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【アジアカップ|試合後コメント】数々の苦難をチーム力で乗り越え、掴み取ったアジア王座。「チームにはストーリーがあると思っている」木暮賢一郎監督

日本時間9日、日本代表はクウェートで行われているAFCフットサルアジアカップの決勝を戦い、イラン代表に3-2で勝利。日本が3大会ぶり4回目のアジア王者に輝いた。

決勝戦まで圧倒的力を誇示して勝ち進んできたイランとは対照的に、日本はここまで何度も苦境に立たされてきた。

サウジアラビアに逆転負けしたグループステージの初戦から始まったこの大会は、その後2連勝でグループ1位通過。準々決勝のインドネシア戦と準決勝のウズベキスタン戦はいずれも先制されながら、逆転で勝利を収めてきた。

準決勝の途中には、守護神のピレス・イゴールが負傷してしまったが、代わりにゴールを守った黒本ギレルメがスーパーセーブを連発。決勝でもイランの猛攻をことごとく防いだ。

フィールドの選手も同じで、タイトな試合日程で主力選手が満身創痍のなか、決勝では出場機会の少なかった選手たちがそれぞれの役割を全う。全員が一つになって苦境を乗り越え、優勝することができた。チームをマネジメントする木暮賢一郎監督は、アジア王者になるまでの過程をどのように振り返っているのか。試合終了後、木暮賢一郎監督が取材に応じた。

一つひとつの時間が、この試合の結果につながった

まずは、ここまで一緒に戦ってきた選手、コーチングスタッフ、メディカルスタッフ、チームマネージャー、そして2人のダイレクター、2人のバックアップメンバー、また、ここに来てくれたサポーター、メディア、日本で応援してくれたファン、指導者、Fリーグや女子Fリーグの選手や関係者、全てのフットサルファミリーのみなさんに感謝したいです。

──選手と監督でアジアカップ優勝を果たしましたが、どちらがうれしいですか?

どちらもうれしいです。ただ、選手たちには「指導者よりも選手の方がいいぞ」と話しています。喜びを爆発させるという意味では、選手の時の方ができたと思いますし、指導者の方が「疲れた」という感覚の方が強いです(笑)。

──第2ピリオドでイランが攻撃を仕掛けてきましたが、どのような戦略がありましたか。

私自身はたくさんイランと決勝戦を戦ってきて、どういうゲーム構造で今まで勝ってきたかは経験しています。守備がキーになるというのは選手には昨日から伝えてきたので、苦しい時間帯も全選手が体を投げ出して、チームスピリットを見せてくれました。もちろん、誰と誰をマッチアップするという戦略もありましたが、疲労度もあってそうならない時間帯もあったなか、全選手が一丸になってくれました。黒本に関しては「いつも決勝に勝つ」というのを僕はよく知っているので、今回も素晴らしいパフォーマンスをしてくれたと思います。

──タイムアップまで集中力を保てていた要因は。

チームにはストーリーがあると思っています。我々がこの大会を勝ち取るために集まった9月5日から過ごしてきたストーリー、一つひとつの時間が、この試合の結果につながりました。この1カ月、もしかしたら苦しい時のほうが多かったかもしれませんが、全員が家族のように振る舞うことができました。

──木暮監督が大会前に描いていたストーリーの通りになったのかなと思いますが。

チームビルディングと言いますか、ストーリーを作るのは監督である自分の仕事ですけど、常にうまくいくとは限らないですし、いろいろ蒔いた種を感じ取りながら、最高のパフォーマンスをしてくれたと思います。今回は新しい取り組みとして、自分が尊敬するかつてのキャプテンたちを幕張の合宿に招待して、「日本代表とは」という話をしてもらいました。過去・現在・未来がつながっていくために、日本のフットサルファミリーを総動員したいというのがありました。

アジアカップで勝つということから逆算して、Fリーグを視察して、どういう噛み合わせになるのか、どういう時に誰が必要になるのかをシミュレーションして選手選考を行いましたし、ブラジルという強い相手との試合も組みました。ただ、イランと当たるところまで行かないと絵に描いた餅になってしまいます。

