大物も特別扱いなしのソフトバンクは二遊間競争が熾烈に。新庄監督の日ハムは清宮に期待【全12球団春季キャンプの注目点/パ・リーグ編】
2月1日からいよいよ春季キャンプでは、2022年シーズン開幕へ向け、それぞれのチームで激しいポジション争いが展開される。セ・リーグ6球団で最も注目すべきポイントをそれぞれリストアップした。
■オリックス:二塁での若手開花が連覇のカギ
昨年は若手のブレイクで25年ぶりのリーグ優勝を手繰り寄せたが、開花が待たれる有望株はまだ残っている。とくに二塁は難病の潰瘍性大腸炎を患う安達了一が昨季の最多出場で、若手の定位置奪取が待たれるポジションだ。
20歳の太田椋は昨季、パワーの潜在能力こそ垣間見せたが一軍、二軍ともに打率1割台で、レギュラー獲りのためには確実性の向上が必須。同じく高卒4年目を迎える宜保翔は守備や走塁に定評がある一方、打撃面では太田以上に課題を抱えており、キャンプで成長の跡を見せたい。
もちろん、候補となるのはこの2人だけではない。新外国人のバレラはバッテリーを除いた7ポジションを守れる三振の少ない巧打者。フルスイングが持ち味のドラフト2位・野口智哉も一軍スタートで、多くの選手が定位置を狙う構図となりそうだ。リーグ連覇と日本一を狙うには、新たな戦力の第2波が必要不可欠になる。
■ロッテ:藤原、山口の台頭を“最大の補強”に
オフは大規模な補強はなし。2年連続2位からリーグ優勝を目指すには、若手の成長が不可欠だ。とくに打線は昨季リーグ最多の584得点を挙げたものの、高齢のレアードや右ヒザに故障を抱えるマーティン、2人の助っ人への依存度が大きく、次代の主砲候補の開花が待たれる。
とりわけ藤原恭大と山口航輝にかかる期待が大きそうだ。今季から背番号が1に変わる藤原は、昨年の7、8月に計24試合で打率.348、5本塁打と大爆発し、月間MVPを受賞するなどポテンシャルは折り紙付きだ。1年通して実績を残すための対応力を身に着け、本命不在のセンターの定位置を手にしたい。
パワーが自慢の山口は昨季、一軍1年目で9本塁打を放つも打率は.207。確実性向上がレギュラー獲得の条件となる。助っ人2人に加えて藤原と山口が打線の軸となれば、2005年以来のリーグ優勝の確率はさらに高まるはずだ。
■楽天:二塁は浅村一択に思えるが……
絶対的な存在のいない捕手や、西川遥輝の加入でより熾烈さを増した外野争いも注目だが、ここではあえて「二塁争い」を押したい。それこそ主砲の浅村栄斗がいるのに「なぜ?」と思われるだろうが、実は若手の黒川史陽が昨季ファームで48試合の出場ながら打率.319、OPS.806と活躍。しかもチーム最多の19長打を放ちながら三振率が9.9%と、20歳の年齢にそぐわぬ完成度を示しているからだ。
一方で浅村は、昨季は打率.269、18本塁打と精彩を欠いた。守備もそれほど高水準ではなく、一塁やDHへ移るのも選択肢に入ってくる。もちろん、浅村本人は「誰が出てこようと自分が(二塁で)出続ける」と、慣れ親しんだ定位置をあくまで渡さぬ構えだ。
一塁、DHの候補には鈴木大地や新助っ人のギッテンス、マルモレホスらもいる。二塁でハイレベルな争いが繰り広げられればその影響は他のポジションにも波及し、ひいてはチーム全体の戦力層向上につながる。その意味でも、スターと期待の若手がしのぎを削る二塁に注目したい。■ソフトバンク:大物助っ人すら特別扱いはなし! 熾烈な二遊間はサバイバル
藤本博史新監督が「レギュラー当確」としたのは、捕手の甲斐拓也にライトの柳田悠岐、レフトの栗原陵矢の3人のみ。特にキャンプでの「焦点」と明言したのは二遊間争いだ。メジャー通算109本塁打の大物助っ人ガルビスですら「特別扱いはしない」としている。
遊撃は昨季、レギュラーの今宮健太がOPS.538と打撃低迷。二塁は5年目の三森大貴が主に担ったが、定位置を固めたとは言い難い。怪我からの復活を期す周東佑京や、外野も守れるユーティリティの牧原大成とおなじみの顔ぶれは両方のポジションでレギュラー奪取を狙う。
とくに遊撃争いはなおさら熾烈だ。俊足と守備に定評のある25歳の子連れルーキー野村勇や、攻守で堅実さを見せる19歳の川原田純平がキャンプの一軍メンバーに大抜擢されている。藤本監督がキャンプのテーマを「競争」と位置づけている通り、熾烈な定位置争いが日本一奪回のカンフル剤となる可能性は高い。
■日本ハム:新庄監督招聘で機運は上向く。清宮は一塁で定位置をつかめるのか
新庄剛志新監督の招聘でチームの雰囲気自体は上向いたが、助っ人を積極補強しても、西川遥輝ら主力の放出で戦力的には未知数。再浮上には若手の成長が不可欠だが、なかでも期待が高いのがプロ5年目を迎える清宮幸太郎だ。
昨季は二軍で最多タイの19本塁打を放ちながらプロ入り後初めて一軍出場なし。キャンプは二軍にあたる「BOSS組」でのスタートで、定位置奪取のためには、かなりのアピールが求められる。とはいえ、チャンスは十分ある。
昨季、一塁で最く多く出場した高濱祐仁の成績は107試合で打率.262、8本塁打、OPS.695。メジャーで30本塁打以上打ったこともある新助っ人ヌニェスも正一塁手候補だが、こちらはコロナ禍で来日時期未定。キャンプ、オープン戦でしっかり結果を残せば、開幕戦のスターティングメンバーに清宮の名前があっても決して驚きではない。
新庄新監督からの直々の減量指令を見ても、ポテンシャルへの期待は高い。いきなり新型コロナ感染で出ばなをくじかれた恰好ではあるが、バットで“ビッグボス”以上の話題を作ることを目標にして、5年目のキャンプに臨みたい。
【動画】図抜けた身体能力を発揮! ソフトバンク新大物助っ人ガルビスの好守シーン■西武:若手のリードオフ争い
秋山翔吾がメジャーへ去った20年以降はリードオフが定まらず、打線の得点力がめっきり落ちている。昨季序盤はルーキーの若林楽人が1番に定着し、わずか44試合で20盗塁を決めて話題をさらったが、左膝前十字じん帯損傷の重傷。源田壮亮や外崎修汰に任せればある程度の計算は立つが、打線全体の向上にはさほどつながらない。
そもそも、山賊打線の1番に求められる役割はスピードよりも、森友哉や山川穂高、中村剛也らポイントゲッターにつなぐ“出塁能力”。その意味では、二軍で4割を超える出塁率を記録した鈴木将平に期待したい。ポジションも絶対的なレギュラーがいないセンターということで、一石二鳥になり得る。
また、一軍では壁にぶつかったものの、川越誠司も選球眼には定評がある。開幕に間に合うかどうかは微妙だが、もちろん若林も復活を狙っている。若手の先頭打者定着が“山賊打線”再生のカギを握るはずだ。
文●藤原彬
著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。
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