マブズのキッドHCがチームとしての“理想型”を語る。古巣レイカーズへのエールも「健康体を取り戻した時ジャッジすべき」<DUNKSHOOT>
3シーズン連続のプレーオフ進出を狙うダラス・マーベリックスが、年明け以降調子を上げている。
1月はウエスタン・カンファレンス2位タイの12勝4敗(勝率75.0%)、2月もウエスト4位の7勝3敗(勝率70.0%)で終え、現地時間3月3日(日本時間4日)終了時点で38勝25敗(勝率60.3%)のウエスト5位につけている。
このチームの中心はもちろん、先月末に23歳を迎えたばかりのルカ・ドンチッチだ。2月に平均34.7点、10.3リバウンド、8.8アシストと殊勲の働きを見せたオールスターガードの活躍とともに、チームも軌道に乗っている。
さらに、今季から指揮を執るジェイソン・キッドHC(ヘッドコーチ)の存在も見逃せない。トレード・デッドラインに元オールスターのクリスタプス・ポルジンギスをワシントン・ウィザーズに放出し、スペンサー・ディンウィディーとダービス・ベルターンスを加えた新布陣について、指揮官は見解を述べる。
「私は勝利する方法を探し出し、選手たちを成功というポジションへ導くコーチだ。2番目のスターがチームにいなくても、選手たちはそれぞれの役割をハイレベルにこなしていかなければならない。かつてそういうチームがチャンピオンシップを勝ち取ったのを見てきたはずだ」
キッドが語った“そういうチーム”とはおそらく、フランチャイズ史上初優勝を達成した2010−11シーズンのマブズだろう。このシーズン、マブズからオールスターに選ばれたのはダーク・ノビツキーのみだった。
だが大エースの周囲をキッド、ジェイソン・テリー、ショーン・マリオン、タイソン・チャンドラーといった好選手たちが脇を固め、リック・カーライルHC(現インディアナ・ペイサーズHC)の下でプレーオフを勝ち上がり、マイアミ・ヒートとのNBAファイナルを4勝2敗で制して頂点に立った。
そんなキッドは昨季までの2シーズンをロサンゼルス・レイカーズのアシスタントコーチとして過ごし、2020年にはコーチとしてもNBAチャンピオンに輝いた。3月1日のレイカーズ戦を前に、不振に苦しむ古巣とフランク・ヴォーゲルHCについてエールともとれる言葉を贈っている。
「フランクは素晴らしい。彼ならこのチームとともに切り抜けていくだろう。彼はリーグの中でも素晴らしいコーチだ。コーチ陣に(成績不振の)責任をなすりつけるのはこのリーグの一部になっている。だが選手たちも責任を負うべきだ。彼は(2年前に)LAでチャンピオンシップを勝ち取っている。だから彼なら大丈夫だと私は見ている」
マブズに敗れ、3日のクリッパーズ戦も落として4連敗となったレイカーズは、27勝35敗(勝率43.5%)でウエスト9位。6位のデンバー・ナゲッツ(36勝26敗/勝率58.1%)とは9.0ゲーム差まで広がり、プレーオフに進出するためにはプレーイン・トーナメント参戦が確実な様相となっている。
しかもレイカーズはレブロン・ジェームズとラッセル・ウエストブルックこそ健在ながら、アンソニー・デイビスが右足捻挫のため3月後半まで欠場見込みとなっており、シーズン終盤戦までベストメンバーで戦うことができない。キッドHCは同い年のヴォーゲルHCを思いやる。
「彼には世界でもベストなプレーヤーたちがいるが、健康体になる必要がある。それが全てだ。我々はダラスでそれを見てきた。COVID(新型コロナウイルス)もケガも抱えていた。あのチームが今一度、健康体を取り戻した時こそ彼ら(コーチ陣)の仕事ぶりをジャッジすべきだと思うね」
確かに、今季のレイカーズはレブロンも腹部を痛めて戦線離脱するなど、シーズンを通してケガに苦しめられてきた。デイビスが健康体を取り戻し万全の状態で臨めば、まだ浮上する可能性も残されている。
だが時間が止まることはなく、今後も試合は続いていく。ウエスト10位のニューオリンズ・ペリカンズ(26勝36敗/勝率41.9%)とは1.0ゲーム差、11位のポートランド・トレイルブレイザーズ(25勝37敗/勝率40.3%)とも2.0ゲーム差となっており、もしこのまま黒星が続けば、プレーイン参戦も危うくなってしまう。
キッドHCがヴォーゲルHCへのフェアなジャッジを望むのは当然ながら、レイカーズが厳しい状況に立たされているのは間違いない。
文●秋山裕之(フリーライター)
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