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ゴルフスイングはボディターンじゃない?今どきは手打ち? 正解はバランスにあり!

1.ボディターンとリストターンって何?

ゴルフスイングにおいて、インパクトでクラブをリリース(解放)するスタイルには、大きく分けて2つのアプローチがあるとされています。

それが、体の回転を重視する「ボディターン」と手首と、腕の動きを重視する「リストターン」です。

ボディターンとリストターンの違い

ボディターンは、体の回転を主導にするスイングスタイルです。体幹や腰の回転を使うことで、フェースを返す動きが安定するためショットの方向性を出しやすいのが特徴です。

ただし、柔軟性や体幹が弱いと、ボディターンを効果的に使いこなせないことも。また、スイング中に体を積極的に回転するため、やり過ぎると腕が体から離れやすくなり、インパクトで腕の振りが遅れて詰まる「振り遅れ」のミスが起こりやすいデメリットもあります。

一方で、リストターンは前腕の回旋(ドアノブを回す動き)と手首のスナップ(フリスビーを投げる動き)を使ったスイングスタイルです。瞬間的にヘッドを加速させて飛距離を出しやすいメリットがあります。

しかし、フェースの開閉が大きく変動するため、タイミングがズレると、ミスショットにつながるリスクもあります。また、手や腕の力に頼りすぎると、総合的なパワー不足に陥ることも。

ゴルファーによって「主導タイプ」がある

ゴルファーによっては、それぞれのスイングの特徴や得意なショットによって、ボディターンかリストターンのどちらかが顕著になることがあります。

たとえば、ボディターン派は、柔軟性が高く体全体を使うスイングを得意とする人が多く、特にフェードを好むゴルファーに多いようです。代表的なプロには、ダスティン・ジョンソン(米国)やウィル・ザラトリス(米国)、河本力などがいます。また、野球経験者は体の回転を大きく使う動きに慣れているため、ボディターンが強く出やすいといわれています。

一方で、リストターン派は、パワーを重視するスイングや手先の繊細なコントロールが得意なゴルファーが多く、ドロー系のショットを持ち球とするゴルファーに多い傾向があります。フィル・ミケルソン(米国)、ローリー・マキロイ(北アイルランド)がその代表です。リストターンは、テニスなど手首を使うスポーツの経験者に多いようです。

そして、どちらの特徴も持たない、ボディターンとリストターンのバランスが取れているスイングを持つゴルファーもいます。ネリー・コルダ(米国)やルドビグ・オーバーグ(スウェーデン)がその例です。

自分がどちらの主導タイプかの調べ方は、後ほど詳しく説明します。

ボディターンとリストターンは補完的な関係にある

ゴルファーによって主導タイプがあるものの、どちらか一方のスタイルが優れているわけではなく、ボディターンとリストターンは補完的な関係にあります。

たとえば、ボディターンを主に使うゴルファーであっても、適切なタイミングでリストターンを使うことで、スイング全体のバランスが良くなり、飛距離と安定性が増します。

また、タイガー・ウッズのように、通常のショットではリストターンを多く用いながらも、フェードショットではリストターンを抑えるといったように、ショットごとに異なるスイングテクニックを使い分けるプロもいます。

重要なのは、自分のスイングスタイルの特性を理解し、狙いたいショットに応じて、ボディターンとリストターンを適切に組み合わせることではないでしょうか。

例えば、ボディターン派の河本結は、体を素早く回転させつつ、手元や腕が体から離れないように注意しながら、クラブが正しいポジションに入ってくるかを常に確認しているのだそうです。

詳しい解説は「超速ボディターンで力から強く“空中のイメージ”沸かせる河本結は米国でもおもしろい【辻にぃスイング見聞】」をご覧ください。

2.「手打ちは悪い」はもう古い?

かつては「手打ち」がスイングの悪癖とされていたので、手を使うことを避けるあまり、腕をまったく振れていないアマチュアが今でも多くいます。しかし、今どきのスイングは適切に「手を使う」ことこそが、むしろ重要だという考え方もあるのです。

なぜ手打ちは悪いとされてきたのか?

これまで、手打ちは前述したようなミスショットや、ボールが左右に曲がる原因とされていたため、ボディターンが推奨されていました。

足腰に比べ、体の中で器用に動かせてしまうのが手や腕。アマチュアゴルファーは、力いっぱいボールを打とうとする際に、どうしても手や腕に頼りがちです。こうなると、クラブと体の動きが連動しない「バラバラなスイング」になり、インパクトで手首を過剰に動かす打ち損じを招いてしまいます。

また、ボールをずっと見続けようとしたり、右膝を固定してバックスイングすることで体の回転が制限され、結果として手打ちに陥りやすい状況が生まれていたといいます。このような理由から、かつては体を使う「ボディターン」が推奨されていました。

今どきの良い手打ちと悪い手打ちについて知りたい人は、「球が捕まらない原因はボディターン⁉︎ 藤田さいきが考える“良い手打ち”と“悪い手打ち”の違いとは」をご覧ください。

近年、腕や手首の動きの重要性が改めて注目されている

そんな中、最近では、体とクラブをつなぐ唯一の接点である「手」をアマチュアこそうまく使うべきだ、という考えが広まっているといいます。

これには、手の動きに特化した近年のスイング解析技術(HackMotionやJacobs 3Dなど)の研究が大きく貢献しており、スイング中の手首の曲がる方向や角度、回旋する速度、そしてグリップにかかる力などを計測できるようになったためです。

その結果、ヘッドスピードを加速させ、スイング全体のパフォーマンスを向上させるためには、手の動きを適切に使うことが、むしろ重要であるという考えが定着してきました。

昔からレジェンドたちはバランスを重視していた

タイガー・ウッズは、1996年にプロ転向した当初、「オーレ!スイング」というダウンスイングで手元が詰まる問題に直面していました。これは、ダウンスイングでボディターンが過剰に先行すると腕が振り遅れてしまい、インパクトで手元が詰まるため、リストターンを使ってフェースを無理にスクエアにしようとするものです。

タイミングがズレると、右にプッシュしたり、逆に左に引っかけたりするため、タイガー自身も「うまくいくときもあれば、そうでないときもあり、ボールがどこへ飛ぶかわからなくなることもあった」と語っていました。

当時タイガーのコーチをしていたブッチ・ハーモンは、この問題を解決するために、ダウンスイングの最初の動きでボディターンを抑え、左への体重移動と腕を体の前に下ろすことを徹底的に教えました。

このスイング改造が功を奏し、タイガーは2000年から2001年にかけて、4つのメジャートーナメントを連続で制覇した「タイガースラム」を果たしたといわれています。

同じように、ゴルフ界のレジェンドの一人であるベン・ホーガンは、若いころに強いフックに悩まされていました。この原因は、過剰なリストターンにありましたが、ホーガンは体幹を主導とするボディターンを取り入れ、リストの動きを最小限に抑えることでスイング全体のバランスを改善し、精度の高いフェードを得意とするようになったんだといいます。(参考書籍: The Modern Fundamentals of Golf)

この二人に共通することは、ショットの悩みとその原因を理解し、問題を解決する手段としてリストターンやボディターンを調整していた点です。

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