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オリックス・椋木は勝利の方程式へ、日本ハム・達とホークス・風間は二軍でじっくり――【ドラ1の目標課題/パ編】<SLUGGER>

高卒組の達(左上)と風間(左下)は二軍でまずはじっくり、即戦力右腕の椋木(右上)はブルペンの一角入りが期待され、隅田(右下)も早期ローテーション定着なるか。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)
いよいよ来週に迫ったプロ野球のキャンプイン。中でも毎年大きな注目を集めるのがドラフト1位で入団したルーキーたちだ。

しかし、同じ「ドラ1」という括りでも、高卒と大卒では1年目から求められるハードルは大きく異なり、同カテゴリーの選手でも完成度は大きな差がある。昨年を例にとっても、栗林良吏(広島)、伊藤大海(日本ハム)、佐藤輝明(阪神)、早川隆久(楽天)などはいきなり主力となったが、大卒組でも苦しんだ選手は少なくなかった。

そこで、今年のドラフト1位ルーキー12人の1年目の「目標」を、アマチュア時代のプレーぶりから考えてみたいと思う。彼らへの「期待」と「最低限」は一体どこにあるのか。今回はパ・リーグの6球団を取り上げる。

<オリックス>
●椋木蓮(投手/東北福祉大)
【一軍で40試合登板、15ホールド】

最速154キロを誇る昨年のドラフト大学生No.1右腕。短いイニングであればコンスタントに150キロを超え、打者の手元で鋭く変化するスライダー、カットボール、フォークなども高いレベルを誇る。さらに、東北福祉大で指揮を執る大塚光二監督(元西武)が制球に苦しんでいるところを見たことがないと語るほど、コントロールも安定している。

そんな椋木に期待されるのは、ずばり勝利の方程式入りだ。近年では17年に黒木優太が1年目に55試合に登板して25ホールドをマークしたが、実力的にはこれくらいの成績を残してもまったく不思議はない。大学時代での故障歴も考慮して、黒木の1年目よりも少し落とした数字をベンチマークとしたい。
<ロッテ>
●松川虎生(捕手/市立和歌山高)
【二軍で250打席、先発マスク50試合】

高校生のキャッチャーとしては球団史上初のドラフト1位入団となる松川だが、当然期待されるのは将来の正捕手である。ただ、高校の時点ではどちらかと言えば目立つのはバッティングで、守備に関しては地肩とフットワークの良さがあるものの、覚えなければいけないものはかなり多い印象を受ける。それでも、高卒の若手捕手が育成の谷川唯人だけというチーム事情は、松川にとって追い風なのは間違いないだろう。

数字的に参考にしたいのが昨年の内山壮真(ヤクルト)だ。星稜高からドラフト2位で入団した内山は1年目から二軍で278打席に立ち、打率.231、8本塁打をマークしている。チーム事情と松川の潜在能力を考えれば、これに近い数字は十分に狙えるはずだ。

<楽天>
●吉野創士(外野手/昌平高)
【二軍で200打席、5本塁打】

高校生野手としては15年のオコエ瑠偉以来の1位指名となった吉野。オコエは1年目からいきなり一軍で51試合に出場して22安打を放っているが、内野も外野も実績のある選手が多い現在のチーム事情を考えると、吉野は二軍で経験を積むと考えるのが現実的だ。

近年では黒川史陽が1年目に二軍で248打席に立ち、打率.297、6本塁打をマーク。高校時点の完成度を考えると、吉野はこの数字よりも少し低くハードルを設定するのが妥当ではないだろうか。上背こそあるもののまだ線が細く、新人合同自主トレでも腰の違和感を訴えているだけに、まずはしっかり身体を作り、梅雨明けくらいから二軍のレギュラー獲得を目指したい。

【動画】最速157キロ右腕・風間の投球がこれだ! 1年目はまず二軍で?
<ソフトバンク>
●風間球打(投手/ノースアジア大明桜高)
【二軍、三軍合わせて10試合先発、50イニング登板】

昨夏の秋田大会で157キロをマークして注目を集めた高校生右腕。ソフトバンクが近年1位指名した高校生投手は、ともに故障を持ち越してのプロ入りとなった松本裕樹(14年)と高橋純平(15年)、そして抽選を3度外しての1位だった吉住晴斗(17年/退団)がいる。もっとも、彼らと比べても入団時点でのポテンシャル、期待値の高さは風間の方が上だろう。

チームは育成も含めて25歳前後に多くの投手がひしめいているため、二軍での登板機会はどうしても限られることになりそうだが、なるべく実戦で起用したいところだ。コンディション的に問題がなければ、二軍と三軍で上手く併用しながら、最低でも10試合は先発のマウンドを経験させたい。

<日本ハム>
●達孝太(投手/天理高)
【故障なく1年を過ごし、順調なら終盤に二軍で実戦デビュー】

日本ハムが単独指名に成功した達だが、同じ高校生投手でドラフト1位の小園健太(DeNA)、風間球打(ソフトバンク)、森木大智(阪神)と比べると身体つきは明らかに細く、将来性を重視しての評価であることは間違いない。また、達の誕生日は3月27日で、実質的には今年高校3年生と考えてもおかしくない。

そういう意味で、最も近いベンチマークになるのが佐々木朗希(ロッテ)である。佐々木も1年目は一軍に帯同しながら、とにかくトレーニングの日々を送り、結局一度も実戦のマウンドに立つことはなかった。しかし、2年目の終盤には見事に一軍のエース格へと成長し、その資質を発揮しつつある。達もまずは怪我なく一年を過ごすことが重要であり、場合によっては佐々木と同様に、実戦デビューが2年目になるくらいのイメージが妥当だろう。

<西武>
●隅田知一郎(投手/西日本工業大)
【一軍で15先発、80イニング、5勝】

4球団が競合した大学生No.1左腕に期待されるのは1年目からの先発ローテーション入り。とはいえ、いきなり主力として計算するのは危険だろう。リーグ戦では2年春から安定した投球を見せ、4年春には大学選手権でも好投しているが、早川隆久(楽天)の大学4年時と比べると、すべての面で劣るという印象は否めない。

その早川もいきなり9勝をマークしたものの、終盤はプロの打者を相手にかなり苦しんだことを考えると、年間を通じての活躍を期待するのは荷が重いと言えそうだ。チームに左の先発が圧倒的に不足しているのは隅田にとっても追い風だが、1年目は2位の佐藤隼輔と2人合わせて、昨年の早川を上回ることができれば十分ではないだろうか。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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