バスケ世界4大リーグはどこへ向かうのか。「規模」より「役割」で勝負する時代の未来戦略 - 世界プロバスケリーグ比較 vol.7 -

ジョーダンが現役だった頃。世界中がNBAを「一目見たい」と行動し世界的な社会現象になった。大袈裟ではなくジョーダンの存在がNBAを世界に存在感をアピールできる機会となり、そのチャンスをしっかり掴んだため、NBAは現在世界中から愛されるプロバスケットボールのリーグになった。

NBAは今後、さらなる世界進出を目指してよりグローバル市場を開拓していく。
このような方針を、それぞれのリーグはどのように考えているのか。「NBA(アメリカ)」「NBL(オーストラリア)」「ユーロリーグ(ヨーロッパ)」「Bリーグ(日本)」のそれぞれのリーグが目指す先とは。

前回記事:
同じようで全然違う!?プロバスケリーグを動かす人と組織 - 世界プロバスケリーグ比較 vol.6.5 -

【前提】

ジョーダンがルーキーだった1984年頃。世界でバスケットボールはそこまで盛んなスポーツとは言えなかった。当然ながらNBAは存在していたが、NBLは今ほどの存在感はなく国内ローカルリーグであり、ユーロも今の形ではなく国ごとである。Bリーグに関しては前身のさらに前身である「日本リーグ」で企業実業団のトップリーグであった。

要するにスタートラインが違う。日本が企業実業団リーグだった時にアメリカはプロバスケでマネタイズができていたし、NBLやユーロは国ごとの小規模リーグだった。NBAが世界的な広がりを見せ、NBAが名実ともに世界最高のプロバスケリーグであると言われる中で、それぞれのリーグがどのような立ち位置で、どのように狙いを定めているかを次章から伝えていきたい。

結論からお伝えすると、今回比較検討している4つのリーグはそれぞれがただ単純に規模を拡大していくのではなく、役割を全うしていく時代に突入する。

リーグ 現状 成長の方向性 未来像
NBA(アメリカ) 世界最大のスポーツブランド エンタメ化・国際化
“スポーツを超える文化”へ
Bリーグ(日本) 地域と共に歩む日本型モデル コミュニティ深化
地域の誇りの中心地
NBL(オーストラリア) NBA志向の若手が集う育成リーグ 世界のハブ化
NBAと世界をつなぐ存在
ユーロリーグ(欧州) 世界2位の競技レベル クラブ文化のプレミアム化
世界最高の熱狂体験

 

NBA:世界エンタメの中心へ ― 「スポーツを超える存在」へ進化するリーグ

世界のプロバスケリーグをリードする絶対的な存在で、同時に音楽やファッション、ゲーム、映像などエンタメと融合しながら文化を創り上げているため、グローバルカルチャーの中心にあるとも言える。
上記に加え、Amazonの放映権契約により、今シーズンから全世界200カ国以上に配信されることが決定しており、国際展開はますます拡大していくはず。さらに強みとしているデジタル戦略においても、AIの活用や新たな視聴体験の提供に向けたチャレンジなど、他リーグが5年後・10年後に実現するであろうことを、現在取り組んでいる。

NBAが目指しているのはただプロバスケリーグを世界に広げたいという話ではなく、バスケ文化を中心にした巨大なエンタメ経済圏を築きたいと考えていて、実際には以下の動きを行っている。

NBA APPの“超パーソナライズ”化(GM体験・選手AI分身・データ閲覧)
Amazonとの放映権契約などによる国際リーチ拡大
NBA IDで世界共通のファンデータベース整備
インシーズントーナメント(NBA CUP)で試合の“イベント化”

“スポーツを見る”のではなく、”NBA文化に参加する”という世界。スポーツ×音楽×ファッション×デジタルの融合体として、プロバスケリーグやスポーツビジネスの枠を超えて、今後も成長を続けていく。
前回別企画の記事で、チームのサラリーキャップが1984年は$3.6M(約5.4億円)に対し、現在の2025年では$154.6M(約232億円)まで飛躍していると紹介したが、選手契約に使って良いお金がこの額であるため、チーム全体を運営していくことを考えると、ざっくり400-500億円程度は必要であろう。それが30チームあるのだから、リーグ全体で考えれば低く見積もっても1兆円規模はゆうに超える。
実に40年余りで約40倍まで成長していることと、最高年俸選手であるカリーが「$59.6M(約90億円)」という、年俸100億円を突破しそうな金額であることも踏まえると、グローバル化が進めば進むほどNBA事業は拡大し続けていくだろう。

関連記事:
ジョーダン黄金時代からの変化〜年俸とサラリーキャップ〜【NBA講座vol.17-1】

Bリーグ:地域と社会の中心に ― 日本型スポーツエコシステムの構築

Bリーグは「地域密着」を最も強みにしており、観客構成はファミリー層・地域サポーターが中心。SNSでの“選手の親近感”は世界的にもユニークとされており、クラブ単位のコミュニティ形成は非常に強固だ。
「地域経済 × バスケ × エンタメ」が循環する日本型モデルの確立。欧米のように巨大化するというより、地域社会との結びつきを深化させていく方向で、具体的な取り組みは以下の通り。

B.革新(新アリーナ基準、新経営モデル)
アリーナ開発と地域活性化をセットで進める
SNS発信強化(YouTube・X中心の“親しみづくり”)
教育・福祉・地域イベントなど、社会との接点を増やす

