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「投手四冠」達成の山本由伸はQS率や被打率でも1位を総なめ!【表彰されざる男たち:パ・リーグ投手編】<SLUGGER>

最多勝・最優秀防御率・最多奪三振・最高勝率のタイトルを獲得した山本。それ以外の部門でも軒並みリーグ1位に立った。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)
 個人タイトルの対象ではなくとも、選手の凄みが詰まった部門のベスト3を紹介する。今回はパ・リーグの投手編だ。(※率系部門は先発が100投球回以上21人、救援が50投球回以上11人を対象)

■奪三振率(奪三振×9÷投球回)
【先発】
1.山本由伸(オリックス) 9.57
2.則本昂大(楽天) 9.46
3.マルティネス(ソフトバンク) 8.83
【救援】
1.杉浦稔大(日本ハム) 11.36
2.平良海馬(西武) 10.50
3.小野郁(ロッテ) 9.75

 2年連続で奪三振王の山本は昨季(10.59)から数字を落としたが、1イニングあたりの球数を減らし、シーズン中盤からのギアチェンジで東京五輪とポストシーズンも完走。則本は球速も三振を奪うペースも、右ヒジ手術前の水準に戻った。クローザーとして開花した杉浦は、主に先発だった昨季の8.20から劇的に向上させた。平良は救援リーグ最多の70奪三振。50投球回未満では松井裕樹(楽天)が奪三振率12.35を記録した。■与四球率(与四球×9÷投球回)
【先発】
1.加藤貴之(日本ハム)  1.26
2.田中将大(楽天) 1.68
3.山﨑福也(オリックス) 1.86
【救援】
1.益田直也(ロッテ) 2.10
2.佐々木千隼(ロッテ)  2.21
3.宋家豪(楽天) 3.41

 ショートスターター卒業の加藤は4年ぶりに全25登板で先発。イニング数は昨季から約2.5倍(58→150)も増えながら、与四球数は2つ減らした。田中も23先発中3四球が2試合あった以外は2四球以内にとどめ、敬遠ゼロはメジャーでもプレーした意地か。救援はロッテの8、9回を締めた2人がワンツーで、益田は10年目でキャリアベスト。平野佳寿(オリックス)の与四球率1.88は50投球回到達なら1位だった。

■被本塁打率(被本塁打×9÷投球回)
【先発】
1.山本由伸(オリックス) 0.33
2.マルティネス(ソフトバンク) 0.38
3.上沢直之(日本ハム) 0.45
【救援】
1.平良海馬(西武) 0.00
2.宋家豪(楽天) 0.30
3.堀瑞輝(日本ハム) 0.51

 山本が2年ぶりに1位へ返り咲き。特に楽天戦では32.0回で一本も被弾を許さず、防御率0.84に封じた。マルティネスは昨季(0.95)から半減以下に抑え、新天地で防御率1.60の成績を残してオフはMLBパドレスと4年契約を結んだ。平良は一軍デビューの2019年から2年連続被本塁打2本で、今季はゼロ。昨季の宋は一発病(被本塁打率1.73)が致命的な弱点だったが、今季は改善して飛躍のシーズンにつなげた。■K/BB(三振÷四球)
【先発】
1.山本由伸(オリックス) 5.15
2.加藤貴之(日本ハム) 4.86
3.田中将大(楽天) 4.34
【救援】
1.益田直也(ロッテ) 4.53
2.杉浦稔大(日本ハム) 2.88
3.平良海馬(西武) 2.50

 奪三振率ベストの山本と、与四球率1、2位の加藤と田中が先発3傑入り。山本は先発転向後から毎年数字を向上させて、昨季の2位からついにトップへ躍り出た。田中はこの数値でも日本での通算を下回るのだから、逆に恐ろしい。益田は自己ベストで、68奪三振もキャリアハイ。一方、今井達也(西武)はリーグダントツの99与四球が響き、K/BBも同ワーストの1.38と低迷した。

■QS率(QS÷先発)
1.山本由伸(オリックス) 88.5%
2.上沢直之(日本ハム) 87.5%
3.田中将大(楽天) 73.9%
3.伊藤大海(日本ハム) 73.9%

 先発6イニング以上&自責点3で記録されるQSで、山本はリーグ最多の23回をマーク。7イニング&自責点2以下のHQS率76.9%はダントツだった。上沢はリーグ2位のQS21回で、昨季から20%以上もアップ。伊藤、田中と髙橋光成(西武)はQS数が同じ17回。伊藤と高橋は2ケタ勝利を挙げただけに、4勝の田中は不運が際立つ。
 ■被OPS(出塁率+長打率)
【先発】
1.山本由伸(オリックス) .472
2.マルティネス(ソフトバンク) .558
3.上沢直之(日本ハム) .578
【救援】
1.平良海馬(西武) .504
2.佐々木千隼(ロッテ) .516
3.益田直也(ロッテ) .524

 3年連続で先発1位の山本は年々数字を改善させて、被出塁率.229/被長打率.243ともにリーグベスト。両方の数値を2割台に抑えた先発は、他にマルティネス(.276/.282)だけだ。2年連続救援1位の平良はホームランを一本も浴びず、被長打率.215がリーグベスト。佐々木と益田は被出塁率.243(2位)/.236(1位)が特に優秀だった。ちなみに、先発ワーストは二木康太(ロッテ)の.792。

■被打率
【先発】
1.山本由伸(オリックス)  .182
2.上沢直之(日本ハム) .208
3.今井達也(西武) .220
【救援】
1.平良海馬(西武) .176
2.杉浦稔大(日本ハム) .177
3.佐々木千隼(ロッテ) .182

 こちらも山本が初の1位に立った。ちなみに、最も多くのヒットを許したのは源田壮亮(西武)で10本(26打数)。コントロールには課題を残す今井だが、支配力はリーグ指折りと証明できた。美馬学(ロッテ)は被打率.303とともに防御率4.92も先発リーグワースト。平良は昨季の.129から5分近く数字を落としても救援1位を死守し、得点圏被打率.055で大きな壁になった。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。
 

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