「勝つつもりがないチームが多すぎる!」球界の“ご意見番”シャーザーがオーナーたちに激怒。「若手の夢を利用している」とも<SLUGGER>
ロックアウトに突入してから1ヵ月以上が経ったMLBだが、その後もまったくと言っていいほど動きがない状況が続いている。新労使協定を巡って最大の焦点となっているのが「お金」の問題。どうにか選手側の取り分を抑えたいオーナーと、待遇改善を成し遂げたい選手側の溝はかなり深い。
そんな中、選手会代表者の一人を務める大投手マックス・シャーザー(メッツ)は激しい言葉を並びたててオーナーたちを批判している。
「俺たち選手の立場からすると、まったく勝つつもりがなく開幕を迎えるチームが多すぎる」とサイ・ヤング賞3回のシャーザー。「そういうやり方は将来勝つための戦略かもしれないが、スモールマーケットの球団だけでなく金満球団すらもタンキングしている」と続けた。
タンキングとは、半ば意図的に低迷することによって、翌年のドラフトで上位指名権を得ようとするチーム再建戦略のこと。過去にカブスやアストロズがチームを大解体したのち、タンキングを経て世界一を手にしたことから、勝利への“最適解”として広く浸透していった。MLBにはぜいたく税(戦力均衡税)、つまり総年俸が一定の基準を超えたら「税金」を科す制度がある一方、どれだけ総年俸を下げても罰則がない。このことも、タンキングを後押しする要因になっている。
さらにシャーザーは「メジャーデビュー日の操作」への矛先を向けている。「タンキングだけじゃない。多くのチームが(若手有望株が)メジャーデビューする前にディスカウントされた長期契約を提示している。そして、フロントはこう言うんだ。『この契約を結べば、明日にはメジャーデビューできるぞ。でも、サインしないならまだマイナーにいてもらうがね』」。
MLBはデビュー満3年で年俸調停権、6年でFA権を取得できる。この場合、メジャー登録日数(サービスタイム)172日間で「1年」とカウントする。そこで球団はわざとメジャー昇格時期を数週間遅らせ、1年目のサービスタイムが172日にならないよう「操作」する。そうすることで、FA取得までに実質7年間保有できるからだ。こうした手法が横行していることも、シャーザーをはじめ選手会の怒りを買っているのだ。
シャーザーは言う。「メジャーでプレーするのは全員の夢だ。だけど、球団のやつらは財政をコントロールするために、選手たちの気持ちを利用しているんだよ」。
“ご意見番”の憤慨は選手たちの気持ちをまさに代弁したものである。シャーザーはこのオフに3年1億3000万ドル(約148億円)という超大型契約を取得しているが、彼クラスのスター選手はほんの一握り。近年はメジャーデビュー時の平均年齢が上昇し、逆に平均寿命は短くなっているとのデータもある。
だが、オーナー側がこうした選手たちの主張を易々と受け入れるはずもない。スプリング・トレーニングまで1ヵ月余り。労使対立解決の糸口は一体どこにあるのだろうか。
構成●SLUGGER編集部
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