地域の誇りであり文化を作る中心地として、Bリーグや所属チームが存在する。地域とともに成長する”コミュニティ型”のスポーツビジネスを完成させようと日々尽力しており、その結果2024-25シーズンのクラブ全体の売上が過去最高の552億4,000万円まで登りつめた(※1)。

当初Bリーグは「2028年までに500億円」という目標を掲げていたが、3年も早く到達したことはリーグがどれだけ超スピードで進化し続けているかを証明する結果にもなった。
2026-27シーズンからは「B.革新」の方針の元「B.LEAGUE PREMIER」というリーグ名称になりさまざまな改変が行われるが、1,000億円、1兆円規模になるのも、彼らの予想より早く達成できるかもしれない。それほどまでに、Bリーグは成長を続けている。

NBL:世界バスケの“ハブ”へ ― NBAと世界をつなぐ中継点

NBLは規模こそ大きくないが、急激に存在感を高めている。特にNBAへの登竜門「Next Stars」の成功で、“NBAに行きたい若手が選ぶリーグ”という明確なブランドを確立した。
世界の育成・発信の中心地になるという方向にしてからは、世界各国から「NBAに行く前に行っておくべき場所」という認知がされ、近年のラメロ・ボール(シャーロット・ホーネッツ)やジョシュ・ギディー(シカゴ・ブルズ)などNBL出身でNBAでスター的に活躍している選手が増えていることも相まって、その存在感は世界的に拡大して行っている。
まさにリーグの大きさで勝負するのではなく、“世界レベルの選手が交差する場所”としての価値最大化を狙い、以下の取り組みを強化している。

Next Starsの強化(世界の有望株が集まる)
アジア展開の加速(日本・中国・東南アジアと連携)
SNS・ドキュメントでのブランディング
ビジネス系オーナーが多く、経営判断が速い

そもそも、NBLが「NBAの登竜門」という位置付けを最初から計画していたわけではない。彼らはあくまで国内リーグを運営することに注力していたが、生々しいが「収入源の確保」のためにこの立ち位置を受け入れ実行したことが背景にある。2014年にほぼ崩壊していた状態から回復するためには必要なプロセスと考えた結果ではあるが、これが想定以上にハマっていることも事実である。

NBAとの提携と選手輩出の実績が、国際的な認知・注目を呼ぶ。これによって、スポンサー、放映権、ファン層が拡大する可能性があるーー。そんな未来を見据えていたが、今まさに実現している。結果、現在は“NBAとアジア市場をつなぐ、世界の交差点”とも言える存在だ。リーグ自体の規模拡大より、世界のバスケ産業の中で“必要不可欠な役割を持つ存在”へ着実に進化していく。

ユーロリーグ:クラブカルチャーの象徴 ― 熱狂を極めるリーグへ

競技レベルはほぼ“世界2位”。サッカー文化と強く結びついた「クラブ文化」が強く、熱狂度は世界で最も高いバスケリーグと言われる。これまでの記事でもいくつかユーロリーグの現場の熱狂は伝えてきたが、一方で国を跨ぐリーグゆえに、地域やチームごとの差の広がりや、経営・政治・ライツの複雑性が大きい。
今後はある種、そのような地域ごとの差も魅力と捉え、熱狂・伝統・文化という“欧州らしさ”を磨いたプレミアムなリーグ化を目指していく方針で、大前提としてNBAとは競わない。“欧州だからこそ提供できる価値”に集中する。

アリーナのプレミアム化・改修(1万人級の熱量を維持)
SNSやドキュメンタリーによるクラブ文化の発信
企業スポーツではなく「市民文化」としての価値強化
競技フォーマット改善による国際大会らしい統一感の追求

現在NBAでも超スーパースターの1人であるルカ・ドンチッチを始め、ヨーロッパ出身のNBA選手は昨今非常に増えている。その中でも、過去ユーロリーグに所属して活躍していた選手も数多い。より競技レベルの高い環境を目指すのであればNBAへの挑戦もユーロは積極的に後押ししているものの、NBAとは違う“世界で最も熱いクラブスポーツ”の完成形を目指し、規模ではなく、文化と熱狂で世界価値を作り続けるリーグとして今後もNBAやBリーグなどと違った「応援の形」や「熱狂」を創造していくに違いない。

 

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まとめ

世界バスケ4大リーグは、ビジネスの市場規模だけ見ればNBAが圧倒的に大きいものの、各国や大陸で見た時の存在感は他リーグも年々増してきている。バスケットボールという競技は今まさに注目を集め伸びている産業であるからこそ、世界各国で今後より大きくなっていくだろう。

しかしながら、バスケ最高峰のNBAでも到底敵わないと言われているNFLやMLBといった「アメリカ4大スポーツ」のビジネス規模は本当に大きい。上には上がいるわけだが、次回以降は一旦バスケ軸から離れ、アメリカの4大スポーツ軸で、それぞれのビジネスや特性について紹介していきたい。

(※1)https://basketballking.jp/news/japan/20241119/513618.html

今シリーズのまとめ

プロバスケ4大リーグ比較記事:

NBA・NBL・ユーロリーグ・Bリーグ……世界の4大リーグ構造 -プロバスケリーグ比較 vol.1 -

世界でバスケがより人気コンテンツになるためには?それぞれのリーグが目指す方向 -世界プロバスケリーグ比較 vol.2-

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