【日本代表/WEB取材】「今回のトレーニングキャンプは3つの目的を満たすための活動になる」。招集された“2〜4層の選手”が“1層目”の中核層に入るために必要なこととは?
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今回のトレーニングキャンプはとても楽しみにしていました。まずは何点か、全体の目的と狙いについて、構造的に説明したいと思います。
全体のプランですが、これまでの経緯をみなさんもご存知だと思いますが、この時期に第6回アジアインドア&マーシャルアーツゲームズがタイで開催される予定でしたが、中止となってしまいました。私たちは、インドアゲームズに向けた海外遠征を計画していましたし、Fリーグの開幕直前という難しい時期ではありながらも、クラブやリーグは、その活動を承諾してくれていました。ですが、海外遠征の計画もこの(新型コロナウイルスの)現状下において実施できなくなりました。
それでも、A代表とU-20代表の間をつなぐ世代構造の健全性を含め、この時期になんらかの活動が必要でした。あいかわらずカレンダー的にもタイトな時期に、クラブの方々は快く選手を派遣していただき、今回の合宿が実現しました。みなさまには感謝を申し上げます。
そして、先ほどお話しした「世代間構造の健全性」は、これまでも取り組んできたものですが、引き続き意識しながら進めていく必要があります。この点について、今一度、整理してお伝えします。
まず“漏斗(ロート)のような円錐形”をイメージしてください。それを6つの層に分け、下から順に、1番が細く、6番が入口という考え方です。これを選手の層に置き換えますと、6番目の広い入口が、日本代表に呼ばれるタレントを要している選手の層です。そこから一つ段階を狭めた層が、いわゆる“ラージリスト”。国内外で招集の可能性があるメンバーを絞り込んだ階層です。人数としては80人前後の選手になります。
そこから下層に進みますが、5層と4層は、ラージリストのうち、実際に国内キャンプに呼ばれてもおかしくないメンバー。あるいは、私たちがよく観察し、リストアップしている招集直前にいるメンバーです。
その下の3層は、国内キャンプに実際に呼ばれるメンバーです。実際にキャンプに参加したのちに、(日本代表の活動に)適応し、競争に勝ち残ることができた選手が2層に進みます。
この2層は、国際親善試合や海外遠征に参加し、対外試合を戦うメンバーです。そこで非常に優秀かつ適性が高く、貢献してもらえるメンバーが最後の1層に入ります。いわゆる「中核層」であり、そのメンバーがAFC選手権やワールドカップといった公式戦を戦うメンバーです。そのように階層を分けて考えています。
今回のメンバーリストと今の話を照らし合わせてもらえるとわかると思いますが、いわゆる“1層の選手”は1人も招集していません。2〜4層のメンバーで構成されています。特に4層の選手が非常に多い。先ほど話した世代間のバランス、健全性と今のこの状況をリンクしてさらに説明しますと、今U-20代表というカテゴリーがありますが、その間の、サッカーにおけるU-24代表の世代がフットサルの場合はありません。U-20代表からジャンプアップしてA代表になりますが、この間をつなぐ活動が、世代間の健全性を維持するためには必要であり、非常に重要なテーマです。ですから、今回は平均年齢も約23歳という構成になっています。
続いて、3つの具体的なテーマに分けて今回のキャンプの説明をしたいと思います。
まずは、A代表のラージリストにおける、2層、3層の選手を呼んでいます。この選手たちは、A代表の競争環境にいますが、人数制限もありますから、直近の活動に呼べていません。彼らについては、継続した競争環境の活性化を目的に招集しています。名前を挙げると、篠田(龍馬)、田村(友貴)、(伊藤)圭汰、(石田)健太郎、(長坂)拓海などは、その最たる例だと考えています。
もう一つの目標としては、U-23、U-24前後の選手たちの活性化です。中期的な強化の継続という意味合いもあります。このなかには、U-20代表の招集歴があり、(U-20 アジア選手権で)アジアチャンピオンを経験したメンバーもいます。たとえば、坂(桂輔)、岩永(汰紀)、ラファ(田淵広史)、樋口(岳志)、吉田(圭吾)、荒川(勇気)、(本石)猛裕といった選手。彼らはそういった目的、テーマで活動してもらいます。
もう一つの目的は、今活動しているU-20代表において際立ったメンバーをピックアップして、上の年代の層を刺激しながら切磋琢磨していくという狙いです。
今回のキャンプは、この3つの目的を満たすための活動です。長くなりましたが、全体感を説明したほうが、私たちの取り組みの意図や、なぜこのようなメンバー構成になっているかということがわかりやすくなると思いましたので、時間をかけて説明させていただきました。
──10名の選手が初招集になりますが彼らの評価、期待していることは?
