【ブラジル戦翌日WEB取材】5年間の集大成に「誇らしい」とブルーノ監督。日本代表は、W杯で主役になれたのか
今大会の優勝候補筆頭であり、グループリーグから圧倒的な強さを示してきた最強チームから先制点を挙げ、第1ピリオドを1-1で折り返し、逆転を許した後も、最後まで肉薄した。その戦いは、2016年10月にブルーノ・ガルシア監督が就任してから、目指してきたそのものに映った。
大会を通して、スペインやパラグアイといった強国とも接戦を演じた。「史上初のベスト8」には届かなかった。ブルーノ・ジャパンの戦いぶりを「素晴らしかった」と手放しで喜んでいいのだろうか。
ブルーノが目指してきた、あるいはたどってきた道に、疑いようはない。彼の仕事は、常に的確で真摯だった。ただしその結果、スペインやブラジルを倒すことはできず、逆に「日本の現在地」を痛感させられた、と考えることもできる。ブルーノ監督は大会前からしきりと「世界の主役たる」という表現を使ってきた。主役。なにをもって、主役を目指したのか。
ブルーノ・ジャパンは、W杯で主役になれたのか──。
ブラジル戦の翌日、オンライン会見でブルーノ監督は、いつものように整然と言葉を並べた。
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指導者の海外進出と育成年代の取り組みが重要
──5年前に始まったブルーノ・ガルシア監督と日本代表の戦いが、ブラジル戦でひとつの区切りを迎えました。監督は今、どんなお気持ちですか?
率直に、敗戦の直後なので、悔しさや残念な思いは大きくあります。特に、ブラジルといった強国にあと一歩のところまで迫ったあとですから。5年間を振り返ると、誇らしい気持ちが全体的には大きいです。前回のW杯出場を逃していた日本を、再びこの舞台に立たせる目標を果たしただけではなく、スペインやブラジルといった強国に、これだけの戦いができると示すまでに向上しました。新世代といっていい年代の台頭があるなかでこの状況をつくれたことに、誇らしい気持ちがあります。
──ブラジルやスペインに勝てるかもしれないという可能性を示しました。一方で、100%をぶつけたからこそ、届かないことも痛感しました。監督は日本の現在地をどうとらえていますか?
今回の戦いを通して、道が見え、正しい道を進んでいると感じています。スペインやブラジルが強豪国であるというのは、それらの国が獲得してきたタイトル、スペインの欧州王者であったり、ブラジルのW杯で5回の優勝であったりという、成績だけのことではありません。整備されたリーグがあり、そこで厳しい競争環境があり、活躍した選手が他国へ行くことなどがあり、いろんな経験がミックスされ、細かいことの積み重ねで、それぞれの国に現在の状況がもたらされています。
その意味でも、日本はまだまだ積み重ねていかないといけない状況です。今回やってきたことで、大きく近づき、進化・前進し、差を詰められたと思っています。積み重ねた先に、いつか追いつくことになる。スペインやブラジルは「勝つことが義務づけられている国」。その差を縮める成果を挙げられたことは、今やっていることを厚くし、継続していくことが大事だと示しています。そういう現在地です。
──ピッチで戦った選手、自分の武器を発揮できなかった選手、出場できなかった選手、さまざまいますが、日本がこの先、ブラジルやスペインと真の意味で対等に戦うために必要なレベルアップの道はなんでしょう。
端的に、要求レベルの高いゲーム。厳しい強度のゲームを積むことが必要です。それは代表チームだけではなく、選手たちは、少しずつ積み重ね、所属クラブで体験していく。そこから代表チームに来て、同様に厳しいゲームを体験すること。総合的に必要だと思います。代表チームだけではできません。普段のクラブで、ゲームコントロールや経験を積み重ねるが必要があります。
──ブルーノ監督が今大会に向けて掲げた目標は「世界の主役たる戦いを披露する」ことでした。日本は、本当に素晴らしい戦いを見せてくれましたが、主役となれたのでしょうか。
