
感覚、センスを可視化する AIRFITSWIM(エアフィットスイム)の現場活用法
写真:AIRFITSWIM(エアフィットスイム)アプリ/提供:AIRFIT
いま、国内外で話題の水泳界の動作解析デバイス「AIRFITSWIM(エアフィットスイム)」。
これまで2回にわたって、そのスポーツテックの性能や開発経緯を、開発したAIRFIT(株式会社プロキダイ)に聞いてきたが、第3回の今回は実際に現場でどのような使われ方をされているのか、さらに深堀りして聞いてみた。
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胸のセンサーでわかる加速・減速
── 単純な疑問なんですが、平泳ぎの手がどのタイミングで水に入っているかが、胸に貼ったセンサーでわかるんですか?
柴田:水泳は、水中で、なんの支えもない状態で泳いでいるので、少しの衝撃だけでも身体に取り付けたセンサーに伝わってくるんですよ。腕や身体が入水する衝撃やキックの衝撃等もすべて計測できます。
── 繊細なセンサーなんですね。
柴田:例えば、平泳ぎの場合だと一般的に足を引き付けるところで大きく減速が発生していることはよく知られています。
しかし、その減速している時間や度合いは今まで数値化することができなかったのですが、「AIRFITSWIM」は、減速している時間やどの程度減速しているのかが分かるので、課題ポイントの優先順位を明確化できるメリットがあります。
── それをどう指導現場で活かすんですか。
柴田:加速度が大きく変化したタイミングで身体の動きを計測している波形がどの様に動いているかを確認し、大きく減速が出た原因が、どの動作のタイミングなのかを選手とコーチに伝え泳ぎの改善を行ったり、試合前には過去の自分の泳ぎと比較して、プルやキックの加速度の曲線が良いのか悪いかの指標にも使っています。
── なるほど。

写真:AIRFITSWIM(エアフィットスイム)での解析/提供:AIRFIT
柴田: キックだけでも、多くのことがわかります。
例えば、波形で、谷が鬼の2つの角みたいにチョンチョンってなっていますが、これは蹴っている間に水が逃げてるんですよ。
最初に山がピンと立ってるところ、ここは蹴り出しで一番水がつかめていてキックの力が水に伝わってるんですけど、蹴り出す途中で水がちょっと逃げて、また最後のここで水をつかみに行っていることがわかります。
じゃあ、この中間地点の水の逃げているところを意識してちょっと蹴り方変えて泳いでみて、この波形の谷が少なくなるのかを見ます。

写真:波形の谷の違い/提供:AIRFIT
水は早くかけばよいわけではない
── 水をつかまえられてるかどうかも波形でわかるのは面白いですね。
柴田: 水の特性も、早くかけばつかまえられるかというと違うんですよ。その速度に合ったスピードで水をかかないと逃げてしまうので、その身体の速度と水をかく速度の相関なども計測できるうちのセンサーは合ってるなと思います。
あと、無関係に見えるデータも、意外に加速・減速に相関関係があったりしますね。
上下動の波形を見てみると、平泳ぎは重心が後ろに行ったり前に行ったりするんですが、速い選手はあまり後ろに行かない。
重心が“抜けない”というか、前に前に重心がずっと保たれていることがわかります。
── これまで“感覚”や“センス”という言葉で片付けられがちだった要素を、視覚的に理解して正しい反復練習ができそうですね。
柴田: まさにそのとおりです。
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