紀平梨花,フィギュアスケート

銀盤で輝くのは誰だ?ISUフィギュアスケートグランプリ開幕、注目日本人選手を紹介

写真:紀平梨花(森田直樹/アフロスポーツ)

ウィンターシーズンの幕開けを告げる「ISU フィギュアスケートグランプリシリーズ2022」が10月21日に開幕した。毎年フィギュアシーズンの10月から11月にかけて開催され、12月に行われるファイナルへの出場権をかけて争う国際スケート連盟(ISU)承認の大会である。今回はこの大会の歴史や歴代優勝者、出場資格や今大会の注目選手などを紹介し、GPシリーズについて振り返っていきたい。(文・井本佳孝)

時代を築いた羽生結弦と浅田真央

羽生結弦,フィギュアスケート
写真:羽生結弦(青木紘二/アフロスポーツ)

GPシリーズが初開催されたのが1995年(1995-96シーズン)のこと。元々ドイツ、カナダ、アメリカ、フランス、日本でそれぞれ国際競技会の位置付けで大会が行われていたものがシリーズ化され「ISUチャンピオンズシリーズ」として実施。1996-97年シーズンにはロシア大会が追加され、2003-04シーズンにはドイツに替わり中国の大会がシリーズに加わるなど、開催国は変化が加えられている。2022-23シーズンは、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、日本、フィンランドで開催し、この6大会の上位選手が「ISUグランプリファイナル」へと進み、シリーズの優勝者が決められる。

出場資格はシーズンごとに発表されているが、ISUが発表する世界ランキングやシーズンベストスコアの上位選手、前年度の世界選手権の上位者などに参加資格が与えられる。また、各選手・ペアは最大で2大会までエントリー可能で、今季の日本勢では男子シングルスの宇野昌磨は10月28日から行われる第2戦のカナダ大会と、11月18日から行われる第5戦の日本大会にエントリーしている。自身がエントリーした2大会での上位進出と、12月8日からイタリアにて開かれる、GPファイナル出場権をかけた戦いに挑むことになる。

GPファイナルの最多優勝者は、男子シングルスでは7月にプロスケーター転向を表明した羽生結弦と、2006年トリノ五輪の金メダリストである“皇帝”ことエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)の2人。ともに4度大会を度しており、羽生は2013-14シーズンから4連覇という偉業を成し遂げた。女子シングルスでは1990年代後半から2000年代に活躍したイリーナ・スルツカヤ(ロシア)と、2010年バンクーバー五輪銀メダルの浅田真央のが最多の4回。浅田はバンクーバー五輪金のキム・ヨナ(韓国)や、2012年世界選手権金のカロリーナ・コストナー(イタリア)といったライバルたちがいた中で、2005-06、2008-09、2012-13、2013-14シーズンを制し、一つの時代を築いた。

復活が期待される紀平梨花

紀平梨花,フィギュアスケート
写真:紀平梨花(森田直樹/アフロスポーツ)

2022年の北京五輪を経て、イタリアのミラノ・コルティナダンペッツォで共同開催される2026年の五輪へ向けた新たなスタートと位置付けられる今季のGPシリーズだが、男子シングルスで期待されるのは宇野だろう。羽生がプロに転向し、北京五輪を制しGPファイナルも3連覇中だったネイサン・チェン(アメリカ)も不参加。さらに、北京五輪銀の鍵山優真が左脚のケガが完治せず欠場を発表したなかで、2度の五輪も経験してきた24歳は昨季世界選手権を初めて制するなど充実の時を迎えており、GPファイナルでは2015-16、2016-17シーズンの2位を上回り初優勝に注目が集まる。

女子シングルスでは、これまで圧倒的強さを誇ってきたロシア勢がウクライナ侵攻の影響で国際大会から締め出しを受けている。そんななか、近年安定した成績を残してきた坂本花織には日本のエースとして期待がかかる。昨季自身初の世界選手権を制し、北京五輪でも日本勢最高の銅獲得と飛躍を遂げた22歳は、第1戦のアメリカ大会に出場し、海外開催では自身初優勝と幸先の良いスタートを切った。第5戦の日本大会にもエントリーする坂本は、札幌で開催されるNHK杯でも2連覇中と相性のよさを誇っており、振付師を変更して心機一転挑んでいる新たなシーズンで、GPファイナル進出と初制覇に向けて進化した姿を見せたい。

そして、今回のGPシリーズでの最大の注目は、復活が期待される紀平梨花である。シニアデビューした2018-19シーズンにいきなりGPファイナルを制するなど、10代でスターダムを駆け上がった彼女だが、右足首の疲労骨折の影響で昨シーズンを棒に振ることになり、自身初出場と表彰台が期待された北京五輪への出場も逃した。7月に20歳を迎えた紀平は9月の中部選手権でおよそ1年5カ月ぶりに公式戦復帰を果たし、今回のGPシリーズにも第2戦のカナダ大会と第6戦のフィンランド大会に名を連ねている。ケガが完全に癒えれば才能に疑いはない選手だけに、2年ぶりに本格参戦する世界の舞台で復調した姿を期待したい。


(次のページ「“りくりゅう”と“かなだい”も参戦」へ続く)

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