「主役」という言葉の捉え方だと思います。文脈から紐解くと、前回W杯に出場できなかったところから、スペインやパラグアイという超強豪国のグループに入りました。そのなかで見せたゲームにおいて、ピッチで本当に相手が苦しみ、負けるかもしれないという緊張感を発し、こちらもいけるかもしれないと感じるといった、ピッチレベルで感じる空気・雰囲気に満ちていました。追い詰めることができた。ベスト8には進めませんでしたが、前回出場していないチームにこんなゲームができた、強豪を追い詰めることができた、そのシナリオ自体、我々としての主役ぶりは、出せていました。
当然、次の段階は要求を上げる必要があり、「今度はもっと」とならざるを得ないですが、繰り返しになりますが、前回出場していないところからの出場を達成したあとに、こうしたゲームができた感触は、現時点で主役となるに値する出場経験、W杯だったのではないかと思います。
──以前、「W杯はその国のフットサルの歩みや現状を図る場所である」と話していました。いい試合をした一方、セミプロの限界、名古屋オーシャンズのようなチームがもっと出てこないと強国に敵わないのではないかとも感じました。監督は、今の環境であってもそこに立ち向かえるのかという点で、どう感じているかをお聞かせください。
それは今後の強化のカギになると思います。まさにスペインやブラジルのような強豪国は、100%プロの環境で取り組んでいる選手たちの集まりですから、現状はそこに対抗していく構図です。その環境はすぐにできるものではなく、名古屋のようなチームがいきなり現れるわけでもありません。そういうチームが増えたリーグになることも大切ですが、他のアイデアも考えられます。
その一つは、指導者。選手に海外経験を積ませるべきだという考えと同じように、指導者も競争が激しく、要求レベルの高い環境で稼働する経験をすること。指導者が海外進出しながら育成されていくことも必要だと思います。それこそ、スペインやブラジルといった国は、国内の環境だけではなく、他国のリーグに指導者を派遣して、そこで磨かれたものを自国にフィードバックする循環があります。
もう一つは、エリートだけではなく、育成年代の取り組み。この5年間で、タレント豊かな選手がいることを見てきました。そういう選手が早い段階から安心して、専門的に競技に取り組んでいく環境を整備していく必要があります。それらを、戦略的なプランに織り込んで、同時に進めていく。そうしたことで状況が変わっていくと思います。日本はフットサル界において世界のトップに入れますし、入るべきだと確信しています。その力のある国が、そこを実現していかないのは嘘だと思っていますから、確実に目指すべきだと思っています。
──世界の強豪は、日本と同じように、国を代表する選手はもっと注目されたりする。日本ではまだ注目度が低い現実もある。5年間において、もっとこうしたサポートが必要であるとか、こうしたサポートがあればさらに前進できると感じることはありますか?
来日した当初からお伝えしてきましたし、思っていたことですが、関わるあらゆる分野の人を取り込み、巻き込んだ総合的な戦略プランが必要だと思います。代表チームとしてはその象徴、拡声器として、声を大きくし、世に示す役割です。自分はスペインで育ち、働いてきたなかで、その状況をつぶさに見てきています。社会における競技の位置付けの重要性は、非常によくわかります。日本とスペインの状況の違いはありますが、リーグのあり方、クラブのあり方、取り巻くメディア、スポンサーなど、いろんな人たちの関わりが大きいと思います。代表チームは、その環境でつくられるチーム。やるべきことは一つではなく、総合的な戦略プランを進めること。正しい道は見えていますから、これをもっと促進していくということだと思います。
──ここまで長い準備をし、戦ってきた選手たちにどんな声をかけたのか。もしくはかけるのか。
みんながやってきたこと、取り組んできたことは正しい、それでここまできたんじゃないか。この先どんな方向性に進んでいけばもっとよくなるか、よくなるためにはこの道に進んでいくんだだ、という勇気づけをしたいと思っています。
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