まず岩永については、U-20代表にも選ばれ、ラージリストに入り続けている選手です。Fリーグで出場機会を得てからすごく力をつけ、非常に良いパフォーマンスを見せています。彼は特に、全日本フットサル選手権での活躍も明らかに見えていました。私たちは、その活躍を評価して、今回招集しています。
ラファは、U-20アジア選手権の優勝経験を持つ実力のある選手です。非常に競争環境の厳しい名古屋オーシャンズに所属していましたが、今シーズンは試合経験を積むためにY.S.C.C.横浜へ移籍しています。ずっと、呼べるチャンスがあるならばと見ていた選手で、今回タイミングが来ていたので是非と招集しました。
北村(弘樹)は、年齢的には“間をつなぐ世代”の上限に近いと思っていますが、尻上がりに活躍している選手です。ピヴォとGKと共に、フィクソという、強化したいポジションの選手で、ピヴォに対しての守備が非常にうまい。攻撃においても起点をつくれますし、アウトレンジからのフィニッシュもある。そういったところが非常に魅力だなと見てきました。すごく良い機会だと思い、今回招集しました。
吉田も、長らくラージリストに入ってきた選手です。右利きのアラは、日本で一番多いタイプですが、バサジィ大分という、Fリーグでも常に上位にいるチームで、良いパフォーマンスをしています。代表では、同じポジションに吉川(智貴)、室田(祐希)、西谷(良介)、仁部屋(和弘)といったそうそうたる経験をもつ選手がいます。彼らとの競争において、なかなか呼ぶ機会がなかったのですが、このタイミングだと思い、招集しました。
次に樋口は、“ユニバーサル”な選手((どのポジションでも最高水準のパフォーマンスを発揮できる選手)と評価しており、高いパフォーマンスを維持しているので招集しました。U-20の経験もありますが、サッカーで培ったポテンシャルを生かしながら、フットサルに転向してからも良い適応をしています。特に、昨シーズンの、ボルクバレット北九州での適応と成長は非常に目覚ましかった。プロファイルとしてもポテンシャルが高く、ユニバーサルな点を含め、魅力ある選手だと思い期待しています。
本石は、ピヴォという、継続的な補強が必要なポジションの選手です。U-20のアジアチャンピオンでもある彼の強度は高く、フィジカル面でも強い。特に昨シーズンのペスカドーラ町田でのパフォーマンスは、シーズン後半にかけて尻上がりに上がっていったと評価しています。彼もこのタイミングでと考え招集しました。
荒川は、昨シーズンのリーグ戦で大きな飛躍をした選手だと思っています。サッカーからフットサルへ本格的に転向して間もないなかでも、恵まれた身体能力を生かしながら高いポテンシャルをうまく発揮しています。昨シーズンの活躍もそうですが、私たちが視察した最近のプレシーズンのトレーニングマッチでも継続した成長を続けていると感じたので、今回招集することで、一緒にやってみたいと思いました。
U-20の選手たち(甲斐稜人、倉科亮佑、金澤空、ケガのため不参加となった毛利元亮 )は、一括りにプロファイルとして説明します。彼らは、U-20代表の木暮(賢一郎)監督とも今回の目的や狙いを共有した上で意見交換、相談してピックアップしています。彼らはU-20代表の中でも際立った力を見せているメンバーで、A代表を目指していくための機会を与えるにふさわしいだろうと考え、ピックアップしています。
──岩永選手は最終日の活動とF2の開幕戦(5月23日)が重複しています。最終日まで帯同しますか?
今シーズンはオーシャンカップの中止を含め、いろいろな面でカレンダーの変更も想定できないことが起きていました。そのなかで、日程への適応が、代表にもクラブにも、リーグにも必要ということで、このような状況が生まれています。岩永選手は、そのような不足の事態への適応ということになりますが、今シーズン最初の公式戦に参加してもらえるように、22日の夜に代表チームを離れ、クラブに戻ってもらいます。少なくとも3日間は参加してもらえるので、そのような対応になります。通常であればこうした心配をしなくて大丈夫ですし、起こり得ないと思っていますが、現状のカレンダー変更の流れというのはやむを得ないものがあります。双方がメリットを得られるようにということで、適応していくという方針で考えています。
──次回以降、この世代での活動はありますか?
現状では、インドアゲームズの開催が2022年3月に延期になっていますが、開催されるという確固たるものはなく、(大会へ向けて)こんな準備ができるというのは見えていません。ただ、タイミング的に、そうした大会があるならば、先ほどお話しした、この世代の選手たちがターゲットですし、該当する可能性はあります。スポーツはそういうものだと思いますけど、今回についても、「可能性があるならば備えていく」というコンセプトでいますが、その後の具体的な計画は定まっていません。
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