
結論から言ってしまうと、現在の大学駅伝界では「adidas」が圧倒的なシェアを誇っている。
実際、adidasの公式発表によれば、大学駅伝を走る選手の約3人に1人が「ADIZERO(アディゼロ)」シリーズを着用しており、着用率は2年連続でトップという結果も明らかになっている。
三大大学駅伝を通して、チームや選手の大記録と、歓喜と感動の記憶をもたらしたアディゼロ。
区間賞、区間新、出雲駅伝連覇、大会新記録、総合三連覇。
ふたたび最速を証明したアディゼロが、さらなる高みを目指し進化し続ける。👟 #Adizero
📲 https://t.co/35B3v1ypuR pic.twitter.com/47gq56pisz
— アディダス ジャパン (@adidasJP) January 6, 2026
では、なぜadidasはここまで支持を集めているのか。
その流れはいつから始まったのか。
そして、これから競技を始める人や現役競技者は、どのようなポイントを基準にランニングシューズを選ぶべきなのか。
本稿では、こうした疑問に答えながら、現在の大学駅伝を取り巻くランニングシューズ事情と、「ADIZERO」を始めとする注目モデルを紹介していく。
箱根駅伝で大学生が履いていたランシュー事情と背景
まず、ランニングシューズ業界に激震が走ったのは2019年のことである。
当時、NIKEが「ヴェイパーフライ」などのいわゆる“厚底シューズ”を世に送り出した。これがすべての始まりだった。
カーボンプレートと厚いクッション材の組み合わせによって、従来のシューズとは一線を画す高い反発力を実現。前へと押し出される推進力は多くのランナーにとってまさに“羽”となり、マラソンや駅伝の世界で記録更新が相次いだ。
「同一テクノロジー搭載シューズ着用者が世界最高記録や上位タイムを何度も記録する」という状況が生まれ「NIKEの厚底シューズは競技として本当に公平なのか?」という疑問の声も世界中で噴出した。
これを受け、世界陸連は2020年1月に「ソール厚40mm以下」「カーボンプレートは1枚まで」という新ルールを導入。NIKEによる“厚底革命”をきっかけに、各メーカーが規定内での性能競争へと一斉に舵を切ったが、ここで一気に存在感を高めたのがadidasである。
そもそもadidasは2005年から「日本人を速くするために」という明確な目的のもと、「アディゼロ」シリーズを開発してきた(※1)。近年の駅伝・長距離界において、adidasは単なる流行ブランドではなく、長期的に信頼を積み上げてきた“競技ブランド”として認識されている。
そして流れが決定的に変わったのが2023年。同年9月にadidasは、同社ランニングシューズ史上最軽量となる「ADIZERO ADIOS PRO EVO 1」を発表。
このモデルを履いた選手たちが世界有数のトラック・ロードレースで次々と勝利を重ね、主要レースにおける勝利数は他メーカーを大きく上回った。その結果、「adidasを履けば勝てる」というイメージが競技シーンに浸透し、人気は一気に加速していった。
今回の第102回箱根駅伝でも、adidas着用者は際立って多かった。
優勝した青山学院大学はほぼ全員がadidasを着用。実は同校は2012年にadidasとスポンサー契約を締結し、ユニフォームやギアの公式サプライヤーとなっている。近年の人気によって注目されがちだが、両者の関係はすでに10年以上に及ぶ。さらに近年では、國學院大学・創価大学・大東文化大学などとも契約を結び、adidasは「駅伝プロジェクト」の契約校としてその存在感を拡大。こうした背景の積み重ねにより、2026年現在、大学駅伝界におけるadidasのシェアは圧倒的なものとなっている。
ただし、現在のadidas最上位モデル「ADIZERO ADIOS PRO 4」は定価28,600円。大学生にとって決して安価とは言えない。では、実際に箱根駅伝の選手たちはどのモデルを選んでいたのか。次章から、今大会で目立った着用モデルを具体的に紹介していこう。
adidasが2年連続で着用率1位!今大会で目立った着用モデルを一部紹介
adidas:ADIZERO ADIZERO TAKUMI SEN 11
シン・山の神爆誕。怪物の独壇場。絶対王者の主将たる所以。
黒田朝日がチーム全員の想いを背負い、すべてを覆す圧倒的な走りで5区 #区間新 記録を樹立。
三連覇へ、ただ突き進むのみ。🏃 @Asahii_310 @aogaku_rikujyou #青学駅伝
👟 #Adizero Takumi Sen 11
⌚ 1:07:16#YouGotThis pic.twitter.com/Rsu6rkeAnL— アディダス ジャパン (@adidasJP) January 2, 2026
