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【2021大谷翔平の軌跡:6月】6日間で6発&1勝を稼いだ驚愕の1週間。“ルースが建てた家”でも強烈な印象<SLUGGER>

“ルースが建てた家”と呼ばれるヤンキー・スタジアムでも圧倒的な打棒でファンのどよめきを誘った。(C)Getty Images
すさまじい1ヵ月となった。まずは6月8日のカンザスシティ・ロイヤルズ戦で特大の一撃で狼煙を上げた。左腕クリス・ブービッチのチェンジアップを捉え、右中間へ完璧な一発を放り込んだ。飛距離は470フィート (約143メートル)とメジャー4年間で最も遠くに飛ばした。ただ、周囲の度肝を抜くすさまじい本塁打も、序章にすぎなかった。

第3週では、二刀流がエンジン全開となる。

15日のアスレティックス戦で18号本塁打を放つと、16日は2戦連発の19号。これまではデータ上で分が悪いとされてきた左腕から、2試合連続の1発で勢いを加速させた。コロナ禍の制限が外れ、観客動員が100%となった17日のタイガース戦は、投手として3勝目を挙げた。6回5安打1失点。現役で唯一、三冠王の強打者ミゲル・カブレラを抑え、投手でもトップレベルの力を示した。

驚異的な1週間はまだ続いた。日本人で初めてのホームランダービーに出場を表明した18日、試合ではタイガースを相手に2発。右へ、左へ、メジャーでも屈指の長打力を披露した。19日は2戦連発となる22号ソロを放ち、20日には自己最多となるシーズン23号本塁打を3戦連発で決めた。
この週の活躍をまとめると、こうだ。

15日 アスレティックス戦 18号
16日 アスレティックス戦 19号
17日 タイガース戦 投手で3勝目
18日 タイガース戦 20号&21号
19日 タイガース戦 22号
20日 タイガース戦 23号

打っては15日からの6試合で6発。投げては6回1失点の好投で勝ち星も挙げた。本塁打→本塁打→3勝目→2本塁打→本塁打→本塁打。20日の23号で、早くも自己ベストを更新した。かつてないほど投打のフル回転で活躍した驚愕の1週間となった。

締めくくりは伝統球団ヤンキースを相手にしたパフォーマンスだった。28日、3年ぶりのヤンキー・スタジアムでの一戦、第1打席でいきなり右翼へ26号本塁打を放った。新旧で場所は異なるが、かつて二刀流の元祖ベーブ・ルースがプレーし、“ルースの家”とも呼ばれた聖地で暴れた。4連戦の2戦目は、2打席連続アーチで自身4度目の3戦連発をマークした。「名実ともに世界一のチームだと思うので、そういうところでプレーできるのもすごい光栄。何回も来ることはないと思うんですけど、数少ない打席の中で、結果が出たのは良かったかなと思います」

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2戦で3発。手厳しいニューヨークのファンの前で、打者・大谷は強烈なインパクトを残した。続く3戦目に先発マウンドに上がったが、 こちらは0.2回で7失点。まさかの大乱調でKOされたが、6月の最後も“サプライズ”で締めくくった。

07年7月の松井秀喜(ヤンキース)に並び、日本人選手では月間最多13本塁打。打率.309は、他の月と比べてもベストの成績だった。打者に専念した2年目の19年シーズンも、6月は絶好調だった。13日に日本人選手初のサイクル安打を達成、月間打率.340をマークした。だが、今季は投手としてマウンドに立ち続けながらの好成績だけに、意義も大きかった。
打って投げて走ってフル回転。誰も見たことがない二刀流での圧倒的な活躍に、アメリカでの注目度も日増しに上昇していった。20日には、7月に行われる球宴ホームラン・ダービーへの出場を宣言。心技体ともピークに達した活躍が、7月の一世一代の大舞台へと結実する。
【つづく】

文●斎藤庸裕

【著者プロフィール】
さいとう・のぶひろ。1983年、埼玉県生まれ。日刊スポーツ新聞社でプロ野球担当記者を務めた後サンディエゴ州立大学でスポーツビジネスを学ぶ。2018年から大谷翔平の担当記者を務める。日刊スポーツでコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」を配信中。

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