清水和也はなぜ、日本に復帰したのか?スペインでの大活躍からFリーグへの復帰……アジアカップ優勝を成し遂げた怒涛の半年間
後輩選手に伝えたいスペイン移籍のイロハ
──今後もスペインに移籍する選手がたくさん出てきてほしいですし、出てくると思いますが、清水選手が経験したからこそ伝えられることとか、難しさを教えてください。
一つは、言葉の壁は想像よりかなり難しく、シビアに考えたほうがいいということですね。エルポソBでは、スペイン語を話せないマイナスはありましたが結果を残したことでカバーできて、コミュニケーションが生まれました。ただ、カテゴリーが上がるにつれて、話せないなら使わないという監督もいます。言葉は重要視したほうがいいですね。
──どうすれば早く習得できますか?
ひたすらしゃべるしかないと思います。僕はまず、英語を話せる子を見つけて、わからなかったら英語で聞いて、スペイン語で教えてもらい、少しずつ単語を覚えました。質問する時の文法は決まっているのでそれを覚えて、あとは単語を当てはめていく。それと、週に2、3回はオンラインでスペイン語の授業を受けて、半年くらいである程度は言っていることを理解できるようになり、拙いスペイン語で味方に要求できるようになりました。
──そのほかに何か感じたことはありますか?
僕はスペイン2部からのスタートでした。最初から1部に行きたかったですが、簡単ではありませんでした。でも、振り返ると2部を経験できてよかった。なぜなら、1部で長年活躍してきた選手が2部にいたり、毎年しぶとく残留し続けているチームがいたり、1部から落ちてきたチームと戦えたり、さまざまな選手やチーム、シチュエーションで戦えたことがプラスになったからです。2部で結果を出すことで1部のチームに目をつけてもらえるので、2部で1年間プレーできたことは自分にとってはすごくよかったと思います。
──そもそも、スペインに挑戦するためにはどうしたらいいですか?
スペインでプレーした歴代の選手のほとんどが代理人と契約しています。日本だと代理人文化があまりないですよね。海外移籍の取りまとめや生活のアテンドをしてくれるので、スペインでプレーしたいなら、まずは代理人を見つけることが大事だと思います。
──清水選手の場合は、代理人をどうやって見つけましたか?
僕は須賀さん経由ですね。Fリーグの各クラブも外国人選手を獲得した経験があれば、代理人の連絡先を知っているはずです。僕も当時、須賀さんに自分の思いを伝えた際に紹介してもらいました。それが、スペインでは大手の「プロネオスポーツ」です。智貴(吉川)くん、フィウーザ、アルトゥール、名古屋オーシャンズの歴代の監督はだいたいプロネオ所属ですね。
──プロネオは有名ですよね。
日本人の方も働いているので、面談して、自分の夢なども話をして、代理人契約を結んでもらいました。当然、代理人もビジネスですから、自分たちのプラスになるかどうか、それに熱量を見ています。日本での結果だけではなく、人間性も一緒に見られている印象です。
清水が痛感したスペインと日本の違いとは?
──4年ぶりにFリーグに復帰してここまでどう感じていますか?
よりスピーディーな展開が多くなった印象です。選手のアジリティ能力が高いので、適応に時間が必要だと感じています。スペインでやっていた部分のコネクションにもズレが出てきてしまっているので、アジャストしていかないといけないとすごく思っています。
──味方とのイメージの共有も難しさがありますか?
技術的なエラーは自分のミスですけど、今は意図的なエラー、意味があるエラーが多いですね。例えば、飛ばしのパスでもDFがかなりへこんでいる(自陣側にいる)のに、サポートを後ろに取る選手がいて、自分はもっとゴールに近い位置に出したいけど、そこに出すとパスミスになる。コルドバでもエゴイストというか、主張が強い選手たちとプレーしてきました。「こういう時はここにパスをくれ!」という要求が常にあります。だからフウガでは、変な意味で仲間に気を使わせてしまっているなと、最初は感じました。
──チームメイトもリスペクトがあるからこそ、清水選手に合わせてしまう。
そうです。あとはセットのメンバーが若いですし、プレー経験が多くはない分、疑問を持ちながらやっていることがあり、うまくいかない時にペースが乱れる。そこの擦り合わせと、困ったら前に当てればなんとかしてくれると思ってもらえるプレーが、次の課題です。
──スペインにいた時よりも体重を落としていると聞きましたが。
日本はアグレッシブで、無理にでも前カットしようとするフィクソが多い印象です。その分、入れ替われる可能性も感じていますが、スペインより試合展開がスピーディーなので、もう少し機敏に動けるように体重を落とさないと、日本では対応できないなと感じています。
──スペインはどっしり構えてキープするけど、日本はスピードに対処する必要がある。
そうです。日本には重量級のフィクソがいないですが、スペインには80kg以上のフィクソがいます。僕は今82kgなのでスペインでは対等でしたが、日本では70kgくらいのフィクソが前を取ってくるのであれば、それに対応する必要があります。
──スペインのこういうところが日本にもあったらいいなということはありますか?
そうですね……圧倒的に試合数かな、と。例えば強豪のバルセロナなどは年間60試合をこなします。リーグでだいたい30試合、それにチャンピオンズリーグや国内カップ戦など。僕のいたコルドバでさえ、年間40数試合はしています。現在の日本だと、多くても年間30試合くらいですよね。カップ戦の多くが、4回勝てば優勝とか。コルドバというスペインの中堅クラブよりも試合ができていないので、圧倒的に試合数が足りないとは思います。
──なるほど。
スペインに4シーズンいましたが、正直、練習でうまくなった感覚はありません。公式戦の「やるか、やられるか」のスリリングな戦いや、「何ができて、何ができなかった」という経験値はやはり試合でしか得られないですし、試合が自分を成長させてくれました。なので、日本でも試合数が増えてほしいなという思いはあります。
──他に、スペインで感じたことはあります?
文化の違いですかね。スペインで僕は、めちゃくちゃ暇でした(笑)。練習以外の時間がすごくある。その分いろいろと考えることができるし、フットサルに集中できる。フットサルに対して、選手もそうですし、お客さんもそうですけど、1試合に対してすごく楽しみにしているんです。バルに行けば、地元のファンに、「来週勝たなかったらどうしてくれるんだ」と言われるくらい、彼らの生活の一部になっています。日本は恵まれた環境で娯楽も多い分、スポーツやフットサルを見る層が減ってきてしまっています。答えは見つかっていませんが、スペインのようにフットサルが生活の一部になるようにしていきたいですよね。
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