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五十嵐史弥、イタリアへ。「いっぱい回り道をしてきました」(前編)
卓球×インタビュー 五十嵐史弥、イタリアへ。「いっぱい回り道をしてきました」(前編)
2021.08.28 取材・文:槌谷昭人(ラリーズ編集長)
日本代表選手以外の卓球選手の進路を、どれだけ知っているだろうか。
現在早稲田大学4年、エースの五十嵐史弥(いがらしふみや)は、日本人として初めてイタリアの卓球リーグへ挑戦する。
卓球選手としては珍しい180cm超の恵まれた身体から繰り出すパワフルでピッチの早いプレーで知られ、2年生時には関東学生選手権で優勝も果たした。木造勇人や髙見真己ら同世代を代表するプレーヤーの一人である。
写真:五十嵐史弥(早稲田大学)/撮影:槌谷昭人日本の若き才能が国内に飽き足らず、海外に挑戦の場を求めたように思うかもしれない。
だが、少なくとも、きっかけは逆だった。
五十嵐自身は、卒業後も日本でプレーするつもりだった。
しかし、行くはずだった名門の実業団は、来年度の卓球選手採用を控えることに決まった。
コロナは、これまで卓球界を支えてきたすべての分野に影響する。
写真:五十嵐史弥(早稲田大学)/撮影:槌谷昭人このページの目次
- [7 五十嵐史弥の卓球ギア]()
「無理をすると折れてしまう」
その知らせは、大学3年秋、2020年9月全日本卓球選手権の予選が終わった1週間後、突然やってきた。
「放心状態でした。これからどうしようと色々相談したんですが、何も決まらなくて。とりあえず、いまできることは11月の全日本学生選抜で結果を残すことだと思って、朝から夜も遅くまで練習して。なんか、忘れたくて」
写真:五十嵐史弥(早稲田大学)/撮影:槌谷昭人しかし、試練は続けてやってくる。
「それがいけなかったんでしょうね。試合の2日前に怪我してしまって。歩くのも、呼吸するのさえつらくて、監督にも棄権しますって伝えて」
痛めたのは背中の肋骨にほど近い箇所だった。「無理をすると折れてしまう」医者にも釘を刺された。
写真:五十嵐史弥(早稲田大学)/撮影:槌谷昭人でも、このままだと後悔する、と五十嵐は思い直した。
当日までできることをすべてやろう。でないと、この2ヶ月間悩みながらも、練習に無心で打ち込んだ自分に対して申し訳ない、と思った。
旧知のトレーナー志望の同級生に帯同を依頼し、会場近くのホテルを自分で予約、前日入りしてマッサージを入念に施してもらった。
結末を先に言うならば。
満身創痍で挑んだこの全日本学生選抜、五十嵐はベスト16まで勝ち進んでランク入りを果たした。
写真:五十嵐史弥(早稲田大学)/撮影:槌谷昭人「結果的には良かったです、やっぱり痛かったですけど。ロビング上げられたら打てないし、レシーブもチキータができない、でも意外とできることもありました」
試合中はアドレナリンのおかげか耐えられたが、試合後は痛みが激しくなり、トレーナーにマッサージしてもらってアイシングしての繰り返しだった。
「寂しかった」
寂しかった、と、その進路が白紙に戻った後の数ヶ月の心境を表現する。
「一人でいる時間がすごい寂しくて、練習終わってもずっと部室に残って、友だちとご飯食べに行ってたくさん話して。次の日もまた朝から練習して」。
写真:五十嵐史弥(早稲田大学)/撮影:槌谷昭人闘争心あふれる激しいプレースタイルと、率直で繊細な精神性が共存するところが、五十嵐史弥という卓球選手の魅力だ。
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