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逸材を“最も多く”指名した球団はどこ? 「独自ランキング」で振り返る2021年のドラフト<2021百選>

投手に逸材が多かった今ドラフト。1年かけて行ってきたランキングを元に各球団を採点しよう。写真:塚本凛平/小園(左上)、達(右下)、田中研治/隅田(右上)、滝川敏之/風間(左下)
2021年のスポーツ界における印象的なニュースを『THE DIGEST』のヒット記事で振り返る当企画。今回は、プロ野球ドラフト会議を取り上げる。どの球団が多くの逸材を指名したのか「独自ランキング」で採点する。

記事初掲載:2021年10月14日

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10月11日に行なわれたプロ野球ドラフト会議。終了後には数多くの「採点」記事が出ているが、今回は各球団の補強ポイントについてはあえて度外視。単純に選手の実力と将来性のみで判断し、どれだけ多くの“逸材”を指名できたかでランキングしてみよう。

採点はA、B、C、Dにさらに+、無印、−をつけて12段階になるようにした。また選手の評価については、ドラフト会議前に公開した『ドラフト候補ランキングTOP50』を参考にしてもらいたい。

■日本ハム:A+
ランキングでトップ10に入ったのは1位指名の達孝太(天理高)だけだったが、有薗直輝(千葉学芸高)、阪口樂(岐阜第一高)、畔柳亨丞(中京大中京高)、松浦慶斗(大阪桐蔭高)と、ランクインした高い将来性を持つ高校生を次々と指名。

達と松浦が左右のエースになり、畔柳が抑えを担い、有薗と阪口が中軸を打つ——。そんな夢の広がる指名だったのは間違いない。また、他にも投手では北山亘基(京都産業大)、野手では水野達稀(JR四国)という実力者の指名にも成功。特に北山は大学生でもトップクラスの右腕で、8位まで残っていたのが本当に不思議な選手だけに、早くから戦力として期待できそうだ。

【ドラフト候補ランキング入りしていた選手】
1位:達孝太(ランキング7位)
2位:有薗直輝(ランキング19位)
3位:水野達稀(ランキング37位)
4位:阪口樂(ランキング14位)
5位:畔柳亨丞(ランキング16位)
6位:松浦慶斗(ランキング36位)
7位:北山亘基(ランキング24位)

■西武:A
4球団が競合した今ドラフト一番人気の隅田知一郎(西日本工大)を引き当て、さらに隅田と並んで大学を代表するサウスポーの佐藤隼輔(筑波大)、アマチュアナンバーワン捕手の古賀悠斗(中央大)の指名に成功。

ドラフト候補ランキングにランクインしていたのはこの3人だけだが、全員が12位以内に入っていることからも分かるようにいずれも1位指名クラスの実力者。これだけで高評価をつけられるはずだ。4位の羽田慎之介(八王子高)、5位の黒田将矢(八戸工大一高)もスケールの大きさは高校球界でも屈指で、羽田は6月のランキングでは41位にランクインしている。上位では完成度を重視し、下位ではスケールを重視するという分け方も見事だった。

【ドラフト候補ランキング入りしていた選手】
1位:隅田知一郎(6位)
2位:佐藤隼輔(4位)
3位:古賀悠斗(12位)

■DeNA:A−
事前ランキングで全体1位だった小園健太(市立和歌山)を抽選で引き当てた成果が何よりも大きい。高校生ながらもすでに完成度も高く、近い将来のエース候補として期待できる。また、2位指名の徳山壮磨は今年調子を落としたために最終版のランキングからは外れたものの、1月発表時点では7位に入っており、本来の調子であれば上位指名に値する投手である。

4位の三浦銀二(法政大)も徳山と並ぶ東京六大学を代表する右腕。秋は部内のクラスターで出遅れていたが、ドラフト翌日は徳山と揃って好投を見せて復調を印象付けた。一方で野手も3位の粟飯原龍之介(東京学館高)、6位の梶原昂希(神奈川大)ともにスケールのある選手で、将来のレギュラー候補として期待できる。

【ドラフト候補ランキング入りしていた選手】
1位:小園健太(ランキング1位)
3位:粟飯原龍之介(ランキング48位)
4位:三浦銀二(ランキング31位)
6位:梶原昂希(ランキング27位)

【表】ドラフト候補ランキング最終版1~50位一覧■ソフトバンク:B+
1位で風間球打(明桜高)の単独指名に成功。最速157キロという数字だけでなく、ボールの角度や威力も圧倒的なものがあり、ストレートに関しては今年の全候補のなかでもナンバーワンの迫力を誇る。さらに、3位でも高校生ナンバーワン左腕の木村大成(北海高)も指名。スケールの大きさと完成度を備え、近い将来の先発候補として期待できる。この2人が加わった若手投手陣は、さらに層が厚くなった印象だ。

