カットマンを目指す3つのメリットとは?|頭で勝つ!卓球戦術
卓球ライター若槻軸足がお送りする「頭で勝つ!卓球戦術」。
前回の記事では戦型変更についてのお話をした。多くの選手は裏ソフトのドライブ型から卓球をはじめ、色々なきっかけから適性に応じて戦型を変えていく、という内容であった。がしかしそのなかでは触れなかった戦型がある。それがカットマンである。
両面裏ソフトか、フォア面あるいはバック面が表ソフトか、といったスタイルの違いはあくまでも「攻撃型」という大きなくくりの範囲内での話である。つまりカットマンは攻撃型とは全く別物のスタイルであるので、用具から打法に至るまで大きく違う。
だが遥か昔から存在するプレースタイルであり、いつの時代も常に一定の割合で活躍している。そしてカットマンを攻略するには、普段攻撃選手同士でやる練習とは全く違った訓練が自ずと必要になってくる。
写真:村松雄斗(鹿児島県スポーツ協会)/撮影:ラリーズ編集部
何が言いたいかというとつまり、チーム内に一人はカットマンがいた方がいいということだ。なのでもしカットマンになりたいという選手が居たら、最大の賛辞を送り全力でサポートすべきである。
だがその一方で、カットマンの試練とも言えるべきことが多数あることも同時に知る必要がある。中途半端な気持ちでカットに転向すると、痛い目を見ることになるだろう。
そうならないようしっかりとした覚悟を持つ為にも、今回はカットマンとしてプレーをするにあたってのメリットとデメリットを考えたい。
カットマンを目指す3つのメリット
1.注目される
まずカットマンは試合会場で目立つ。これは紛れもない事実だ。
要因は3つ、まず他の攻撃選手と一線を画すスタイルであること。卓球台から離れた中陣から後陣がプレー領域となるので、ひと目みただけで「あの台はカットマンの試合だ」と分かる。
そしてそもそもカットマンの数が少ないので、会場内でもすぐ見つけられる。文字通り「華のある」プレーができるのがカットマンの醍醐味と言えるだろう。
写真:御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部
そして3つめの要因としては、ラリーが長く続くということだ。攻撃マン同士のラリーよりもカットマンの試合の方が、1本のラリーが長くなることは読者も納得できるであろう。
例えば試合会場で、全然知らない選手であっても目の前で手に汗握る長いラリーを繰り広げているとなれば、ふと足を止めて見入ってしまうという経験は誰しもあるはずだ。
そしてラリーが長いということは試合時間も長いので、当然人に観てもらえる時間も長くなる。多くの人の注目を浴びたい、目立ちたいという性格の選手にとっては、カットマンはうってつけだ。“目立ちたい”と聞くといささか不順な動機のように感じるかもしれないが、至極まっとうな動機であり、立派なモチベーションの要因となりうるだろう。
2.勝ちやすい
カットマンは勝ちやすい、と言い切ってしまうと語弊がある。他の選手よりも勝ちやすい状況が生まれる可能性が高い、というべきか。
たとえば、まだ競技経験が浅い選手に対しては、カット打ちのやり方や戦術といったものが身についておらず、それだけで勝ててしまう、ということは往々にしてあるだろう。
写真:佐藤瞳(ミキハウス)/撮影:ラリーズ編集部
それに経験が多くとも、カット打ちを苦手としている選手も少なくない。自分から強いボールを打ち込んでいくのではなく、相手のボールを利用したブロックやカウンターを主体とするスタイルの選手などは、どうしてもカットを打ち抜くのは難しかったりする。
そのように選手間の相性によっては実力が上の選手であろうとも勝てる算段が生まれてくるのだ。
3.強い選手と練習できる
そしてもうひとつのメリットとして、強い選手と練習がしやすいということがいえる。例えば部活動では、2年生と3年生のエースの先輩とが練習をする機会はそう多くないだろう。
しかしカットマンというだけで、先輩の方から練習相手に指名されるということが往々にしてある。次のトーナメントでカットマンと当たることが分かっている、あるいは純粋にカット打ちの技術を高めたい、等理由は色々とあるだろうが、それだけ希少性が高い存在だということだ。
写真:菊地慎人(中央大)/撮影:ラリーズ編集部
そしてやはり自身の実力よりも上の選手と多く練習をすることが、上達への近道であるというのは間違いない。その機会が他の選手よりも多いということは、非常に大きなメリットと言えるだろう。
まとめ
誰もが一度は憧れを抱いたことがあるであろうスタイル。はるか後方から糸を紡ぐかのように、綺麗な軌道を描き何本も返球し、華麗な足さばきでコートを縦横無尽に駆け回り、隙を見つけては鮮やかに打ち抜く。
まさしく蝶のように舞い蜂のように射すを体現した戦型だ。だがしかし、羨望の眼差しを浴びるほどになるまでには、並大抵ではない努力と苦労が絶対に必要である。
それらカットマンに立ちはだかる試練については、次回の記事でお伝えする。
文:若槻軸足(卓球ライター)
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