今季9得点目で本格的に才能が開花!久保建英が多くのサッカーファンから愛される理由
写真:久保建英(Jose Breton/Pics Action/NurPhoto via Getty Images)
5月23日は、日本代表MF久保建英がラ・リーガを代表する選手となった日と言っても過言ではないだろう。
ラ・リーガ第36節「レアルソシエダ対アルメリア」の一戦で、久保は決勝点となるゴラッソを決めた。
ハットトリックをしたわけでもなく、2得点を決めたわけでもない。
しかし、1得点を含むそのプレーの質は、フィールド上でプレーするどの選手よりも抜きんでていた。
ここ数試合、そういった次元の違うプレーを安定的に見せていたが、今日行われたアルメリア戦で多くの人が「偉大な選手に成長した」と確信したはずだ。
久保建英はなぜこれほど多くのファンに愛されるのか
冒頭でも挙げたように、サッカー選手として一流に近づいていることは間違いない。
それゆえに、人気選手となるのは至極当然のことだと言える。
しかし、久保建英の愛され具合は、特別だ。
バスク地方の選手を中心に運営される特殊なクラブであるレアル・ソシエダで、加入1年目からクラブトップクラスの人気者になっていることからも、その魅力がずば抜けていることが分かる。
そこには、実力だけではない「何か」が存在する。
その「何か」は、「ストーリー」と「未完成さ」、そして「人間臭さ」だ。
久保建英は、幼少期から注目され続けてきたサッカー選手だ。
メッシ、シャビ、イニエスタらを擁し黄金期を迎えていたバルセロナでラ・マシア(下部組織)に所属しており、そこで現在バルサの10番を背負っているアンス・ファティと「悪魔のコンビ」と呼ばれるほどの活躍を見せていた。
久保74得点、ファティ60得点と2人で134得点を挙げたのだ。(たった1シーズンのみの成績)
「ネクストメッシ」と期待もされていたが、バルサの18歳未満の外国人選手獲得・登録違反によって日本への帰国を余儀なくされる。
バルサのトップクラブで活躍したいと願っていた少年にとっては、あまりにも辛い挫折だったことだろう。
帰国後15歳ながらJリーガーとなった久保は、着実に成長し、FC東京で活躍。
18歳を迎えたタイミングでバルサのライバルとなるレアル・マドリードに移籍した。
しかし、そこからレンタル移籍を繰り返し、自身のプレースタイルと合わないクラブでなかなか結果を残せない3年間を過ごすこととなる。
20歳にして人生2度目の挫折を味わったわけだ。
そんな紆余曲折の人生の末、レアル・ソシエダという素晴らしい監督、チームメイト、スタッフのいるクラブに加入し、クラブを2013-2014シーズン以来となるCL出場に導こうと奮闘している。
そのサッカー人生は、ストーリー性抜群だ。
物語の主人公感が溢れているため、多くの人が映画やドラマを観ながら主人公を応援するように久保を応援しているのだ。
そして、「未完成さ」も大きな魅力だろう。
人間は、完成されたものよりも未完成のものに魅力を感じる生き物だ。
腕のないミロのヴィーナスや未完成のサグラダファミリアが人々を惹きつけるのがその証拠だ。
心理学では「ツァイガルニク効果」と呼んでいるが、久保建英もまだ21歳でサッカー選手として未完成であるがゆえに、「この選手はどこまで成長するのだろう?」と期待をしてしまう。
そしてもう1つが、「人間臭さ」だ。
久保建英は、非常に頭の良い選手で、自分自身を冷静に分析出来、「今どのようなプレーが求められているのか」を瞬時に判断することもできる。
スペイン語を母国語のように喋る姿も、知的さを表している。
しかし、久保建英は良い意味で「抜けている」
マスクを片方ずつ外すのではなく、つまんで引っ張って強引に取ったり、ゴール後に興奮のあまりユニフォームを脱ぎ無駄なイエローカードをもらったりする。
さらには、今節の勝利インタビューで「明日はカディスを応援するよ」と素直な言葉を発するといったところも、人間臭さが垣間見える。
一般的な選手であれば、「監督も言っていましたが、自分たちが何をすべきかを理解して、次の試合に集中していきたいと思います」というありきたりな言葉を発しているはずだ。
おそらく、今後さらに久保建英の周囲は騒がしくなっていくはずだ。
それもまた大スターの宿命であり、久保ならばそんな環境もプレッシャーに感じることなく、楽しんでしまうことだろう。
日本サッカー史上最高の選手と呼ばれる日も、そう遠くないのかもしれない。
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