また、2位では東京六大学を代表する長距離砲の正木智也(慶応大)を指名も大きい。今年は野手がやや不作と言われるなかでも、常に安定して長打を打ち続けてきた彼の実績は見事だ。4位以下は少し意外な指名だったが、この3人だけで十分高評価をつけられるだろう。

【ドラフト候補ランキング入りしていた選手】
1位:風間球打(3位)
2位:正木智也(21位)
3位:木村大成(15位)

■巨人:B
支配下で指名した6人中5人が投手と狙いを徹底した指名となった。ランキングで上位に入っていたのは2位の山田龍聖(JR東日本)だけだったが、将来性の高いピッチャーを多い点は高評価につながった。翁田大勢(関西国際大)、山田の上位指名の2人は、ストレートは素晴らしいものの変化球や制球に課題があるだけに、本格的に戦力となるのは2年目かもしれない。

逆に3位の赤星優志(日本大)はコントロールと投球術に素晴らしいものがあるだけに、早くから一軍の戦力となる可能性も十分。高校生で特に注目したいのが花田侑樹(広島新庄高)だ。線は細いもののフォームの良さは抜群で、筋力がつけば大化けする可能性を秘めている。指名順位は低いが、将来のエース候補として期待したい。

【ドラフト候補ランキング入りしていた選手】
1位:翁田大勢(39位)
2位:山田龍聖(9位)
3位:赤星優志(34位)
4位:石田隼都(28位)
7位:花田侑樹(20位)
育成7位:京本眞(45位)

■阪神:B−
小園健太(市立和歌山)を抽選で外したものの、同じく評価の高かった高校生右腕の森木大智(高知高)の指名に成功。さらに2位で鈴木勇斗(創価大)、3位で桐敷拓馬(新潟医療福祉大)と大学生でも屈指のサウスポーを指名し、投手についてはほぼ満点と言えるドラフトだった。

森木は小園、風間球打(明桜高)と比べても総合力では引けをとらず、投手としてのセンスは抜群。西純矢、及川雅貴とともに将来のチームを支える存在として期待できる。鈴木はストレート、桐敷は三振を奪える変化球が魅力で、2人とも早くから一軍の戦力となる可能性も高い。野手も粗削りだがパワーが魅力の前川右京(智弁学園高)、抜群の守備力を誇る中川勇斗(京都国際高)と将来性の高い高校生を揃え、若手の底上げに成功したと言えるだろう。

【ドラフト候補ランキング入りしていた選手】
1位:森木大智(5位)
2位:鈴木勇斗(11位)
3位:桐敷拓馬(34位)
4位:前川右京(49位)

【表】ドラフト候補ランキング最終版1~50位一覧■オリックス:C+
1位では椋木蓮(東北福祉大)の一本釣りに成功した。ヒジを柔らかく使えるフォームからコンスタントに150キロ以上のスピードをマークし、さらに高い制球力も備えている逸材。リリーフであれば1年目から一軍の戦力となりそうで、近い将来のクローザー候補となりそうだ。

2位から5位までは野手を揃えたが、野口智哉(関西大)と池田陵真(大阪桐蔭高)はフルスウィングに特徴がある強打者で、特に野口は遊撃守備でもこの秋に大きく成長。あらゆるポジションを守った経験があるのも大きい。また、3位の福永奨(国学院大)は抜群のスローイングが魅力で、4位の渡部遼人(慶応大)の守備範囲の広さとスピードも天下一品だ。ともに打撃が課題となるが、最終学年に成績を上げているのは大きなプラス材料である。

【ドラフト候補ランキング入りしていた選手】
1位:椋木蓮(8位)
2位:野口智哉(25位)
5位:池田陵真(38位)

■ロッテ:C
1位では高校球界を代表する強打の捕手・松川虎生(市立和歌山高)を指名。柔らかさのあるスイングで広角に長打を放ち、地肩の強さとフットワークも魅力だ。キャッチングやスローイングなど、プロとして守備面は成長すべき部分が多そうだが、将来の正捕手候補として期待したい。そして、大きなプラスが3位で指名した広畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)だ。

ランキングでも2位と位置付けたように、広畑は1位指名の可能性も高かった右腕で、この順位で指名できたのは非常に大きい。先発、リリーフどちらでも力を発揮でき、新人王の有力候補になるだろう。2位指名した池田来翔(国士館大)は少し順位が高い印象を受けたが、逆に育成1位で田中楓基(旭川実高)が残っていたのも幸運だった。素材の良さは抜群だけに、将来のローテーション入りも期待したい。

