• HOME
  • 記事
  • ゴルフ
  • かたや20アンダー以上、かたやオーバーパー プロの試合は、なぜあんなに優勝スコアが違うのか?

かたや20アンダー以上、かたやオーバーパー プロの試合は、なぜあんなに優勝スコアが違うのか?

最終日は雨となったワールドレディスチャンピオンシップだが、スティンプ13・1/2 コンパクション24.5と、好コンディションを保った。写真は1オーバーで優勝した吉田優利(撮影:上山敬太)

活況が続く国内女子ツアーでは、毎週のように激しい戦いが繰り広げられているが、試合によっては20アンダー以上のスコアの大会もあれば、1桁アンダー、場合によってはイーブンパー近辺が優勝スコアとなるケースもある。いずれも見るスポーツとして魅力的なことに変わりはないが、そもそもなぜそんなにスコアがでるのか(でないのか)、その理由は気になるところ。

国内女子ツアーを例にとると、「ミネベアミツミ レディス 北海道新聞カップ」までの19試合で、最多アンダーは「宮里藍 サントリーレディス」の23アンダー(勝者・岩井千怜)で、最少は「ワールドレディスチャンピオンシップ」の1オーバー(勝者・吉田優利)。
 
サントリーレディス以外でも、二桁アンダーは12試合、二桁に1打足りない9アンダーが3試合、一桁アンダーは2試合のみとなっている。もちろんその週、その日の気象条件(気温、風速)、ラフの長さ、主催者リクエスト等によってもスコアは左右されるが、最も大きく影響するのがグリーンコンディション(速さ、硬さ)になるという。
 
女子ツアーでコースセッティングを担当する佐伯三貴に、スコアとグリーンコンディションの関係について話を聞いた。
 
「天候、猛暑の問題だったり、さまざまな要因が重なってリクエスト通りにできないのが現状です。毎年開催コースが同じで、しかも27とか36ホールあるゴルフ場だと、通常営業のお客さんを分散できるので、コースセッティング、特にグリーンの硬さ、スピードは理想に近づけやすいですね」。
 
また、メジャー大会がロースコアになる理由として挙げたのが、「メジャーは先々まで開催場所が決まっているので、大会のかなり前から準備をしていることが大きいです。だから試合の時にグリーンをベストな状態にもっていける。通常の大会も年間を通して決まっているとはいえ、一般営業を考慮しながらのセッティングになってくるので、よりハードな設定、転がりが速くてボールが止まらない、ということはなかなかできないです」と佐伯。
 
なるほど。メジャー大会など、準備期間がある程度長くとれる試合では、万全の管理ができる。おのずとグリーンスピードが速く、コンパクションも硬くできるため優勝スコアも低くなる。そこまで準備に時間をかけられない試合では、硬くてボールが止まりにくいグリーンに仕上げることはできないから、結果的にハイスコアが出やすくなる、というのが理由だ。
 
JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)では、試合ごとに、各日のグリーンコンディションが発表されているので紹介すると、最もロースコアでの優勝(1オーバー)となったワールドレディスでは、スティンプメーターで13.1/2フィート コンパクション24.5ミリ。逆にハイスコアでの優勝(23アンダー)は、宮里藍 サントリーレディスで、スティンプ12.1/2 コンパクション23という数値。
 
また、最もグリーンの転がりが遅かったのがダイキンオーキッドとアクサレディスのそれぞれ初日で、10フィート。最もコンパクションが柔らかかったのは、ダイキンとリシャール・ミル ヨネックスの初日で22.5という数値が残っている。
 
一見すると、わずかな数値の差しかないように感じるが、1フィート違うということは、約30センチも転がる距離が変わるわけで、例えば毎試合11フィートのグリーンで試合をしていたところ、次の試合で13フィートになると距離感を合わせるには、それなりの調整が必要になることは想像に難くない。
 
ここであまり聞きなれないコンパクションについて、日本ゴルフツアー機構(JGTO)の田島創志競技担当理事に話を聞くと、「日本の場合は、土の中の硬さを計る方式のため、例えばコンパクションが同じ25でも、ボールが止まる25と、止まらない25があったりします。あくまでも目安として考えていますが、これは、普通のアマチュアゴルファーが長めのクラブ(例えばUTなど)でディスタンス系のボールを打った場合、球がグリーンに止まらない可能性のある硬さです」という。 ※一般営業ではコンパクション20~22程度。
 
コンパクション25以上という状況を経験することはまずないが、これは、アベレージゴルファーが打つとグリーン上にピッチマークもできない硬さらしい。ということは、グリーン面に対してより大きな角度で落下させないとボールが止まらないことを意味する。セカンドショットでスピンの効いた高い球を打つか、ティショットを飛ばしてより短い番手でショットするかしかない。
 
長い番手のクラブでは落下角度が浅くなりやすく、たとえプロでもパワーがないと、硬いグリーン面に弾かれてボールを止められない。その結果スコアが伸びない展開となる。逆にグリーンが柔らかければ、バーディ量産、ハイスコアで優勝という展開になりやすいというわけだ。

関連記事