今回の箱根駅伝で圧倒的な存在感を放ったのは、間違いなく青山学院の黒田朝日であろう。箱根駅伝随一の難所とも言われる「5区」の山登りで、これまでの区間新記録を約2分も縮める1時間7分16秒という脅威的な記録でゴールテープを切った。
そんな彼が履いていたのは「ADIZERO ADIZERO TAKUMI SEN 11(定価:24,200円)」である。ご存じの方も多いかもしれないが、このシューズは「長距離用」でもなく「山登り用」でもない、「ショートレース向け」のシューズで”非厚底モデル”ある。adidas最上位モデル「ADIZERO ADIOS PRO 4」よりは安価であるが、2万円を超えるモデルで若干買うのを躊躇する人もきっと多い。ただ「黒田朝日が着用した」というブランディングによって、最近は人気を博している。もちろん、ショートレース向けのシューズであるため、購入時は慎重に。
ASICS:METASPEEDシリーズ
7区で区間最速を記録。
Shoes:METASPEED EDGE TOKYOあの日々を、強さにかえていけ。#ASICS #アシックス pic.twitter.com/rE23BJb5zM
— ASICS Running JP (@ASICSRunningJP) January 3, 2026
青学の黒田朝日と大接戦を演じた「山の名探偵」こと早稲田大学の工藤慎作や、7区で区間賞を獲得した國學院大学の高山豪起らが着用していたのが、asicsの「METASPEED」シリーズである。
國學院の高山は「METASPEED EDGE TOKYO(定価:29,700円)」を着用し、山の名探偵・工藤は「METASPEED SKY TOKYO(定価:29,700円)」を着用していた。
「本気なら、アシックス」というキャッチコピー通り、価格も”本気”なわけだが、やはり国内メーカーで長年の歴史と研究に裏付けされた品質・履き心地の良さを裏付けに、箱根駅伝でも多くの選手たちが着用した。
On:Cloudboom Strike
【10区】世代最強ランナー、駒澤大・佐藤圭汰の箱根ラストラン… pic.twitter.com/sUN5N3B7Wu
— EKIDEN NEWS (@EKIDEN_News) January 6, 2026
駅伝の伝統校と言えば「駒澤大学」の名前を知る人もおそらく多いだろう。そんな駒澤大学で”世代最強のランナー”とも称され、ケガ明けにも関わらず10区で区間新記録を樹立した佐藤圭汰が着用していたのは「OnのCloudboom Strike(定価:38,500円)」である。彼はOnのトップアスリートチームOACの合宿に参加するなどのサポートを受けているが、Onはまさにこれから大注目のメーカーである。
Onが特徴的なのは、何枚かの生地を繋いで足型を作るのではなく、一枚のメッシュアッパーで足型を作るというもの。公式(※2)には「この製法によって足の過熱を軽減する」と記載されているが、この製法も含めランナーに新感覚のシューズ体験を提供している。価格があまりにも高いため、箱根駅伝では佐藤圭汰を含め数名しか着用を確認できなかったが、実業団の「ニューイヤー駅伝」など大人世代になれば今後ますます着用するランナーが増えていくだろう。
第102回箱根駅伝:区間賞選手たちの着用シューズ
| 区間 | 名前 | 着用モデル |
| 1区 | 青木瑠郁(國學院大) ※区間新 | PUMA:DEVIATE NITRO ELITE 3 |
| 2区 | ヴィクター・キムタイ(城西大)※区間新 | PUMA:FAST-R NITRO ELITE 3 |
| 3区 | 本間颯(中央大) | adidas:ADIZERO ADIOS PRO 4 |
| 4区 | 鈴木琉胤(早稲田大) | adidas:ADIZERO ADIOS PRO EVO 2 |
| 5区 | 黒田朝日(青山学院大) | adidas:ADIZERO ADIZERO TAKUMI SEN 11 |
| 6区 | 小池莉希(創価大) | adidas:ADIZERO ADIOS PRO 4 |
| 7区 | 高山豪起(國學院大) | asics:METASPEED EDGE TOKYO |
| 8区 | 塩出翔太(青山学院大) | adidas:ADIZERO ADIOS PRO EVO 2 |
| 9区 | 佐藤有一(青山学院大) | adidas:ADIZERO ADIOS PRO EVO 2 |
| 10区 | 佐藤圭汰(駒澤大) | On:Cloudboom Strike |
