プロを目指すきっかけは赤黒ウエアの“トラ” 元スキー選手の44歳・遠藤彰が6位発進「こんなにうまくいくとは…」
<日本プロゴルフ選手権 初日◇27日◇恵庭カントリー倶楽部(北海道)◇7441ヤード・パー72>
「練習ラウンドしたときには、できれば2オーバーぐらいでとどめたいという感じでしたが、こんなにうまくいくとは思ってもいませんでした」。4バーディ・1ボギーの「69」をマークして首位と1打差の6位タイ。プロ20年目、44歳の遠藤彰が嬉しい誤算に白い歯を見せた。
午前6時55分、アウトの2組目でスタートした遠藤は、「出だしからショットもよかった」と2番パー5で2オン狙いからバーディが先行。その後も落ち着いてパーを重ねて、折り返した10番パー4で3パットのボギー。「雰囲気が悪いなと思いましたが、次のホールのチップインバーディで落ち着いてゴルフができました」とバウンスバックで息を吹き返すと、16番、17番でも伸ばした。
今大会でレギュラーツアーの出場53試合目、生涯獲得賞金982万4265円の遠藤は異色の経歴を持つ。山形県出身で小さい頃からスキーに熱中し、中学時代は全国大会でスラローム7位、ジャイアントスラローム8位に入る腕前。オリンピックやスキーW杯出場を目指して高校はカナダに留学して腕を磨いた。しかし、レース中に転倒して右ヒザのじん帯損傷の怪我を負うなど、思うような滑りができなくなりスキーの道を断念した。
当時、リハビリを兼ねてカナダでゴルフクラブを初めて握った。プロの道を志すようになったのは、タイガー・ウッズ(米国)の存在だ。「カナダでタイガーがマスターズで優勝するシーンを見て、かっこいいなって思いました。ゴルフのプロになったらかっこいいなと。タイガーに憧れてといったらあれですけど、それがきっかけです」。年齢でいえばタイガーは4つ上。代名詞の赤黒ウェアで大きなガッツポーズをするシーンが遠藤のゴルフ熱を高めた。
帰国すると19歳で栃木県のゴルフ場の練習生となり、2004年のQTでファイナルまで進み、プロ転向。05年の下部ツアーでプロゴルファーとしてデビューしている。27歳となった06年には、日本プロゴルフ協会のプロテストに合格。07年には「マンシングウエアオープン KSBカップ」でレギュラーツアーデビューも果たした。
プロ転向後はツアーでは思ったような結果が残せず、昨年のQTも3次で敗退し、今年のQTランキングは276位と試合に出場するのは難しい位置だ。しかし、独自の予選会を行う「日本プロ」は今年40位に入り、8度目の出場資格を手にした。
今季はレギュラーのみならず、下部のABEMAツアーの出場もない。栃木県内でレッスン業を行う傍ら、「ミニツアーや地区オープンに出て試合勘を養っています」と戦う気持ちは衰えていない。今季初のツアー競技にも「年も年ですし、緊張というよりワクワクの方が大きい。自分がどんなプレーができるか」と気持ちを高ぶらせてフィールドに立った。
「若い子みたいに飛ぶわけでもないし、まあ曲がるんですけど、やっぱりグリーン回りにいってからが勝負」とショートゲーム重視の自分のプレースタイルよく知っている。4つあるパー3はすべて200ヤード以上。「8番(この日は247ヤード設定)は3Wで乗ってバーディチャンスについているし、ほかもいい感じで乗ってバーディパットを打っています。そこまで厳しいパーはなかった。明日がちょっと怖いですけど…(笑)」とこの日はロングゲームも冴えた。
大会前の目標は予選通過。「明日も変わらず、予選通るってことを目標に伸ばせたらいいなと思います。プランは変わらず。ティショットはなるべくフェアウェイに打って…。明日は普通のゴルフをさせてもらえないでしょうけど、普通のゴルフをしたいですね。ボール探しとかあまりキャディに迷惑かけないように…」。これまで52試合に出場して最高成績は13年の今大会で記録した19位タイ。普通にゴルフができれば、十分更新できる位置にいる。(文・小高拓 )
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