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【2021大谷翔平の軌跡:9・10月】103年ぶり「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」を逃しながら得たものとは?<SLUGGER>

8月以降の失速で本塁打王や「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」は逃したが、シーズン最終戦で46号を放って「有終の美」とした。(C)Getty Images
8月に続き、試練の9・10月だった。本塁打は今季月間ワーストの4本。打率も.231と振るわなかった一方で、月間27四球、9敬遠はともにメジャー4年目で過去最多。プレーオフ進出を目指す相手チームにとって、長打力のある大谷と対戦すれば失点のリスクが高く、勝負を避けられるシーンが目立った。

四球が増え、打たせてもらえないなか、本塁打王争いのライバルだったブラディミール・ゲレーロJr.(ブルージェイズ)、サルバドール・ペレス(ロイヤルズ)は着実にアーチを重ねた。大谷はストライクゾーンに来たボールも引っ張る傾向が強くなり、打球が上がらない場面が目立った。

後半戦開始の時点で、本塁打数リーグトップで、2位に5本差をつけていた。だが、13日にキングの座からついに陥落、そのままタイトルを逃した。投打で自己ベストの成績を収めた一方で、好不調の波があった21年シーズン。大谷の捉え方は、前向きだった。
「打てない、打たれたとか、そういうのも落ち込んだりすることはあるので、毎日毎日試合があって、良かった、悪かったという結果が必ず出てくる。今日はここが良かったな、ここが悪かったなっていうのが、出てくることっていうのは、すごい幸せなこと。

普通の生活では味わえないというか、そういう経験をさせてもらっていること自体、すごいうれしいことだと思ってますし、試合に出るからこそ、そういうのがある。今まで怪我している時は出られないこともあったので、落ち込むことも含めて、いい一年だったなと個人的には思ってます」

9月12日のアストロズ戦。ベーブ・ルース以来103年ぶりとなる「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」を目前にしながら、3.1回9安打6失点の乱調で黒星を喫した。DHを解除し、投打で同時出場するリアル二刀流としては日米通じて16連勝中だったが、初黒星となった。その後の2登板では好投しながらも援護がなく、今季は9勝で終わった。26日のマリナーズ戦では、悔しさからベンチでバットを叩きつける場面もあった。

打者では22日のアストロズ戦で1試合4四球。その後、23日のアストロズ戦、24日のマリナーズ戦の3戦で11四球はメジャー最多タイの記録となった。打ちたい気持ちを抑え、四球を選ぶ姿は、ジョー・マッドン監督やジェレミー・リード打撃コーチから高く評価された。 日本人初となる本塁打王のタイトルは厳しい状況になっても、最後まで駆け抜けた。29日のレンジャーズ戦では、5打数2安打1得点でシーズン100得点をマーク。10月3日、マリナーズとのシーズン最終戦では、第1打席で46号ソロを放ち、シーズン100打点に到達した。

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有終の美を飾り、初めてメジャーで二刀流としてシーズンを完走した。だからこそ得るもの、感じることも多かった。

「足りなかったところはたくさんありますね。ただ、その目標に向けて確実にレベルは上がったかなと思っているので、それは自信を持って言えるかなと思います。何をもって(選手として)一番かというのは曖昧なところではあるので。そこはこれからも目指していきたい目標ではあります」
メジャー挑戦時に掲げた「世界一の選手になる」という夢はまだ道半ばだ。

「どれぐらい試合に出られるか、どれぐらい打席に立てるか、どれぐらい登板できるか、というのが一番かなと思います。やれることをやって、シーズン終わった後に良かった、悪かったを自分で振り返ればいいかなと思っているので。一番は、健康で、シーズン通して出続けることかなと思ってます」

二刀流として、歴史的なシーズンを贈った2021年。当然、今後は今年と同等かそれ以上の活躍を求められ、プレーオフ進出やワールドシリーズでの二刀流の期待も高まる。もっとも、大谷自身が求める理想像は、まだまだ先にある。来季はどんな進化を見せるのか。二刀流の未来に、心が躍る。

文●斎藤庸裕

【著者プロフィール】
さいとう・のぶひろ。1983年、埼玉県生まれ。日刊スポーツ新聞社でプロ野球担当記者を務めた後サンディエゴ州立大学でスポーツビジネスを学ぶ。2018年から大谷翔平の担当記者を務める。日刊スポーツでコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」を配信中。

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