なぜ今回、今まで招集していなかった選手をぶっつけ本番で呼んだのか

──内村俊太選手がイランのピヴォを抑える大活躍を見せました。

ここまでプレータイムは非常に少なかったですが、彼をなぜ招集したかというと、イランの屈強なピヴォを抑えるためには、彼のようにディフェンスができる選手が必要でした。それが誰なのかと探していたところ、自分たちの決断として俊太を選びました。なぜこのタイミングで呼んだかを話はしていましたが、それでも試合に出られなくて苦しい思いをしたはずです。

今大会はどちらかというと点を取らないといけないシチュエーションが続いていたので、そういう意味ではアタッカーの方が必要でした。あとは、(石田)健太郎のような次世代を担っていってほしいフィクソもいましたので、彼をしっかりプレーさせていきながら勝ち進んでいくという考えもありました。

自分たちが描いていた、決勝戦でイランに勝つためのプランを発動するなかで、本当に期待以上のパフォーマンスをしてくれました。ココロ(原田快)にも(長坂)拓海にも戦術的な役割がありました。それが3セットを組まなかった理由の一つです。

──原田選手が攻撃の時間帯だけに出場するというトリッキーな交代策もありました。

まだ18歳なので、フィジカル面や守備面でもっと成長していってほしいところはあります。ただ、今日も見せてくれたような、他の選手が持っていないものがあるから、ここに連れてきています。まさしく、今日の第2ピリオドのようにイランに攻め込まれていて、ボールを落ち着かせたい、攻める回数を増やしたい時に必要になると思っていました。ただ、イランの選手たちのサイズと当たるのはリスクが大きいので、守備の時は下げて、攻撃の時に入れるという形にしました。

第2ピリオドがココロのサイド(右サイド)が手前側になったので、交代ゾーンが近いというのがありました。もしも逆のサイドだったら交代の時間もかかるし、守備に追われることになると難しい。僕がエンドを決めたわけではありませんが、そこはラッキーでした。また、イランも13番の若い選手を入れてきていたので、あのタイミングが一番使いやすいなと。よくやってくれたと思います。

──それぞれの選手に、それぞれの役割があると話していたことを象徴する決勝戦でした。

選手選考については、なぜ今回、(バルドラール浦安から)拓海や健太郎といった今まで招集していなかった選手を、いわばぶっつけ本番で招集しているのかといえば、彼らのクラブが良い順位にいて、良いパフォーマンスをしているからです。チームとして順位が下の選手は、自分のメッセージとして(呼ばないという)決断をしたところもあります。

こういったハイレベルなゲームで、ハイパフォーマンスをするためには自クラブ、リーグでの環境が必要になります。それは国内でいえばプレーオフや名古屋オーシャンズとの拮抗した試合などです。今は海外に行っている若い選手も多いので、これから先はどんどん良い選手が出てくるはずです。

今回招集している、年齢的にベテランの選手たちにも話しています。なぜ世代交代をしているなかで呼んでいるのかを理解してほしいと。僕自身、サッポからミゲル・ロドリゴになって、藤井健太さん、金山友紀さん、小野大輔といった、まだできる選手たちが外れて、当時でいえば星翔太とか仁部屋和弘といった若い選手がたくさん招集されて、「どうしてなのか」と思ったこともありました。

最初は理解できなかったですが、その後の彼らの成長を見ていたなかで、その意味を実感したというのもあります。あの時は僕と小宮山友祐と川原永光さんだけが残りましたが、新しいグループにおけるベテランとしての役割を経験できたことは大きかったです。ベテランとして課せられた役割がありますし、全ての選手にそれぞれの役割を説明しています。それはピッチの中だけでなく、ピッチの外でもそうです。

──改めて、アジアカップでの優勝という結果をどう振り返りますか。

新しいグループになったなかでも優勝という結果を出せたのは、Fリーグでの日常がよくなっているからこそです。それに感謝していますし、より競争力のあるリーグや、育成の環境になっていくことを期待していますし、さらに強くなっていくと確信しています。

個人的にはフル代表の監督として初めてのアジアカップで、たくさんのことを学びました。自分自身も選手とともに成長していかなければいけないと思っています。ここで満足するということは選手もスタッフもありません。これからも期待してもらえたらうれしいです。

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