暴力事件を起こした大砲に20年最多勝右腕、快足自慢の韋駄天も【パ6球団の“逆MVP”】<SLUGGER>
12月15日にMVPが発表され、セ・リーグは村上宗隆(ヤクルト)、パ・リーグは山本由伸(オリックス)が受賞した。では、不振や故障などでファンやチームの期待を最も裏切った“逆MVP”を選ぶとしたら一体誰になるだろうか。パ・リーグ6球団から一人ずつピックアップした。
▼オリックス:ロメロ
昨年は楽天でOPS.893と打ちまくり、2年ぶりにオリックスへ戻ってきたものの、コロナ禍での入国制限により来日したのは開幕後。一軍初出場は5月下旬だった。そうしたこともあってかなかなか調子が上がらず、20試合に出場した時点で打率1割台と精彩を欠いていた。
その分、後半戦での反撃が待ち望まれていたが、家族が来日できずモチベーションが上がらないとして、8月に退団を申し入れ了承された。通常のスケジュールで来日し、例年通りの調整ができていたなら、吉田正尚、杉本裕太郎の後ろの5番として活躍し、チームももっと楽な戦いになっていたと思われる。
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▼ロッテ:二木康太
種市篤暉がシーズン全休、大器の佐々木郎希もどれだけ投げられるか不明だった開幕時点で、エース級の活躍が期待されていたのがこの二木だった。オープン戦は15回を無失点と絶好調で、初の開幕投手を託されると、最初の6先発は防御率2.68と上々の滑り出しだった。
ところが、以後は閉幕までは5.18。開幕戦で3本浴びた本塁打は、年間では24本に上り自己&リーグワーストだった。相性が良かったはずのソフトバンク戦でも振るわず、優勝を懸けた戦いが続いた10月の登板も2試合とも打ち込まれた。完全に信頼を失った結果、ポストシーズンはロースター入りすら叶わなかった。
▼楽天:涌井秀章
田中将大・岸孝之・則本昂大、そして涌井。昨季まで合計で通算538勝の強力先発4本柱で打倒ソフトバンク&優勝を掲げた楽天の目論見はもろくも崩れた(ソフトバンクは上回ったけれども)。他の3人は規定投球回に達して防御率も3点台だったが、「自分がしっかり仕事をしていれば優勝できた」と振り返った涌井だけは、その言葉通り蚊帳の外だった。
3球団での最多勝という快挙を成し遂げた20年から一転、6月4日に挙げた6勝目、通算150勝がシーズン最後の白星。防御率はルーキーシーズンを除けば自己最悪とあって、後半戦はほとんど二軍暮らしだった。▼ソフトバンク:周東佑京
何もかもが上手くいかなかったソフトバンクにあって、一番何もかも上手くいかなかった選手だろう。前年に大きく成長したはずだったバッティングでは、打率2割そこそこ。何より痛かったのが、最大の武器である足までもスランプに陥ってしまった点で、代走に出ての牽制死、試合終了につながる暴走など、悪い意味で印象に残る場面が多かった。
守備でも精彩を欠き、二塁のレギュラーポジションを手放しただけでなく、体調面でも6月に右手人差し指の骨折で1か月離脱。8月に痛めた右肩も思いのほか重傷で9月に手術、全治6か月と発表された。
▼日本ハム:中田翔
西川遥輝と大田泰示のノンテンダー組や渡邊諒ら、他球団なら「一番の期待外れ」の有力候補になり得る選手が何人もいた。それでもなお、中田がぶっちぎりでの不名誉な受賞者だ。チームメイトへの暴力行為で追放されただけでも言語道断だが、成績そのものも目を覆わんばかりの惨状だった。
3億円をはるかに超える年俸を手にしながら39試合でOPS.577、ホームランも4本のみ。中田在籍時のチーム成績は30勝46敗で勝率.395だったのが、退団後は26勝23敗で.531と劇的に改善されたのは、偶然だったようには思えない。
▼西武:金子侑司
“山賊打線”も今では見る影もないが、得点力が低下した理由は長打力の減退だけではない。1番打者の出塁率が.292しかなかったように、秋山翔吾の退団以来、テーブルセッターの人材不足が深刻化しているのだ。金子はその期待を背負っていた一人で、開幕当初は1番で使われていたが、すぐルーキーの若林楽人にポジションを明け渡した。
もともと盗塁は多くとも出塁率は高くなく、リードオフマンで起用するには難のあった選手だが、今季は自己最悪の.243まで下降した。売り物であるはずの足も9盗塁で失敗9回とさっぱりで、後半戦は出場機会自体を失ってしまった。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB——“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
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