと自分を持っていたからでしょう。
 
コーチであるお父様と一丸となってできたのも大きいのかもしれません。いったん変えてしまったら、どんなにうまくいかなくても後戻りできない、というひとのほうが多いのですから…。本当に思い切りがよく、躊躇なくクラブを振るというところに、山下さんの強さがあります。一方で、いつもいつも強い球を打つというわけではなく、緩急をつけたプレーができて、小技も上手。優勝争いで一番大事なバックナインで、しっかりとバーディを取って来ます。
 
今回も、最終日の途中で高橋彩華さんに首位の座を譲った場面もありました。一時は混戦模様になりかけたのですが、ここから山下さんが巻き返して相手にプレッシャーを与えます。終わってみれば3打差圧勝。これは、守りに入らず最後まで攻め続けることができるからこそだと思います。初日、2日目と申ジエさんと一緒にプレーして勉強になったことをしきりに口にしていたとも聞いています。世界No.1になったこともあり、全英女子オープン2勝も挙げているジエさんの経験値を、貪欲に吸収したのでしょう。
 
今年の山下さんのように、スイングも、ゴルフ人生も、色々なことにチャレンジするのは素晴らしいことです。山下さんは今でもとても強いゴルフをしています。けれども、より高みを目指すことには終わりがありません。日本だけでなく、世界中で色々なものを吸収しながら、さらに大きく成長して欲しいと思います。
 
山下さん、2年連続の年間女王おめでとうございます。そして選手のみなさん、1年間大変お疲れ様でした。
 
■原田香里(はらだ・かおり)
1966年10月27日生まれ、山口県出身。名門・日大ゴルフ部にで腕を磨き1989年のプロテストに合格。92年の「ミズノオープンレディスゴルフトーナメント」でツアー初優勝。93年には「日本女子プロゴルフ選手権大会」、「JLPGA明治乳業カップ年度最優秀女子プロ決定戦」勝利で公式戦2冠を達成。通算7勝。その後は日本女子プロゴルフ協会の運営に尽力し21年3月まで理事を務めた。

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