【ドラフト候補ランキング入りしていた選手】
1位:松川虎生(30位)
3位:広畑敦也(2位)
育成1位:田中楓基(41位)

■広島:C−
くじ引きで2度も外したものの、1位で黒原拓未(関西学院大)、2位で森翔平(三菱重工West)と、大学・社会人でも上位のサウスポー2人の指名に成功した。前者は上背こそないものの150キロに迫るストレートの勢いは申し分なく、後者もバランスの良いフォームでコンスタントに140キロ台後半をマークし、本格派左腕ながら制球も安定している。ともに今年に入ってから成績を上げているというのも大きなプラス要因だ。

野手は強打者タイプを3人揃えたが、将来が楽しみなのが4位の田村俊介(愛工大名電高)だ。夏の甲子園でも逆風をものともしないホームランを放ち、その長打力を存分に見せつけた。坂倉奨吾、小園海斗、林晃汰など高校卒の若手野手が伸びているだけに、彼らに続く存在として期待したい。

【ドラフト候補ランキング入りしていた選手】
1位:黒原拓未(26位)
2位:森翔平(13位)
4位:田村俊介(42位)

【表】ドラフト候補ランキング最終版1~50位一覧■ヤクルト:D+
1位では東京六大学が誇る大型左腕の山下輝(法政大)を指名。188センチ、100キロという日本人離れした体格から投げ込むストレートは勢い十分で、これだけ大型ながら変化球も器用に操る。ただ、大学では故障などでフルに活躍したシーズンはないだけに、1年目は二軍で経験を積むところからスタートになりそうだ。

3位の柴田大地(日本通運)、5位の竹山日向(享栄高)もストレートが魅力の右腕。前者は大学、社会人でまったく実績がないにもかかわらず、この順位で指名したところにポテンシャルの高さを感じる。一方の後者も故障で伸び悩んだが、最後の夏に見せた成長が支配下指名につながった。2位の丸山和郁(明治大)は抜群のスピードが光る外野手で、4位の小森航太郎(宇部工)はパンチ力が魅力のショート。特に丸山は若手外野手が少ないだけにチャンスは多そうだが、まずは故障を防ぐ身体づくりが大事だろう。

【ドラフト候補ランキング入りしていた選手】
1位:山下輝(10位)
2位:丸山和郁(44位)
5位:竹山日向(32位)

■中日:D
6人中5人が野手と、巨人とは真逆の指名を見せた。1位のブライト健太(上武大)は4年春に突如として浮上してきた強打の外野手。捉えた時のパワーと運動能力の高さは魅力の一方、まだまだ攻守に粗さがあるだけに時間はかかりそうだ。2位の鵜飼航丞(駒沢大)も長打力には定評があるものの確実性はかなり低い。ドラフト候補ランキングの順位を見ても分かるように、上位指名するのはかなりリスクが高い2人と言えるだろう。

そんななかで面白いのが、唯一の投手となった3位指名の石森大誠(火の国サラマンダーズ)だ。今年からスタートした九州アジアリーグでは抑えを務め、コンスタントに150キロ前後をマークするストレートと鋭く変化するスライダー、チェンジアップで三振の山を築いた。少しコントロールには不安が残るものの、ボール自体の力は抜群だけに早くから一軍のリリーフ陣に加わる可能性もあるだろう。

【ドラフト候補ランキング入りしていた選手】
1位:ブライト健太(33位)
2位:鵜飼航丞(46位)
3位:石森大誠(18位)

■楽天:D−
投手に有力選手が多いと言われていた今年のドラフトで、あえて1位から3位まで野手を並べた。前評判の高かった選手をスルーしたため、必然的に評価も最も低いものとなった形だ。

そんななかでも楽しみなのは、1位の吉野創士(昌平高)と2位の安田悠馬(愛知大)の2人。吉野は有薗直輝(千葉学芸高)と並んで高校球界を代表する右の強打者で、細身ながら遠くへ飛ばす力は申し分ない。上背に見合うだけの筋肉量がついてきた時のスケールアップに期待だ。一方、安田はこの秋に評価急騰。秋のリーグ戦では愛知二部リーグながらホームランを量産。130メートルを超える特大弾を多く放ち、その飛距離は圧倒的なものがある。プロでも捕手として勝負するかは微妙なところだが、地肩の強さも魅力だ。

3位以下の前田銀治(三島南高)、松井友飛(金沢学院大)、泰勝利(神村学園高)も典型的な未完の大器で、現時点ではやはり高い評価をするのは難しい。かなり実験的なドラフトであり、現時点では最低評価となった。果たして、これがどのような結果を生むのかという点は非常に楽しみである。

【ドラフト候補ランキング入りしていた選手】
1位:吉野創士(23位)
2位:安田悠馬(50位)

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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