「ずっと青春できるチームを」AStream札幌・太田一希さんが語る“こじらせ卓球愛”の結晶

札幌市を拠点に活動する社会人卓球チーム「AStream札幌」。

中学時代は万年補欠、高校でも結果を出せず、それでも卓球を愛し続けた太田一希さんが、2018年に立ち上げたこのチームは、現在30人以上のメンバーが在籍し、青春の延長のような温かい雰囲気のなかで、真剣な練習と仲間との時間を両立させている。

今回は、太田さんの卓球との出会いからチームの成り立ち、チーム運営のこだわり、そして今後の展望までを伺った。

中学時代の“こじらせ”から始まった卓球人生

――まずは太田さんの卓球歴から教えてください。
太田一希さん:卓球を始めたのは中学からです。仲の良かった友人が卓球部に入ると言うので、つられて入部しました。

ただ、僕は団体メンバーに入れず、3年間ずっと補欠でした。

――それでも高校に行って卓球を続けたのはなぜでしょう?
太田一希さん:負けっぱなしで終わるのが悔しくて、高校でも卓球を続けました。進学先の工業高校ではいきなり2番手になって団体戦にも出場できたんですが、全然勝てなくて。

公式戦での勝ち方も知らず、1年くらい団体戦を逃げてた時期もあります(笑)。

――そこから徐々に楽しさを感じられるようになったのはいつぐらいになるのでしょうか?
太田一希さん:高校の後半になって再び試合に出られるようになってから、少しずつ勝てるようになって、ようやく「卓球って楽しいな」と思えるようになりました。

大きな成績はありませんが、好きで続けてきたという感じですね。

立ち上げのきっかけは「馬が合わなかった」

写真:AStream札幌での卓球以外の様子/提供:AStream札幌
写真:AStream札幌での卓球以外の様子/提供:AStream札幌

――AStream札幌を立ち上げた経緯を教えてください。
太田一希さん:高校卒業後は大学には進学せず、社会人になって1年ほど別のチームに所属していました。ただ、そのチームが肌に合わなくて…。

それで「自分でやってみよう」と思い、2018年にAStream札幌を立ち上げました。最初は2人でのスタートでした。

――チーム名の由来も教えてください。
太田一希さん:“明日を取る=AStream(アストリーム)”という造語です。造語ではありますが、「明日に向かって流れを起こす」ようなイメージを込めて名付けました。

写真:AStream札幌での卓球以外の様子/提供:AStream札幌
写真:AStream札幌での卓球以外の様子/提供:AStream札幌

――立ち上げ当初から人は集まったんでしょうか?
太田一希さん:いえ、知り合いもほぼおらず、全部SNSでの募集でした。インスタなどを活用して、少しずつ仲間が集まっていきました。

今もそのスタイルは変わらず、新メンバーとの出会いはほぼネット経由です。

仲間と過ごす“青春”がモチベーション

写真:クラブ内での飲み会/提供:AStream札幌
写真:クラブ内での飲み会/提供:AStream札幌

――今のチームの雰囲気を教えてください。
太田一希さん:めちゃくちゃ仲がいいです。練習中は真剣に卓球の話をしますが、練習以外はふざけたり、飲みに行ったり、遊びに行ったり。集まれば延々と喋ってます(笑)。

本当に「ずっと青春してる」って感じですね(笑)。

――練習頻度はどれくらいですか?
太田一希さん:週2〜3回です。社会人なので、来られるタイミングは人それぞれですね。

週1や週2の人もいますし、練習の自由度は高いです。

――普段はどんな練習をされているんですか?
太田一希さん:ガチガチの課題練習です。遊びの延長でやっているように見えるかもしれませんが、やるときは本気でやっています。そこはメリハリを大事にしています。

写真:AStream札幌女子/提供:AStream札幌
写真:AStream札幌女子/提供:AStream札幌

――メンバーの男女比はどのくらいなんでしょうか?
太田一希さん:男女比は3:1〜4:1くらいで、全体で30名ほどです。レベル感は中級者が中心で、強豪校出身というより、公立校などで「卓球が好きで続けてきた」という人たちが多いですね。

「逃げ場」としての卓球クラブ

写真:加盟団大会優勝/提供:AStream札幌
写真:加盟団大会優勝/提供:AStream札幌

――チームをやっていて嬉しかった瞬間はありますか?
太田一希さん:やっぱりメンバーから「アストリームに入ってよかった」と言われたときですね。飲みの席なんかでポロッと言われると「本音だな」って感じますし、すごく嬉しいです。
――卓球が“逃げ場”になるという話もされていましたね。
太田一希さん:そうなんです。仕事だけの生活に疲れてしまった人が、ふと卓球を通じて新しいコミュニティに出会える。

アストリームがそういう心の拠り所になっていたら嬉しいです。

写真:AStream札幌での卓球以外の様子/提供:AStream札幌
写真:AStream札幌での卓球以外の様子/提供:AStream札幌

――印象に残っている大会やエピソードはありますか?
太田一希さん:市のリーグ戦に最初は一番下のクラスから出て、何年もかけて少しずつ昇格していって、ようやく「中リーグ」まで上がれたときは嬉しかったですね。

昇格の条件が「全勝優勝」なので、1歩ずつしか進めないんです。

――それは大変ですね。逆に大変だったことはありますか?
太田一希さん:実は、あまり「大変だった」と感じたことがないんです。人が少ない時期も楽しかったし、離れていくメンバーがいても、また新しい仲間が入ってくる。

もちろん長く続けてくれたメンバーとの別れは辛いですけど、それもまた人生かなと。

目指すのは「クラブ選手権」そして“ずっと青春”の継続

写真:クラブ選手権の様子/提供:AStream札幌
写真:クラブ選手権の様子/提供:AStream札幌

――今後の目標はありますか?
太田一希さん:今は年に2回ほど自主大会を開催しているのですが、これをもっと大きくしていきたいです。

中級者以下の人でも楽しめるような敷居の低い大会にして、札幌だけでなく道内各地の選手にも参加してもらえるような大会にしたいですね。

写真:自主大会の様子/提供:AStream札幌
写真:自主大会の様子/提供:AStream札幌

――チームとしての目標や展望はありますか?
太田一希さん:クラブ選手権に出場して全国を目指すことです。

去年初めて参加して、今年は、代表決定戦まで進むことができて、全国まであと一歩、二歩のところだったので、リベンジしたいですね。

あとは、いつかチームを離れた人が、30代・40代になっても戻ってこられる場所。練習後は一緒にふざけて、でもやる時はやる。そんな“ずっと青春できるチーム”であり続けたいです。

取材・文:山下大志