最近のランシューの3大トレンド
当然ながら、上記で紹介した以外にも、NIKEの「VaporFly 4(ヴェイパーフライ)(定価:29,700円)」や昨今人気急上昇中であるPUMAの「DEVIATE ELITE3(定価:29,700円)」なども人気である。ここまで本稿で記載している通り、箱根駅伝を走る選手たちのほとんどが2万円以上のモデルを着用していた。安くても19,800円などのモデルが多く、昨今のランニングシューズ史上は「2万円前後のシューズ」がデフォルトのラインとも言えるだろう。
厚底×高反発モデルが完全主流に
現在のランニングシューズ市場は「厚底×高反発構造」が完全にスタンダードとなっている。カーボンプレートと高反発ミッドソールの組み合わせによって、エネルギーロスを最小限に抑えつつ、ストライドを自然に伸ばす設計が主流だ。
箱根駅伝の出場選手を見ても、ほぼ全員がこの構造を採用したモデルを着用しており、
もはや「厚底かどうか」ではなく、どのメーカーの、どの反発特性を選ぶかという段階に入っている。記録更新を狙う競技者にとって、厚底シューズはもはや“特別な武器”ではなく競技インフラと言っていい存在だ。
軽量・スピード重視設計
同時に、近年のランシュー開発で顕著なのが軽量化とスピード性能の追求である。
各メーカーはミッドソール素材の進化により、厚底化と軽量化という相反する要素を高次元で両立させてきた。
今回の箱根駅伝でも「接地感の鋭さ」「蹴り出しの速さ」「テンポ維持のしやすさ」といったレーススピード直結型の設計を重視したモデルが多く選ばれていた。単にクッションが柔らかいだけのシューズでは、トップレベルの駅伝スピードには対応できない。今のトレンドは“軽く、速く、最後まで落ちない”である。
デザインより「記録×耐久性」
かつてはカラーやデザインで選ばれることも多かったランニングシューズだが、現在の競技シーンでは明確に機能と実用性が最優先となっている。
箱根駅伝の選手たちの足元を見ても、派手さよりも「推進力」「フィット感」「反発の持続性」「レース後半まで性能が落ちない耐久性」といった“記録に直結する要素”が最重視されているのが分かる。競技者にとってシューズはファッションではなく装備であり「速く走れるか」「最後まで信頼できるか」がすべてである。
速さで、つらぬけ。
鍛えた。ひたすら泥くさく。
速ければ、誰も追いつけない。
中央 (@chuo_tf) はその速さを強さに変える。#JustDoIt #中央大学 pic.twitter.com/EQJa5BTaHh— Nike Japan (@nikejapan) January 1, 2026
まとめ|2026年に向けたランシュー選びのポイント
2026年に向けて、ランニングシューズ選びで重要なのは次の3点と言えるだろう。
1:厚底×高反発構造を選ぶこと
2:自分のレーススピードに合った軽量モデルを選ぶこと
3:デザインではなく記録と耐久性を基準に判断すること
箱根駅伝のトップ選手たちが示している通り、現代のランシュー選びは「速くなるための戦略」そのものである。次にシューズを選ぶときは「人気」や「話題性」だけでなく、自分の走りと本当に噛み合う一足かどうかという視点で見てほしい。
また、これから競技を始めたい人や、中学・高校で陸上を本格的に始める人にとっても、現在のランシュー市場は非常に恵まれた環境だと言える。トップ選手が履いているような「厚底×高反発構造」のシューズは、同じモデルではないにしても同様の性能を持つようなシューズが1万円台の価格帯でも展開されている。同じモデルでもセールになっていて安価で買える場合もある。競技を始めたばかりのランナーでも十分に“現代型ランシュー”を体験できるというわけだ。
最初の一足では「クッション性が高い」「足を入れたときの安定感がある」「レースにも練習にも使える万能タイプ」といったポイントを重視すると、失敗が少ないと言われているが、試し履きは必ずして欲しい。記録を本格的に狙う段階になったときに、レーシングモデルへステップアップしていけるように、また走ることが好きになるような「この靴を履いて走りたい」という気持ちを高められれば、それだけでも正解だ。
【参考】
(※1)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000991.000003301.html
(※2)https://www.on.com/ja-jp/products/cloudboom-strike-3me3048/mens/black-white-shoes-3ME30480299
Follow @ssn_supersports



