
テニスを始めるとき、最初の壁は「どんなラケットが自分に合ってるのか」という悩みかもしれない。
軽いほうがいいのか、飛ぶモデルがいいのか。ガットはどの種類を選ぶべきなのか。
自身も20年以上の競技歴を持ち、スポーツ量販店のテニス売り場で長年お客様を案内してきた照井さんは、「まずは会話から」と言う。
ラケットやガットの性能だけでなく、メーカーごとの特徴や初心者が陥りがちな“選び方の落とし穴”まで、テニス初心者がスムーズに用具を購入するための基本を聞いた。
テニス用具選びの基本姿勢とラケットの選び方
── テニス用具売り場歴の長い照井さんですが、テニス初級者の方がお店に来られたとき、どんなアドバイスをされますか。
照井: まずはお客様と会話をしてながら、他のスポーツ歴や好きな選手など、ヒアリングに時間はかけるようにしています。いろんなモデルがありますので、お客様にあったものをご提案するように心がけています。
── 初級レベルのお客様との会話で多い声はありますか?
照井: 特に女性のお客様に多いのですが、“ボールを飛ばしやすい用具を”という要望は多いですね。
その場合のラケットは、YONEX(ヨネックス)のEZONE(イーゾーン)や、Babolat(バボラ)のPure Drive(ピュアドライブ)、WILSON(ウィルソン)のCLASH(クラッシュ)などをお薦めすることが多いですね。それ以外にも各社飛ばせるモデルはあります。
写真:ヨネックス(YONEX)(メンズ、レディース)硬式用テニスラケット Eゾーン 100 08EZ100-786/提供:SUPER SPORTS XEBIO

写真:バボラ(BABOLAT)(メンズ、レディース)硬式用テニスラケット 25 PURE DRIVE 101552/提供:SUPER SPORTS XEBIO
写真:ウイルソン(Wilson)(メンズ、レディース)硬式用テニスラケット CLASH 100 V3.0 WR172811U/提供:SUPER SPORTS XEBIO
── テニスのラケットって大きさは規定があるんですか。
照井: ラケット全体が27インチ以内の大きさで、重さの規定はありません。
メーカー別の特徴
── メーカー各社のラケットの特徴を簡単に教えて下さい。
照井: YONEXのラケットだけ、四角いフレームの「アイソメトリック」形状なので、外見上もわかりやすいですね。スイートスポットがより広く作られています。

写真:ヨネックス(YONEX)(メンズ、レディース)硬式用テニスラケット ブイコア100 07VC100-194/提供:SUPER SPORTS XEBIO
照井: Babolat(バボラ)のラケットには振動吸収率が良い素材が入っています。
多くのトッププレーヤーが使うヘッド(HEAD)のラケットは、他社の同じ重さのラケットと比較したときにより軽く感じてプレーできるので疲れにくいです。

写真:バボラ(BABOLAT)(メンズ、レディース)硬式用テニスラケット PURE AERO 101485-NC/提供:SUPER SPORTS XEBIO

写真:ヘッドのGravity MP/提供:SUPER SPORTS XEBIO
照井: 最近のトレンドとして、各社とも振動吸収をいかに無くすかということを考えているようで、モデルチェンジするたびにその機能が入ってきています。
── 初級者にその機能が嬉しいのはわかるんですが、競技レベルの中級者以上にとってはどうなんでしょう。
照井: おっしゃるとおりで、競技者にとっては振動を吸収しすぎてしまうと打感が鈍るので、一定以上の競技レベルのプレーヤーにとっては物足りないモデルが増えてきているのかなという気もします。
── テニスは“打感”をとても大事にするんですね。
ガットの性能とは
── ガットの性能はどういうものですか。
照井: 私が良く使う表現としては、トランポリンと同じ原理ということです。ボールが沈み込む時間が長いほど遠くに飛ばせるので、パワーがない方には柔らかい、沈みやすいガットをお薦めします。
ナイロン素材にモノフィラメント、マルチフィラメントがあり、あとポリエステル素材もあるので、その中からご提案します。
── 具体的にお勧めすることが多い商品は?
照井: 価格帯も幅があるんですが、当店の売れ筋は、テクニファイバーの「マルチフィール」というナイロンのストリングスですね。
柔らかくてよく飛ぶのと、癖がないので初級者の方が上達しても使いやすいのが特徴です。また、マルチフィラメントというガット素材の中では耐久性もそれなりによく、価格もそこまで高くないので、コスパが良いのも人気の理由だと思います。

写真:テクニファイバー(Technifibre) 硬式テニスストリング マルチフィール1.30 TFG221BK30/提供:SUPER SPORTS XEBIO
── もうひとつ挙げるとすると?
照井: ポリエステルで挙げると、YONEXの「ポリツアープロ」が売れていますね。ポリエステルガットはスピン系のものが多かったり、打感が硬すぎたりすることもあるんですが、ポリツアープロは癖がなくて、使いやすいポリエステルですね。
── ナイロンとポリエステルは、簡単に言うとどう違うんですか。
照井: ポリエステルは硬いので弾きがよく、スピードが出て耐久性も良いです。ナイロンガットは柔らかいので腕に優しく、遠くに飛ばしやすいんですが、スピードは出にくいです。
ラケットとガット、どちらの性能が大事?
── ラケットとガットの性能は、どちらに重きを置くべきですか?
照井: 基本的には、フレームの性能を生かすためのガットだと私は思っているので、あくまでもラケットの性能がメインかなと思います。
── でもボールが直接当たるのはガットじゃないですか。ラケット、フレームの性能というのはインパクトのときにどう発揮されるんでしょう。
照井: インパクトの瞬間、フレームがしなって、スナップバックでその反発力をボールに伝えています。ガットは、そのフレームの機能をよりサポートしてくれる、というイメージです。
── なるほど。
初心者が用具購入ミスをしないために
── 奥の深いテニス用具の世界ですが、初心者が用具購入で間違いがちなことはありますか。
照井: 見た目のデザイン、色だけで決めてしまったり、あとは、教えてくれているコーチと同じものを選ぶなどはよく聞きますね。
そういう間違いを防ぐために私たち店員がいるので(笑)、まずは店員と会話してほしいです。
── 何を話せばいいでしょうか。
照井: ざっくりでいいんですけど、飛ばしたいのか飛ばしたくないのか、何でもいいんですけどご自身の希望がひとつあれば、私たちも会話の中でそこから考えられます。
練習時間なども大事な情報です。好きな選手でも構いません。例えば、ジョコビッチ選手が好きなら、そのエントリーモデルもありますから。
── なるほど。会話しながら、幅広い用具の世界からお客さんに合った商品を絞り込んでいくんですね。
【第2回】11年売場に立ち続けたナビゲーターに聞く 現代テニス人口の「今」と健康志向の潮流
取材・文:槌谷昭人
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