八村塁はジョーダンファミリー!?!?ジョーダンとナイキの関係性とは?【後編】

前回の記事ではマイケル・ジョーダンのシグネチャーモデルであり現在のナンバリングでいえば「40」までそのモデルが販売されている「ジョーダンシリーズ」について、人気モデルや人気の理由などを紹介した。

今回の記事では、ジョーダンがジョーダンブランドを立ち上げた後のナイキとジョーダンの関係性や「ジョーダンファミリー」についても紹介していきたい。

前回記事:
ジョーダンの靴を買う前に読んで欲しい!ジョーダンシリーズの歴史【前編】

ジョーダンとナイキの現在の関係性とは?

そもそもだが、マイケル・ジョーダンが1984年に「ナイキ」と契約したことから物語は始まっている。非常に簡潔に言うとマイケル・ジョーダンの活躍で飛躍的に人気を伸ばしたことによって、1997年に「ジョーダンブランド」がナイキ傘下のブランドとして独立し、現在もその関係は続いている。
親会社がナイキで、子会社がジョーダンだが、ざっくりとブランドを分けるならば以下の通りである。

NIKE 多くの人にバスケットボールをプレーしてもらうためのラインナップ
Jordan Brand 主にマイケル・ジョーダンの伝統とプレミアム感を感じられるラインナップ

当然だが上下関係などはない。それぞれのブランドの中でコンセプトが違うだけである。
ナイキはあくまで多くの人に、どんな人でもバスケットをプレーしてもらうべく商品展開やアイコンとなる選手をアサインしてシグネチャーを作る。
ジョーダンは、完全に競技向けのシグネチャーを軸としつつストリートカルチャーも表現した商品展開を行う。
ナイキは「広く浅く」、ジョーダンは「深く狭く」といったところだろうか。

ちなみに1997年にジョーダンは独立したが、現在のように明らかにブランドコンセプトを分けて、ナイキとジョーダンで違いを出すようになったのは、2003年のレブロン・ジェームズとカーメロ・アンソニーの2人の存在が大きい。

ジョーダンとナイキのNBAのシグネチャーモデル

2003年のNBAドラフトはNBAの歴史上でも豊作と言われる年であり、レブロン・ジェームズが目玉だった。また、カーメロ・アンソニーという後のレジェンドもこの年に全体3位でドラフトされているが、この2人はルーキーイヤーからライバルとして、どちらがNBAの頂点を取るかがしばしば議論されていた。

当時レブロンは18歳の高卒・カーメロは19歳で大学1年。カーメロはシラキュース大学を1年生ながらエースとして牽引しNCAAで優勝を勝ち取ったスーパースターだった。人気も実力もトップクラスである一方で、レブロンは高校時代から「次世代のマイケル・ジョーダン」として幅広く世界に知れ渡るような存在であった。

結果的に「次世代のスーパースター」を早めに囲いたかったナイキは、即レブロンと契約を固めた。競技の王道を表現し、看板スターとしてナイキブランドを高めてくれると考えたからだ。
一方ジョーダンは妥協でカーメロと契約したわけではない。そもそもカーメロはファッション好きとしても有名であり、ストリートカルチャーを継承するには非常にぴったりの存在であった。加えてジョーダンもカーメロも「ドラフト全体3位」という共通点があったことでもジョーダンはカーメロを次世代のジャンプマンとして選出。
このようにしてナイキグループ内で食い合わないように議論が行われて棲み分けが行われたのであった。

▼ナイキとジョーダンのシグネチャー一覧

【NIKE】

シリーズ名 選手名
KOBE コービー・ブライアント
LeBron レブロン・ジェームズ
FREAK ヤニス・アデトクンボ
KD ケビン・デュラント
BOOK デビン・ブッカー
JA ジャ・モラント
Sabrina サブリナ・イオネスク(WNBA)
A’ONE エイジャ・ウィルソン(WNBA)

【JORDAN】

シリーズ名 選手名
AIR JORDAN マイケル・ジョーダン
Why Not? ラッセル・ウエストブルック
ZION ザイオン・ウィリアムソン
LUKA ルカ・ドンチッチ
TATUM ジェイソン・テイタム

 

ジョーダンファミリー

そもそもジョーダンには「ジョーダンファミリー」というコミュニティがある。
これはジョーダンブランドがNBA選手だけではなく、社会貢献活動やファン啓蒙活動などを行う人々を総称したものだ。
大きく分けると3つのカテゴリーで、「現役NBAシグネチャー選手」「ジョーダン所属契約選手」「アンバサダー」である。それぞれの一覧は以下の通り。

カテゴリー 主な人物・選手名
NBA現役シグネチャー選 ザイオン・ウィリアムソン、ルカ・ドンチッチ、ジェイソン・テイタム、ラッセル・ウエストブルック
その他ジョーダン所属選手 バム・アデバヨ、パオロ・バンケロ、クリス・ポール、ビクター・オラディポ、ブラッドリー・ビール、ジャバリ・パーカー、オット・ポーター・ジュニア、モリツ・ワグナー、トレイ・ヤング、八村塁
アンバサダー/コミュニティ枠 カーメロ・アンソニー、ビスマック・ビヨンボ、DJハレド、マヤ・ムーア、ジェイソン・テイタム(現役NBA選手)

シグネチャー契約の選手は、その人専用のモデルが毎年出る契約である。所属契約選手については、専用カラーやジョーダンの最新モデルが支給されるような契約だ。
一方、アンバサダーは元々NBA選手だった人物をはじめ、文化界から参画する人物などいずれにしても「ジョーダンブランドの物語や価値観を体現できる人」かつ「影響力を持つ人」だけが選ばれるものである。ジョーダンブランドは「Black Excellence(黒人文化の誇り)」「次世代の育成」「社会的メッセージ」を特に重視しており、「JORDAN BRAND WINGS」という恵まれない若者が教育やメンターシップを受けられるような取り組みを実施し、「BLACK COMMUNITY COMMITMENT」として黒人が反映できる世界を想像するための道を先導するとして、助成金受給機関の運営を行うなど、様々な社会的活動をしている。

全てのジョーダンファミリーにとって、ジョーダンファミリーでいること自体に非常に大きなステータスがあると感じている。「ただジョーダンと契約したい」「ジョーダンのバッシュが欲しい」だけではなく「ジョーダンファミリーに入り⚪︎⚪︎がしたい」と熱量を持っている人が多い。
最後に、「ジョーダンブランドの物語」とは、マイケル・ジョーダンという人間そのものの生き様が物語であるため、一言で言うのであれば「勝者のDNAとカルチャーを次世代へ受け継ぐもの」である。ヨーロッパからNBAに鳴物入りしたルカ・ドンチッチがジョーダンと契約したのは、「ジョーダンの遺伝子を継ぐヨーロッパの新ヒーローである」と考えられたからである。ドンチッチはその期待にも答え、ジョーダンを次の時代に繋いでいくと言うミッションもある。このように、それぞれがそれぞれの物語を持っているから「ジョーダンファミリー」として存在するのである。

【番外編】過去のジョーダンシリーズ

最後に、過去のジョーダンブランドのシグネチャーモデルについて一覧にしてまとめておく。ぜひどのような選手がジョーダンと契約していたのかも見てもらいたい。

 

契約年 シグネチャーモデル 選手名
2003 Melo 1.5〜 Melo 13 カーメロ・アンソニー
2006 CP3.I 〜 CP3.XII クリス・ポール
2009 Fly Wade 1 〜 3 ドウェイン・ウェイド