【第2回】ソフトテニスからテニスに転向しなかった理由を聞いてみた

余計なお世話であることは承知の上で、タイトルの質問を聞いてみた。

現在、橿原市のスポーツ量販店ラケット売り場担当の三野さんは、小学2年生の時からソフトテニスを始め、中学・高校・大学、そして現在も社会人チームで競技を続けている。

おそらく高校以降、硬式テニスに転向する機会があったはずだが、ずっとソフトテニスを続けてきた理由を聞いてみると、競技の魅力が浮かび上がってきたのだった。

“振り切れる”ソフトテニス

── 無礼を承知でお聞きしますが、20年以上の競技歴の中でソフトテニスからテニスに転向しなかったのはなぜでしょうか。

三野: よく聞かれます(笑)。高校のときも先生に「ソフトテニスのままでいいのか」と言われました。

大学の授業などで何度か硬式テニスもしましたが、私はソフトテニスの方が楽しかったので、マイナースポーツと言われても、私は別に迷うことなく、ずっと続けています。

── 硬式テニスになくて、ソフトテニスにあるものって何だと思いますか。

三野: あんまり考えたことないので、難しいですね(笑)。自分にとっては“振り切れる”という部分は大きいかもしれません。もちろん硬式テニスも振り切れる方はいますが、ソフトテニスのほうが楽に振り切る心地よさを感じやすいと思います。

あと、自分のポジションは前衛なので後衛の方はわからないんですが、テニスはサービスラインに立つことが多い印象で、ソフトテニスの前衛は、もっとネット前にポジションを取ります。

ボレーはもちろん、ソフトテニスの前衛はフェイントを入れたり、ちょっとした動きで相手との駆け引きの要素が大きく、私はそこはプレーしていて楽しいですね。ポイントの取り方がたくさんあるというか。

── なるほど。

三野: あとは、用具もテニスと比べるとまだ安価なので、気軽に始められるのも良いところかもしれません。

「教えてくれる人がいない」ソフトテニス部活生の悩み

── でもテニスコートでは、硬式テニスばかり見かける気がします。

三野: 今、私が勤務している奈良県なんかはソフトテニスが盛んな地域で、コート数も多く利用料金もそんなに高くないので、歩いているとわりとソフトテニスは目に入ります。地域にもよる気がしますね。

ただ、ソフトテニスをする若者の数が減っているので、地域でソフトテニスを練習できるクラブやチーム数は減っているかもしれません。店舗でも、私が競技経験者だと知って、保護者の方から「練習場所はあるけど教えてくれる人がいない」という相談を受けることがあります。

部活動でのソフトテニス部顧問は、競技経験者がない先生が担当されることも多いはずなので。

── どう答えるんですか。

三野: 自分が教えますとは言えないので(笑) 。相談ぐらいはお店でも乗れるんですけど、実際打っているところを見られないところが難しいです。

ただ、使った後のストリングの歪みを見て、打ち方にこういう癖があるんじゃないですかという話はしますね。

ストリングを見て打ち方の癖がわかる

── え、そんなことわかるんですか。

三野: わかりますね。あとは、素振りできる状況なら素振りしてもらえばさらにわかるので、言ってあげられることを伝えて、こう練習してください、という程度のことはさせていただきます。

── 部活動生にとって貴重な売り場ですね(笑)。

三野: 本当はラリーをするのがいいんですけどね。私にはそこまでの技術はありませんが、うまい人とラリーすると同じ場所にボールが返ってくるので、その子が打てる回数が増えて上達が早いです。

── そうですよね、うまい人と打つというのは、対人ラケットスポーツ共通の上達の近道ですよね。

ストリング張替えが繋ぐお客さんとの縁

── ソフトテニスにおいて、競技経験者が売り場担当であることは貴重ですね。これまで10年以上売り場で接客を担当してきて、記憶に残っている嬉しかったことはありますか。

三野: たくさんあります。直近で言うと、私の前の勤務地である京都店で、中学生の頃から私がストリング張替えをしてきたお客さんが、いまは大学生になり、“最後の大会だから”と、わざわざこの奈良の橿原店まで張替えに来てくれたことですね。

いろんなお客さんから「お世話になりました」「勝てました」「何位になれました」という報告をいただけるのは、やっぱりすごく嬉しいです。

── いい話ですね。ストリング張替えはコミュニケーションの場にもなるんですね。

三野: はい。いっぱい練習して打ってもらって、また3ヶ月後くらいに張替えに来ていただければ、私たちもお客様を覚えていきますしね。

── 張替えの作業そのものは、ある程度機械化されてるんですか。

三野: ほぼ機械です。引っ張るのも強さを設定して機械がやってくれるので人は動かすだけなんですが、それでも誰が張ったかで全然違うと言われます。

あと、お客さんはすぐに練習したいと思うので提供をなるべく早く、すべてのお客様に1時間以内即張り対応というのを、この橿原店ではやっています。

── 確かに、張り替えた後はすぐに打ちたいですもんね。

三野: ただ、自分がずっと張りっぱなしになると周りに迷惑かけてしまうんですが、橿原店は新しい店舗なので、まだこのサービスは維持できるかなと思って続けています。

── ソフトテニスのようなスポーツこそ、長く競技経験を積んだ店員が売り場にいるありがたみを感じますね。お忙しいところ、ありがとうございました。

三野: こちらこそ、ありがとうございました。


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