神宮大会で“輝いた”高校生の逸材は? 大阪桐蔭バッテリー、佐々木麟太郎に並ぶ1年生スラッガーも!<SLUGGER>
高校の部は大阪桐蔭、大学の部は中央学院大の初優勝で幕を閉じた明治神宮大会。選手個人では2本のホームランを放ち、1年生ながら早くも高校通算49本塁打に到達した佐々木麟太郎(花巻東高)に注目が集まったが、それ以外にも今後が楽しみな選手は非常に多かった。そんな神宮大会でキラリと光る可能性を見せた選手を高校生、大学生、それぞれ5人ずつピックアップして紹介したいと思う。今回は高校生編だ。
■松尾汐恩(大阪桐蔭2年・捕手)
旧チームから唯一のレギュラーで、夏の甲子園でもホームランを放った強打の捕手。新チームからは不動の3番となり、強力打線の中心を担う存在となっている。今大会でも3試合連続でマルチヒットを記録し、決勝戦では2本塁打を含む4安打4打点の大活躍でチームの初優勝に大きく貢献した。
少しバットの引きが大きいのは気になるが、巧みなリストワークで内角もきれいにさばいて強く引っ張ることができる。捕手としての守備はスローイング、キャッチングともに少し不安定だが、フットワークの良さは目立つだけにこの冬の期間に堅実さをアップさせたい。
■黒田義信(九州国際大付2年・外野手)
高いレベルで走攻守三拍子揃った外野手。旧チームでは「4番・三塁」を任されていたが、1年生の佐倉侠史朗の成長と、スピードを生かす意味で秋からはトップバッターとなり、打線を牽引する役割を担っている。凡打でも常に全力疾走を怠ることなく、一塁到達タイムはコンスタントに4.0秒台をマークする。
積極的に次の塁を狙う姿勢も素晴らしく、2回戦の日大三島戦ではセンターのミスを見逃さすにシングルヒットで二塁を陥れた(記録はセンター前ヒットとセンターのエラー)。少し身体が一塁側に流れ気味になることがあるのは課題だが、準決勝の大阪桐蔭戦ではホームランを放ち、長打力があるところも見せた。
【動画】九州国際大付の切り込み隊長・黒田の豪快アーチがこれだ!
■前田悠伍(大阪桐蔭1年・投手)
背番号14ながら近畿大会からエース格の活躍を見せた1年生サウスポー。今大会でも初戦の敦賀気比戦で、リリーフとして6回を被安打2、無失点、10奪三振と圧巻の投球で全国デビューを飾ると、続く2試合でも見事なピッチングを見せてチームの優勝に大きく貢献した。
ストレートは140キロ程度と驚くような速さはまだないが、スライダー、ツーシーム、チェンジアップを同じ腕の振りで操り、テンポ良く次々と三振を奪う。何よりも打者を見下ろして投げているように見える落ち着いたマウンドさばきが光る。2年生の投手陣にもうひとつ安定感がないだけに、選抜でもチームの命運を左右する存在となることは間違いないだろう。
■真鍋慧(広陵1年・一塁手)
佐々木と同じく1年生ながら4番を任され、チームの決勝進出に大きく貢献したのが真鍋だ。189センチ、89キロという左の大型打者だが、持ち味はパワーよりもむしろ高い打撃技術にある。ゆったりと大きく構え、小さな動きで力強いトップの形を作り、ボールを長く見ることができるため、態勢を崩されることがほとんどない。巧みなリストワークで広角に打ち分ける上手さもある。
初戦の明秀日立戦では3安打を放つと、準決勝の花巻東戦ではライトスタンドへのホームラン、決勝の大阪桐蔭戦でもレフトオーバーのタイムリーツーベースを放ち、大会を通じて5割を超える打率を残した。
■佐倉侠史朗(九州国際大付1年・一塁手)
佐々木、真鍋とともに注目を集める1年生スラッガー。重心をかなり低くしてバットを高く上げる独特の構えだが、ステップする時も頭が上下動しない下半身の強さが持ち味。バットの動きが大きいため対応力には少し課題が残るものの、状況やカウントに応じて少しコンパクトなスウィングにするなど意外に器用な一面も備える。
1回戦、2回戦ではシングルヒット1本ずつに終わったが、準決勝の大阪桐蔭戦では前田の甘く入ったボールを一閃。彼らしい柔らかなスウィングから、打った瞬間に分かるホームランをライトスタンドに叩き込んで見せた。
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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