イ・ボミは「人を幸せにする力がある」“涙”と“笑顔”が交差したラストゲーム【2023年涙のワケ】
国内男女ツアーは2023年のシーズンが終了。男子は中島啓太が賞金王を戴冠し、女子は山下美夢有が2年連続で女王の座についた。そのなかでは、今年も“初優勝”、“復活V”などの見出しが踊り、印象的なシーンの数々が人々の心を打った。そこで選手たちが流した『涙』にスポットライトを当て、シーズンを振り返ってみよう。
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10月の「NOBUTA GROUPマスターズGCレディース」では、2015、16年の賞金女王に輝き、日本女子ツアーの一時代を築いたイ・ボミ(韓国)が“ラストゲーム”を迎えていた。そしてそれは涙と笑顔にあふれる、忘れられない1週間になった。
その愛らしいルックスや人当たりの良い性格で、日本のファンや選手ら皆から愛されたボミ。予選通過が厳しい状況で迎えた2日目には、詰めかけたピンクのオリジナルグッズで染まった大ギャラリーを見て、スタート前からこみ上げるものを抑えることができなかった。
ラウンド後には、クラブハウス内で引退セレモニーが行われ、選手、関係者はピンクのオリジナルTシャツを着用。サプライズで次々と花束を手渡され、数々のねぎらいの言葉を受け取った。「感動した。感謝以上の言葉があれば渡したい」。再び涙がこぼれる。
そして、忘れてはならないのが、ボミが全幅の信頼を置いた清水重憲キャディの存在。11年前の2012年、2人はこの大会で初タッグを組んだ。13年の国内メジャー「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」ではこのコンビで初優勝を挙げ、清水キャディはうれし涙を流した。
その後、2度の賞金女王をはじめ、二人で17勝。「清水キャディのおかげ」という言葉が何度も口からでるほどの名タッグは、全盛期を共に過ごした。そして最後は、黄金コンビが約4年ぶりに復活。その勇姿を、大ギャラリーは目に焼きつけた。
「(清水キャディは)“家族“みたいな存在ですね。久しぶりに会っても距離感はなかった。調子が悪くても、いいイメージを作ってくれて、クラブの選択、グリーンのライン、全部私が楽しくできるように教えてもらいました。おかげさまで最後のゴルフが楽しかったです」
引退セレモニーには、清水キャディも参加。ピンクのTシャツ姿で花束を持って現れ、唯一無二の相棒の引退を前に感極まって“男泣き”を見せる。大粒の涙を流す2人は、ハグをし、感謝の言葉を伝えあった
一方、最終日の朝には10番ティに現れ、普段から親交がある上田桃子のティオフで“ウグイス嬢“を務めた。「続いてのティオフはツアー通算17勝をマークしています。今大会の2017年のチャンピオンです。怖く見えるけど、めっちゃ優しいお姉さんです。あっ、ZOZO所属、上田桃子!」とアドリブをきかせたアナウンスをし、周囲の笑いを誘った。
「めちゃくちゃ楽しかった。私の声でリズムを崩しちゃったらどうしようとか考えたけど、みんながすごく喜んでくれて、いいティショットを打ってくれて、いい思い出になりました」とボミは大満足の様子。
爆笑のアナウンスを受けた上田も「あのかわいい声でアナウンスしてくれたので、すごいうれしかったですし、やっぱりボミって、“人を幸せにする力“があるなって思いました。」とほっこり。二人の友情関係はこれからも続いていく。
そして、表彰式後に行われた引退セレモニーでは、夫のイ・ワンさんと共に深夜1時半まで考えたというスピーチを披露した。
「プロゴルファー、イ・ボミは私と皆様が一緒につくりあげました。人間イ・ボミは皆様とつくりあげたプロゴルファー、イ・ボミをこの先ずっと忘れません」
先日行われたJPGAアワードで『ベストコメント賞』を受賞したこのスピーチは、多くのファンの心を打った。これで、日本ツアーから引退となった“スマイル・キャンディ”だが、再び日本のファンの前に戻り、とびっきりの笑顔を振りまいてくれるだろう。(文・神吉孝昌)
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